0466・戻ってきての会話と積み込み
「そういえば魔法って言ったところで、アニメやゲームのように絶対に成功する訳じゃないんだ。ちょっとした事で発動しなかったら、そのままぶつかるよね……」
「そうならない為にも練習したり慣れたりしないといけない、か。やっぱり魔法っていったって簡単な訳じゃないって改めて思うよ。憧れた魔法ではあるけど、地道に練習しないとな」
「せっかくですから、これからは魔法の練習をメインにしていきますか? ミク殿は下の階へ行き魔物を狩り、私達は魔法の練習をする。攻撃の魔法はダンジョンでしか練習出来ませんし」
「そうですね。武器の事もありますが、それ以前の問題でもあります。魔力を練り込める人なんて居ませんし、魔法の炎で焼ける人も居ません。ですから魔物由来の武器を作る事は、今のところ難しいでしょう」
「じゃの。まずは魔法というものを修練するしかあるまい。4階のコウモリも自分達で倒して突破せねばならんであろうし、それも含めて励まねば……」
これから先の指針が決まったが、ミクは関係なくアンガーブルを倒してはレティーに血抜きをさせていく。10頭ほどを倒したら戻る事を提案し、一行は入り口まで戻り脱出するのであった。
◆◆◆
「ハァ、ハァ、ハァ、ふぅ……。やっと戻ってきたよー、疲れたー!」
「とりあえず、センはもっと体力をつけろ。これからダンジョンに潜ったりしてれば、そのうち体力はつくと思うけど、それだけじゃなく走ったらどうだ?」
「えー……ヤダよ、面倒臭い。そもそもダンジョンに行っていれば体力が付くなら良いじゃん、無理しなくても。疲れを残したって仕方ないんだからさー」
「まあ、確かにそうだけどな……。でも、どう考えても楽をしようとしてるだけじゃないか?」
「はぁ、これだからお兄ちゃんは駄目なんだよ。妹の事を疑うなんて碌な性格をしてないね」
「図星だったからって逃げるなよ」
「「………」」
何故か笑顔でお互いを見る北条兄妹。どちらも笑顔だが、間に火花が散るような視線が交錯している。そんな2人を見て思わず本音を漏らすヤエ。
「良いですね、こういう兄妹の形も。私の兄達はどちらも小さい頃から帝王学を学んでいたからか、どうにも近付き難い雰囲気なのですよね。ですので兄達との思い出など殆どありません。会話をした記憶すら碌に……」
「それはまた……。漫画とかラノベで描かれるけど、本当にそういう家ってあるんだね。上流階級には上流階級の苦労があるって分かるけど、庶民で良かったとしか思えないよ」
「だな。流石にどんなのか想像も出来ないけど、殺伐としてるのは流石にちょっと……」
「殺伐とはしていません……でしたか? たぶん殺伐とはしていなかったと思います……おそらく」
窓を開けて家の中に入りつつ、会話を続ける一行。
「何だか随分弱気になったけど、何か気になる事があったの?」
「いえ、そうではなくてですね、先ほども申した通りに会話をした記憶が殆どないのです。ですので雰囲気自体を覚えていないのですよ。そもそも兄の1人は寮生活ですので滅多に帰ってきませんし、上の兄は1人暮らしですので……」
「もしかして、子供の頃からずっと疎遠?」
「まあ、有り体に言うとそうですね」
「だったら分からないが正しいのか。確かに分からないんじゃ、多分としか言い様が無いだろうなぁ」
「連絡を入れておきましたので、おそらく後15分ほどで大型トラックがやってくると思います。ですので準備をお願いします」
「分かった」
戻ってきたのでユヅキが連絡を入れておいたらしい。コウジ達は会話を続けつつも魔法の練習をしており、ジロウエモンも魔力を循環させて練習をしている。どうやら魔法の有用性は理解したらしい。
「そうですな。特に穴を開けて転倒させるのは見事という他ありますまい。あんな事をいきなりされれば、とても戦う事など出来ませぬ。自らが鍛えてきたもので戦う為にも、魔力や魔法というものを深く知らねばなりますまい」
「そうですね。あの落とし穴というか浅い穴は、単純ですが強力です。いきなり穴が開くという非常に厄介なものですから、かわすという事が難しいとしか言えません。何か方法はありますか?」
『魔力を感じ取っていればいい。そうすれば魔法が発動する前の怪しい動きは察知出来る。地面に魔力が集中しているなら、何かやって来ると分かるしね。後は騙し合いだよ』
「「「「「騙し合い?」」」」」
『相手に如何に悟られないように魔法を使うか、あるいは相手に察知されようとも当てる方法を確立するか。様々な方法があるけど、相手に魔法を当てるには工夫が必要になる。ちなみに私の場合は知覚できるより早く魔法を発動する』
「「「「「………」」」」」
それはそれでどうなんだと思うも、正真正銘いきなり魔法が発動するなら回避は不可能に近い。しかしそこまで瞬時に魔法を構成して現象にするという事は簡単ではない。当然だが、そこまで出来るのは1種の天才ぐらいであろう。もちろん怪物はそれ以上だが。
そこまでを言う必要は無いので、ミクは黙っているし、何れその道が現実には困難であると理解するだろう。そこを突破できるのは一部の化け物だけである。大抵の者は相手に魔法を当てる為の苦労をするしかない。
『ただし範囲魔法はその限りではないし、相手に魔法を知覚する能力が無ければ気にする必要は無いよ。問題は魔法を避ける魔物などだね。アンガーブルは普通に嵌まったけど、中には当然回避するヤツも居るし』
「そういうヤツ相手だと別の方法が必要な訳か……。ま、当たり前と言えば当たり前としか言えないかな? こっちだって分かれば回避できるみたいだし」
「こうなってくると、本当にスキルというのは補助ぐらいでしかないのですね。もちろん補助があるというのは有利なのでしょうが、それよりも努力する事の方が大事だというのがよく分かります」
「だね。努力して出来る様になれば、別にスキルなんて要らないんだしさ。スキル持ちがバカにされるって、ちょっと分かるかも。最初から出来ると大して努力しなくなるんだろうね」
「簡単に出来ると、少し難しくなってきた辺りでやる気を失うのでしょうね。問題はそこからどうやってやる気を出すかなのですが、簡単に出来ていただけに納得できなくなっていくのでしょう。そして下手な自分が見たくなくて離れる、と」
「情けないとは思うけど、仕方がない部分はあるのかな? もしかしたらスキルが補助してくれてる部分こそ、自分が一番努力しなければいけない部分だったりして……」
「「「「………」」」」
センの何気ない一言だったが、それは正しいのではないかと思った面々は、色々と考える部分があったようだ。こういう所に気付くのも、センの持つスキルである【見切り】の御蔭なのだろう。言い換えれば、センは本質を見極めるのが苦手という事になるのだが……。
「別に補助にお任せすればいいよね? 私、それ以上なんて望んでないし」
「「「「………」」」」
こういう人物にこういうスキルが与えられる事は、おそらく稀にあるのだろう。そう思う事で納得した面々。そうしているとインターホンが鳴ったのでコウジが出ると、大型トラックの運転手だった。
なのでヤエ達も外に出て、荷物の運び入れを確認する。といってもトラックのコンテナ内に入り、中に獲物をドンドンと出していくだけである。アイテムバッグからどんどんと出てくる様を見た運転手は、「おおーっ」と喜んでいる。
どうやら初めてアイテムバッグを見たらしく、単純に喜んでいるだけのようだ。そして全て乗せた後、大型トラックは出発していった。それを見届けた後、ヤエ達も帰っていき、ようやく一息吐くコウジ達。
「とりあえずまだ早いんで、俺は部屋に戻って動画を確認してから葉月さんの所に送るよ」
「了解。私はどうしようかなー」
「店、連れてってほしい。食べ物、買う」
「そうだね。適当にコンビニにでも行くかな」
「気をつけろよー」
「分かってるって」
ミクと一緒にコンビニに出かけるセン。ミクはアイテムバッグを持たずに、セリオとレティーを置いて出かけるのだった。




