0458・北条家へ戻り報告
「さて、このまま話していても仕方ないし、そろそろお暇しよう。母さんも心配してるだろうしな」
「そうだね。……もう20時を回ってるし、流石に帰らないと怒られるよ」
「おお、もうそんな時間か。流石に高校生をこんな時間まで引き止めてはいかんな。丁重にお送りするように」
「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」
ミク達は案内してくれる者についていき、靴を履いたら再び車へ。そして車に揺られながら待つ事十数分。無事に北条家に戻ってきた。送ってもらったお礼を言い、コウジから先に家へと戻る。
ミクも中に入ると、リオが戻ってきた事を喜んでいる。やはり母親としては心配だったのだろう。
「本当に無事で良かったわ。葉月家って言ったら葉月グループ総帥の家だもの。何が無礼になるか分からない所でもあるし、心配してたのよ。本当に良かった」
「大丈夫、大丈夫。私達には何も無かったよ。巻き込まれたのはミクだけど、ボコボコにした挙句に小指を全部落としてたしね。そんな事があったくらい」
「………いったい何があったの?」
その後は夕食を食べながらの話し合いとなった。白菜とオーク肉を交互に入れて煮た物や、オーク肉の角煮という物が出てきて、セリオが美味しそうに食べている。そんな中で一通りの話を聞いたリオは憤慨していた。
「葉月家の全てではないんでしょうけど、やはり酷い人が居るのねえ。何というか、思っていた通りの人が現実に居る事に、何とも言えなくなってくるわ。しかも拳銃を人に向かって撃つなんて……」
「それはね。私も驚いたし、お兄ちゃんなんて怒ってたよ」
「そりゃそうだろ。人に向かって銃を撃つなんてムチャクチャだ。あんな事が許される筈が無いだろ、あり得ない。ミクの事を異星の野蛮な者とか言ってたけど、あのオッサンの方がよっぽど野蛮だ。人に向かって銃を撃つんだからな」
「そうね。それに別の星の人ってなれば、普通は常識が違って当たり前でしょうに。それを<ガイア>の常識が無いから馬鹿にするの? それこそが本当の野蛮よ」
「お母さんも相当怒ってるね。私も気持ちはよく分かるけど、でもミクが一番気にしてなさそうなんだよねー……」
「銃、しょぼい。あれ、私殺す、無理。絶対、無理」
「ああ、うん。絶対に無理なんだ。とはいえ、銃弾を全部素手でキャッチしてたもんね? まるでアニメみたいだったけど、全く効いてなかったし」
「え? 銃弾を素手でキャッチしたの?」
「そう。右手を開いたらパラパラって感じで床に落ちて行ってたから、間違いなく手でキャッチしたんだと思う」
「どうやって?」
『【身体強化】を目に集中すると高速で動く物も見切れる。全身を強く【身体強化】すれば、思っている以上に速く動ける。普通の者では見えない速度で動く事も難しくない。そして魔力を使った皮膚の強化も加えると、あの程度の物を掴むのは難しくない』
「じゃあ、俺達も練習すれば可能な事なのか?」
『達人と言えるほどに修練すれば可能な事だよ。守るだけなら魔物の革製の防具を着けて、魔力を流して強化すれば十分に耐えられる。オーガの皮なら貫通しないんじゃないかな?』
「オーガの皮がどれ程か分からないけど、思っている以上に魔物の皮って強力なんだなぁ。最初のダンジョンスタンピードの時に軍や警察が苦労したのは、それが理由かな?」
「おそらくそうでしょうね。銃が効かない、もしくはあまり効かないとなれば、軍や警察だってどうしていいか分からなかったと思うわ。なら、仕方がないとも言えるわね」
「スタンピードの事もあるし、色々と大変だよね。お父さんも……」
「仕方がないさ。父さんだけじゃなく、他にもスタンピードに巻き込まれた人は居るんだ。悲しいのは俺達だけじゃないしな」
「うん」
『でもダンジョンを減らせるって事は。それだけ深く潜れる奴等が居るんでしょ? にも関わらずスタンピードで亡くなったの?』
「ダンジョンを減らせるって言っても、それは浅い階層のダンジョンだけだよ。出来立てでも深い階層のダンジョンはあって、そういうのは強力な魔物が出るから<コアルーム>に辿り着けないのも多いんだ。場合によっては100人態勢とかで攻略してるらしいし」
『100人!? そんなに人を向かわせないと攻略出来ないとはねー。情けないと言うべきか、それとも仕方ないと言うべきか。そもそもゴールダームのダンジョンより遥かに小さいのにね』
「小さいってどういう事?」
『ゴールダームのダンジョンは惑星最大のダンジョンと言われてて、1層の大きさが20キロ四方なんだよ。それが100階あるのがゴールダームのダンジョン』
「「「20キロ!?」」」
「1つの階層で20キロって……迷子になりそうなくらいに広いね。そんな所を攻略するの? どうやって?」
『この星のダンジョンと違って、前の星のダンジョンは各階層を繋ぐ階段はセーフティエリアなんだよ。だからそこで休憩する事も安全に寝る事も出来る。そうやって進んで行くの』
「階段でか……。こっちのダンジョンでも、階段で寝泊りは出来そうだな。代わりに寝起きは大変だろうし、寝相で転がり落ちるかもしれないけどさ」
『それは仕方ない、前の星でも似たような失敗は聞くし。それよりも、前の星ではそうやって休んでいる奴等を襲う闇ギルドの連中も居た。だから休めると言っても気は抜けない』
それを聞いて、急にコウジを心配そうに見るリオ。
「いやいや、流石に<ガイア>にはそこまでのヤツは居ない……と思う。多分だけど」
「物凄く弱気になったね。とはいえ怪しい噂とかは聞くから仕方ないけど。……ミクはそういう時にはどうするの?」
『そもそも完全に熟睡したりなんてしない。浅く寝るだけだし、何かしてきたら問答無用で殺すだけ。それで終わる話だよ』
「非常にシンプルで分かりやすいけど、それを<ガイア>でやるのは難しいだろうなぁ……。おかしな事を言ってくる奴も居そうだし」
「自分から絡んできた癖に、被害者ぶる奴とか居るもんね。そういうのを避ける為にも、お兄ちゃんが着けてるようなカメラを着けておくべきかな。そうすれば証拠として出せるし」
「ウチの庭のダンジョンだと要らないけど、他のダンジョンに行くなら着けておくべきだろうな。何が起きるか分からないし」
どうやら葉月家がミクの探索者資格を作ってくれるというのは、全く疑っていないようだ。これなら大丈夫そうだなと安心したミク。何かあっても適当にかわせばいいし、最悪は喰えば済む。
今までもこれからも、肉塊のやるべき事はゴミを喰う事でしかない。
夕食が終わり、ミクは片付けを手伝った後、リビングに毛皮を敷いてレティーとセリオを寝かせる。2匹は寝転がった後、すぐに目を瞑り、大半の細胞を休ませた。
ミクも寝転がり、目を瞑って瞑想の練習を始める。相変わらず休んでいる感覚がイマイチ分からないものの、本体空間では物作りをしていく。ドラゴンの皮と鱗を使ったブーツに、薙刀や十字槍や刀の作成。
コウジやセンに見せられた物を思い出しながら、適当に作っていく。とはいえ神々から教えられた物によく似ているので、構造は理解しており難しくはない。さっさと作り上げ、誰も見ていない内に取り出してアイテムバッグに仕舞っていく。
ブーツに関しては予備だと言えば済むだろう。モグラの話でもすれば、何故予備を持っているのかは理解できるだろうし、不審に思われる事もない。
言い訳を考えつつ、ミクは必要になりそうな物も作っていくのであった。




