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0456・場所を変えての話し合い




 ここは大きな広間とは違い、テーブルや椅子やソファーが置かれたくつろぎながら歓談をする場所であった。ミクは勧められた椅子に座り、テーブルの上にセリオを乗せる。その時初めて、周りの者はセリオが生きていると知ったようだ。


 今までは色々とあってそれどころではなかったと言えるが、どうも周りの者もセリオをぬいぐるみか何かと勘違いしていたらしい。そんな中、八重の祖母が口を開く。



 「私の名は葉月遥。こういう字を書いてハルカと読むんだ、だからそう読んでおくれ。それより、本当にすまなかったね。魔法というものが本当に使えるのか……。そこのところは大事だったんだよ」


 「大事?」


 「実は八重のスキルは【魔力操作】なんだ。公になるとハズレスキルだなんだと喚く者が出かねないんでね、慎重に調べる必要があったのさ。魔力関係のスキルだっていうだけで、下に見てくる阿呆が居るんだよ」


 『相変わらず、この星の連中は理解に苦しむね。そもそも私はスキルを持ってないし、前の星でもスキル持ちには努力しないヤツも居たんだ。むしろスキル持ちだから努力しないってバカにされる事もある』


 「……成る程。確かにスキルを持たない者からすれば、スキルを持っているヤツの方が優秀かもしれない。でも、そんなものは努力でどうにでもなるのかい」


 『そもそも私はスキルを持ってないが、魔法も使えるし、気配や魔力や精神を察知する事も普通に出来る。ようは努力するか否かでしかない。スキルを持っている事に意味は無い。それを十全に活かしてこそ意味がある』


 「全くもって正論すぎて笑うしかないねぇ。確かにその通りだ。しかしこの国もそうだが、いきなり持たされたスキルってもんに一喜一憂してるのが現実さ。かくいう私だって最初は喜んだものだからねえ」


 「お祖母様のスキルは【薙刀術】というものだったそうです。より理解が深まったと言って喜んでおられましたが……」


 「ああ。途中から気づいたんだよ。自分が身を入れて努力すればそこまで届いてたんじゃないかとね。それに気付いた時には愕然としたよ。まさか、自分の努力が足りなかったなんてさ」


 『ふーん……。それはともかくとして、そこのヤエを私に預けたかったのは、【魔力操作】というスキルを含めて魔法を教えてほしいって訳か。バカにされないように?』


 「ああ、葉月家の者がハズレスキルを持つというのは、ね。流石に私も下らないとは思うが、世間はそうは思わない。だが、魔法さえ使えれば引っ繰り返せる。そういった世間の目をね」


 「ですので、お願いします。御嬢様に是非とも魔法の使い方を、どうか……!」


 「「「「「「「「「「お願いします!」」」」」」」」」」



 周りにいた男達が土下座をしながら頼み込んできた。その事はミクにとってどうでもいいのだが、自分が要求できるものは要求しておきたかった。



 『とにかく、そのドゲザとかいうのを止めろ。そして私は元の星でも探索者だった。依頼をされれば請けるが、当然利益が無ければ請けない。私が求めるのは探索者資格を得る事。買い取り所が使えないのとダンジョンに行けないからね』


 「確かに異星の者ともなれば戸籍が無い故に探索者にはなれないか。そしてなれないから買い取り所も利用できないと。ふーむ……」


 「あのー……ちょっといいですか?」


 「なんじゃ?」


 「ミクが持っているのはアイテムバッグで、しかも中に入れた物の時間が停止するという物です」


 「「「「「「「「「「なにっ!?」」」」」」」」」」


 「ですので、買い取り所を使えてもアイテムバッグから出せないという問題は解決できないんです。そこを解決する方法ってありますか?」


 「………まあ、あるにはあるが……。それは葉月グループの系列会社に卸してもらう事じゃな。そうであればアイテムバッグを使っても、口を閉じさせる事は出来る。グループでは様々な魔物の素材も研究しておるでな」


 「でしたら、ミクが狩ってきた魔物を買い取ってやって下さい。それとアイテムバッグに無断で手を入れたりは絶対にしないようにお願いします。何でも所有者でないと、入れた手や腕が無くなるそうですので」


 「それは怖ろしいの」


 『普通のアイテムバッグならそんな事は無いんだけど、私のは特別製だからね』


 「成る程、ダンジョンの宝箱から手に入れた物か。何故か世界中のダンジョンで宝箱が見つかっておるからな。中には若返りの薬などもあったようじゃし、それを巡って殺し合いも起きたと聞く。碌なものではないが、そういうアイテムバッグがあっても不思議ではない」


 「しかし北条君。異なる星の方というのを黙っていたのですか? で、あるならば、後で色々な方面からバッシングを受けますよ?」


 「違う、違う。軍に連絡したんだけど、1週間ほど預かってろって言われたんだよ。母さんが連絡したから詳しくは知らないけど、どうやら向こうは信じていなかった感じらしい」


 「成る程、成る程。それは良い事を聞いたわ。軍には連絡したんじゃの?」


 「ええ。ミクがウチのダンジョンに現れた日に連絡しました」


 「はっはっはっはっはっ! これは良い。軍の奴等め、大ポカをやらかしよったな。では葉月家がミクの後ろ盾になろう。探索者資格の事も任せよ、上手くやれば問題ない。むしろ都合が良いわ」


 「それは良かったけど、ミクって前の星で何をやってたの?」



 忘れてなかったかと思いつつ、ミクは怪物だとバレないようにぼかしながら、前の星でやってきた事を1つ1つ話していくのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「まさかエルフがそんなに選民主義的な者達だったなんて……」


 「やっぱりそこに引っ掛かるよねー。もちろん一部っていうか、エルフィン樹王国という国のエルフだけみたいだけどさ。<狂乱王>とかいう狂った王様の所為だって言っても酷いよ」


 「それでも王族を根切りにしたのじゃから解決と言えよう。流石に傍流などを連れて来ても、既に首都が制圧されている以上はどうにもならんよ。そこからの逆転はあるまい。何より周辺国を敵に回したのは失政としか言えん」


 「確かに。幾ら強い国でも、周辺全てを敵に回したら負けるしかないだろう。それに自国内でも森に住むか住まないかで差別してるんじゃ……」


 「選民主義の行き着く先といったところでしょうか……」


 「まあのう。それはともかくとして、ワイバーンだのドラゴンだのを倒すほどだったとはなあ。もしかしたら<ガイア>のダンジョンの何処かにもドラゴンは現れるのかもしれん。とはいえ勝てるとは思えんが」


 「それよりも、お祖母様。ミク殿が持っている武器のように作る事というのは出来ないのでしょうか? それが出来ればより良い装備が生み出せる気がします」


 「言いたい事は分かるけどね、それもまた研究するしかないよ。何より粉にして水分混ぜて固めて、練って形にして焼くってのはねえ……。陶器でも作ってるのかと言いたくなるけど、強力な武器が出来るみたいだし……。悩むところさ」


 「魔力を篭めて練るとか、色々とあるみたいですしね。機械でやっても作れないとなれば、陶芸家に任せる事になるのかな?」


 「そうなのだ。機械で作れぬ可能性が高い。しかも重労働である、練るところで魔力を篭めねばならんとは……」


 「製造業の業界も色々と変わらなければいけないでしょうな」


 「葉月グループには製造業も多いですから、それはそれで良い事なのではありませんか?」



 ヤエだけでなくユヅキやジロウエモンまで居るが、この2人は普通に会話に参加して問題ないらしい。しかし他の者達はじっと黙っている。


 妙なルールもあるものだと、ミクは内心で首を傾げていた。


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