0453・宇宙人
Side:北条光時
葉月さんトコの車で送ってもらったのはいいが、ここまで家に帰りたくないのは初めてだ。それはともかく、ここでおかしな態度をとると怪しまれるし、今は適当に車庫にでも入れてもらおう。
リムジンみたいに異様に長いヤツじゃないから、ウチの車庫でも何とか入るな。もしギャグみたいに長いヤツだったら、どっか遠くの駐車場に持って行ってもらう必要があった。……ん? そっちの方が良かったか?。
それはともかくとして、1台分の駐車スペースは父さんが亡くなってるから空いてるんだ。まあ、口には出さないけどさ。っと、停まったな。この居心地の悪い車から出たいんだけど……。
おおぅ、わざわざ葉室さんが先に外に出て開けてくれるのか。何というか、猛烈に居心地が悪いな。とにかくさっさと出よう、俺みたいな小市民には合わない。
「ありがとうございます。とりあえず家の中に入って、母さんに話をしてきます。少し待っていて下さい」
「分かりました」
やれやれ、とにかくさっさと済ませよう。こんな事で時間を食っても何も得をしない。鍵を開けて家に入り、すぐに母さんの仕事場へと行く。といっても、いつもの部屋でしかないが。
ノックをして声を掛けると返事があったので、すぐに中に入り事情を説明する。
「まあ、そうなの? すぐにお呼びしてらっしゃい。リビングでお待ちしてるから。といっても、菓子類なんて用意してないし困ったわねぇ……」
「仕方ないよ。適当に飲み物でも出して済ませる他ないんじゃないかな? 何か飲みたい物があるか聞いてからだけど」
俺はそう言いつつ、相変わらず冷えたままのリビングを確認するも、ミクは居なかった。仕方ない、さっさと戻って声を掛けよう。
外に出た俺は運転手の坂村さん? に声を掛けて、家の中に入るようにお願いした。葉室さんでも良かったんだが、あの人なんか声を掛け辛いんだよな。母さんのオタクっぽい感じがするし。
とにかく家に入ってもらいリビングに通すと、母さんが飲み物の話をする。ウチでは夏場は主に麦茶かアイスコーヒーだが、それで良いそうなので出す。
「突然の事で申し訳ございません。私は葉月家に仕えている、分家の葉室と申します。こちらが葉月家の御嬢様である、八重御嬢様となります」
「突然の事、申し訳なく。葉月八重と申します。実は、北条家の持つ私有地ダンジョンを使わせていただけないかとの御相談にあがりました」
「ウチのダンジョンですか……。その事自体は特に構いませんが、ウチのような平民の家のダンジョンに何故?」
「大奥様、つまり御嬢様の祖母であらせられる方よりの命でございます。「武家の血を引いたる者は戦えて当たり前である。女子とて戦えねば、葉月の恥じゃ」と申されまして、御嬢様は戦う為の実力を持つ必要があるのです」
「は、はあ……大変ですね」
「しかし、市井のダンジョンではよからぬ者に襲われるなどの可能性がございます。安全に実戦の訓練が出来る場所となると、私有地ダンジョンとなります。そこで東京23区のダンジョンを調べましたところ……」
「ウチのダンジョンがあったという事ですか……。先ほども言いましたが、ダンジョンに入られる事自体は構いません。しかし、そこは魔物と戦う場所です。何かあっても責任は負いかねます。そこだけは覚悟をして下さい。戦いとは遊びではありません」
「重々承知しております。私も坂村も御嬢様について参りますので、問題はありません。また、怪我などをしても責任などとは申しません」
「……そこまでの覚悟があるのであれば、これ以上こちらから何かを申し上げる事はありません。御自由にどうぞ」
「ありがとうございます! それと、あ、握手をお願いできますか?」
「え? ええ、構いませんが……?」
母さんは不思議な顔をしつつ葉月さんを握手をしているが、それが終わったら葉室さんとも握手をしている。その時点でピンと来たらしく、ファンに対する握手をしている。たまに見る光景だし、これで恙無く終「カラカラ」わっ……。
「あれ? 客、来てる? 出直す?」
ノォォォォォォォ! 何でそんなベストなタイミングで戻ってくるんだよ!! 全てが終わった後に登場とか、どっかで覗いてましたかねえ!?。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ! 何とかしないと! 何とか!。
「あの、どちらさまでしょうか? 確か北条家の方は3人で、他に誰も居なかったと思うのですが……」
「よく調べてありますね。彼女の名前はミクと言って、ウチの居候? でしょうか。別の星からやってきた人ですよ」
「「「は?」」」
ちょ!? 母さん、何でバラすんだよ! 見つかったら余計な事になるのは確実だろうに、何でこっちからバラすかな!?。
「えーっと……別の星の人、ですか。という事は、目の前に宇宙人がいるんですねー……」
「うちゅう、じん? うちゅう、宇宙?」
「ええ、そうですよ。宇宙人という事になるのです」
『宇宙人ねえ……。それぞれの惑星に人間種が住んでいるんだから、宇宙人ではなく惑星人じゃないの? 言葉のミス? それともこの星では自星以外の者を宇宙人と呼んでる?』
「「「!?」」」
あーあー、【念送】を使ったよ。この時点で誤魔化しが一切効かないんだけど、俺しーらないっと。もうツッコむのも疲れたから、後はどうにでもなーれー♪。
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『つまり、貴女達はダンジョンに潜って訓練がしたいと。まあ、それは好きにすればと思うけど、私がそれに付き合う義理は無いんだけどね? 世話になっている訳でも無いんだし』
「そこを何とか、お願いできませぬか? 戻って葉月家の大奥様に御報告申し上げれば、必ずや便宜を図っていただけます。何かありませんか? それの代わりに御嬢様にも指導をお願いします!!」
何故か坂村二郎衛門という70の老人が、ミクの目の前で土下座をしながら頼み込んでいた。構図が変だが、そこはミクもスルーしている。それよりも世話になっている訳でもないポッと出に指導をする、その事に対しての対処の方が大事なのだ。
『今、私が困っている事は2つ。1つはこの星のダンジョンと買い取り所を利用できない事。2つ目はダンジョンに潜る為の資格? を手に入れる為の戸籍? という物が無い事。これが何とか出来るなら、教えてもいい』
「ダンジョンと買い取り所に、探索者資格と戸籍……ですか?」
「ミクさんは別の星の人。だから戸籍が無いし、その所為で探索者資格が取れないの。で、取れないから買い取り所を利用できないのよ。彼女は2つアイテムバッグを持っているのだけれど、それも買い取り所を使えない理由になってるの」
「「「アイテムバッグ!?」」」
また1つリオがバラしたが、そんな事はお構いなしにセリオに干し肉をあげているミク。それを一心不乱に食べるセリオ。それを見てハラハラしているコウジ。まだセリオとレティーの説明はしていないのだ。
3人の目の前で魔法を見せて、ミクが本当に異星の人だと納得しただけである。流石に魔法の使えない星に魔法の使える人が居れば、それは別の星の人となるだろう。様々な魔法を使っていたし。
「立て続けに様々な話が出きたので、ちょっと休憩をとらせていただきたいのですが……」
「ええ。リビングで良ければどうぞ。……それより、そろそろお昼ね。どうしましょうか?」
「適当に頼めば良いんじゃない? 適当で」
どうやら今日の昼は適当に決まったようだ。




