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0452・最悪の展開




 翌日。今日は月曜日という日で、コウジとセンは高校という学び舎に行かなくてはいけないらしい。ミクはある程度のお金を稼いだので無理をする必要はなく、今日は庭のダンジョンの間引きを行う。


 こちらのダンジョンもスタンピードが起こるのは同じで、それ故に探索者を雇うか迷っていたそうだ。私有地にあるダンジョンは、その土地の所有者が責任を持たなくてはいけない。その為、ダンジョンコアを破壊する探索者を雇わなければいけないのだ。


 結構な費用が掛かるらしく、それも含めてコウジがダンジョンに潜っていたらしい。今はミクが居るのでスタンピードの心配は無く、いつでもコアが破壊できる状態だ。よって北条家の誰も心配をしていない。


 その事もあり、ミクはダンジョンの深層まで間引きをする事にした。ついでに軽くて高く売れる物も見繕ってくる事に決まる。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 Side:北条光時



 今日は終業式なんで昼までには終わる。2年の夏はこれからだが、今年はダンジョンと魔法で夏の予定は埋まった。……っていうか、軍の人達が放り出した御蔭で、俺は魔法を使えるようになったしな。


 あの時は軍の対応に少し怒ったけど、今では感謝してる。もしミクが連れて行かれてたら、絶対に魔法が使えるようにはならなかっただろう。適度にクラスメイトと話しつつ、ボロが出ないように言葉を選ぶ。


 今日1日の辛抱だからいいけど、ずっと黙ってなきゃいけないなら大変な事になってただろう。ずっと黙っていられるとは思えないしさ、俺の性格なら。


 終業式も終わったので、すぐに帰ろうかと思ったら、友人の三太さんたが声をかけて来た。サンタと呼ばれてるが、本名は三田三太さんださんたという名前だ。



 「サンタ、どうかしたのか?」


 「ミツ、せっかく終業式も終わったんだしさ、皆でカラオケ行かね? 既に集まるメンバーも決まってるしさ、あの藤野さんも来るんだぜ!」


 「あー、すまん。俺は家に帰ってやる事あるから、断らざるを得ん」


 「ダンジョンか? そろそろ金も溜まっただろうし探索者を雇ったらどうだ? 探索者協会に言えば、まともな人を紹介してもらえるだろ」


 「簡単に言うなよ。1日で1人5万だぞ? 6人パーティーで来るんだから、1日30万なんだ。しかも何日掛かるかも分からない。とても払えるような金額じゃねえよ。だから俺が潜って間引きしてるんだ」


 「お、おぅ、すまん。……しっかし、そんなにするのかよ。知らなかった」


 「だから申し訳ないが、帰らせてくれ。流石に放っておく訳にはいかない」


 「分かった。他の奴等にもそう言っておくよ」


 「悪い。頼んだ」



 サンタは悪い奴じゃないんだが、お調子者でよく失敗する。まあ、あの口の軽さじゃ失敗しても仕方ないとは思うけどな。そう思いつつ靴を履き替えていると、隣から声を掛けられた。



 「少し、宜しいですか?」


 「え? あ、ああ。なに?」



 声をかけて来たのは葉月さんか。というか、この人は葉月家の御令嬢なのに、なんでウチみたいな平凡な高校に通ってるんだ? 聞いちゃいけない事っぽいから聞かないけどさ。



 「実は、少々相談したい事がありまして……車の中で話させていただいても良いですか?」


 「え? ああ、はい」



 そういえば葉月さんって、毎日車で通ってるんだったな。お付きのメイドさんみたいな人と、眼光鋭いドライバーの人と。怖そうな人達だが、仕方ないと諦めよう。


 俺は葉月さんと一緒に車に乗せてもらったが、これって確かクラウンとか言うんだっけ? 高価な車って居心地が悪いな。とにかく話を聞こう。



 「あの、葉月さん。それで話というのは……」


 「えっとですね……。その、北条君の家には、庭にダンジョンがあるんですよね?」


 「うん、そうだけど……。それが話?」


 「ええっと、私有地にあるダンジョンは、その私有地の方の物である。その責任も私有地の者が背負う。でしたよね?」


 「そう。だから俺が間引きしてるんだけど……。ごめん、話が分からない」


 「御嬢様、ここからは私が。……私は御嬢様のお付きをしている、葉室と申します。葉月家の分家の者でございます」


 「あ、はい。俺は北条光時です」


 「ええ、存じております。御嬢様は北条家にあるダンジョンを使わせてほしいという事を、頼まれようとされていたのです」


 「ウチのダンジョンを、ですか? その、いったい何に使われる気でしょうか。変な実験とかされても困りますし、近所迷惑も困るのですが……」


 「そのような事は致しません。現在、大奥様より御嬢様にとある命が下っております。それが、ダンジョンに行ってある程度の実力を手に入れる事です。元々葉月家は有力な武家の一家であり、かつての大名家であった事はご存知ですね?」


 「ええ、まあ。中学の歴史で学ぶくらい有名な家ですので……。ちょっと待って、もしかして!」


 「はい。「武家の血を引いたる者は戦えて当たり前である。女子おなごとて戦えねば、葉月の恥じゃ」とおっしゃられまして、御嬢様も力を持つ必要ができました。しかし通常のダンジョンでは……」


 「誰に襲われるか分からない……という訳ですね?」


 「はい、その通りです。いずれは市井しせいのダンジョンに行かねばならないでしょう、しかし最初からそれは厳しい。という事で東京23区を調べた結果、近い所に私有地ダンジョンがあったという事です。しかもクラスメイトの家ですから、実に都合が良いと」


 「成る程。多分断れないとは思うのですが、条件は付けられますか?」


 「条件、ですか?」



 途端に猛烈なプレッシャーがお付きの葉室さんだけじゃなく、運転手のお爺さんからも出始めたぞ。勘弁してくれよ、それが頼む方の態度か? 本当にこういう家の人は碌なもんじゃないな。



 「お止めなさい、夕月、坂村。こちらは頼む側です。条件も聞かずに圧を掛けるとは何事ですか!」


 「「申し訳ございません」」


 「あー、ええっと、条件というのはですね。見たり聞いたりした事を口外しないでほしいんですよ」


 「見たり聞いたりした事を、口外しない?」


 「ええ。ウチの母親は作家をしていたりしますから、そういった情報に触れるかもしれません。ですので口外しないようにお願いしたいんです」


 「北恋様ですからね、それはお墓まで持っていきます! 他人に漏らすなんて勿体ない事は致しません!!」


 「あ、はい。ソウデスカ……」



 北恋というのは母さんの作家名だ。正確には北条恋慕という名前で作家をやっているんだが、普通のファンと激烈なファンが居る。俺は母さんの書いた物なので読まないが、ファンタジーの恋愛物ばかり書いている、らしい。


 なので余計に読まないのだが、まさか葉月さんが母さんのファンだったとは……。



 「申し訳ありませんでした。確かに作家の方の家の庭という事は、何かの情報に触れる恐れはありますので、懸念されるのは分かります。特に北恋様……ゴホン! 北条恋慕様では、情報漏れを心配されるのは当然でしょう」



 葉室さん、アンタもか!? 20歳ぐらいだと思うが、その歳なら卒業するもんじゃないの? 違うのか? まあ、認めてくれるなら良いんだけどさ。


 俺としては母さんの事よりもミクの事だ。違う星の人が居るなんて事がバレたら絶対にマズい。少なくとも今日からって事は無いだろうが、明日からどうするかな?。


 ここで断ると疑問に思われて調べられるかもしれない。だから断らなかったんだけど……失敗だったろうか?。



 「ダンジョンに潜るとして、装備などは大丈夫ですか? いつから始められるかは知りませんが……」


 「問題なく揃えてあります。本日は北恋様に明日からダンジョンを使わせて頂きたいと、御挨拶にうかがうくらいです。ええ、挨拶はとても大事ですので」


 「ええ、御嬢様。御挨拶にうかがうのは当然の事でございます!」


 「………」



 あんたら母さんに会いたいだけだろ! 俺の心境は今、運転手のお爺さんと絶対に一緒だ。それよりもマズい、家の中にミクが居る事がバレる可能性が高い。


 っていうか、何でこんな事になるんだ。お願いだからミクはダンジョンの中に居てくれ!! 頼む!!。


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