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0448・ウィンドウルフ




 コウジが辛いようなので、昨夜適当に作っておいた物を幾つか取り出す事にした。その1つは剣帯で、もう1つは小さめのラウンドシールドだ。直径でいうと25センチしかない。その分軽いので大丈夫だろう。



 「これを俺に? すまん、助かる! ナイフをずーっと持ってるのも大変だったんだ。新たに盾が来たけど、これは仕方ないし我慢しよう。それに剣帯に引っ掛けられるみたいだし」


 「いーなー。って言っても、槍を付ける剣帯? なんて無いだろうけどさ。なんかそれ着けてるだけで、探索者っぽく見えるね?」


 「だろ! 俺も格好いいなって感じで見てたんだよ。ここから……こうやって抜くんだよな?」


 「何か慎重に抜いてるね。全然格好よくないんだけど?」


 「あのなー、メチャクチャ切れるナイフを格好よくなんて抜けるかよ。結構怖いんだぞ? 居合いの人達だって、上手くなるまでに何回も手を切るって言うしさ。俺は手を切りたくなんてないの!」


 「それは誰でもそうでしょ。おっと、新しいのが居た。今度は私ね」


 「気をつけろよー」



 槍を構えて近付いたセンは攻撃しようとしたが、その矢先に相手の槍が突き出される。慌てて後ろに回避するものの、そもそも相手の槍が届く範囲ではなかった。その事で少し恥ずかしがったものの、再び前へ。


 またもや相手が槍を突き出して来たので、今度は左に避ける。すると、槍を引き戻して連続で突いてきた。たまらず後ろへ距離をとり、少し呼吸を整えるセン。



 「セン、大丈夫か? 駄目なら俺に任せとけ」


 「大丈夫に決まってるじゃない。すぐに倒してみせるんだから!」


 「セン、恐怖、踏み込む、無理。敵、槍、弾く」



 ミクの言っている事を理解したのかジリジリと近付き、再び槍を突き出してきたアントマンに対し、持っている槍を下から上へと跳ね上げるセン。アントマンは槍を弾かれ、万歳の態勢に移行する。



 「攻撃!!」



 ミクの言葉を聞き、弾かれたように前に出るセン。即座に相手の胴へ槍を突きこみ、グニュっという感触と共に突き抜ける。貫いた槍を抜きつつアントマンを蹴り剥がしたら、既に絶命していたらしく動かない。



 「お疲れだ、セン。相手の槍に随分と翻弄されたな」


 「うっさい。槍って思ってる以上に怖いんだよ? 分かってるの?」


 「俺も初めての階層だから分からないが、それだけ反論できるなら大丈夫そうだな。本当に恐怖だったのなら、そんな反論無理だろうし」


 「まあ、そうだろうけどさ……他にかける言葉はないの?」


 「心配してるから軽口が叩けるか聞いたんじゃないか。ダンジョンに潜ってトラウマになる人も居るらしいからな。精神チェックはしておかないといけないんだよ」


 「問題ない。それより解体ナイフが渡されたって事は、自分でやれって事ね。さっきはレティーがしてくれたのに……」


 「自分、やる。構造、把握」


 「相手の体の構造を把握しろって事ね。まあ、関節がどの辺りまで曲がるかとか、内臓がどの辺りにあるかって大事な事だし。場合によっては蹴った方がいいのかな?」


 「知りたくないけど、知っておかないと危ないんだろうね。何と言うか、この場面ですら動画に撮っておいた方が良かったんじゃないかな?」


 「ま、言いたい事は分かる。戦い方とか解体の仕方とか、色々と見せてくれてるもんな。勿体ない気はしてきた」



 魔石を取り出した後は進み、今度はコウジが戦う。しかし盾で槍を防いで接近、ククリナイフで首を切り裂き、致命傷を与えた事で呆気なく勝利した。その後もすぐに魔石を取り出し先へと進む。


 この階は近くに階段があったので、さっさと9階へと下りる。この階もすぐに魔物が現れたが、それは狼だった。



 「あの特徴的な緑色はウィンドウルフか。コイツも魔法を使ってくるらしいんだけど、何で洞窟みたいな場所に出るんだよ。回避するのも難しい場所でさ」


 「出てきたんだから仕方ないじゃない。戦う、戦う。今度はお兄ちゃんが先ね」


 「仕方ないな」


 「コウジ、盾、突っ込む。それが、早い」


 「成る程な、分かった」



 コウジは盾を構えてウィンドウルフにジリジリと寄っていく。ウィンドウルフは低い姿勢でうなっていたが、突如として魔法を放ってきた。


 コウジにも魔法陣は見えているので即座に盾を向けると、「ドン」という衝撃が来たがそれだけだった。魔法の威力を大凡おおよそで把握したコウジは、再び魔法を使ってくるのを待つ。


 そして魔法陣が見えた瞬間、一気に走り出して接近する。ウィンドウルフは慌てたものの、それでも魔法は成功させた。とはいえコウジが止まる事はなく、魔法を防ぎながら近付き、顔に一閃。


 首に攻撃するのは間に合わないとしての一撃だったが、これが深くまで切りつけて、かなりのダメージを与える。更に片方の目が見えなくなったのか、慌てて後ろに跳んで距離をとろうとする。


 しかしコウジは許さずに追撃し、今度は首筋に一閃。これが致命傷となって勝利。本人は大変だったみたいだが、それでもそこまで難しい相手では無かったようだ。


 レティーが血抜きするのを見つつ。コウジは先ほどの戦いの反省をする。



 「もっと上手く戦えたとは思う。走る前にもうちょっと近付いておくべきだったんだろう。そうすれば最初に首を狙えた筈だからさ」


 「そうだけど、戦ってみないと分からないし、仕方ないんじゃないの?」


 「まあ、そうなんだけどさ。センみたいにリーチが長い訳じゃないから、どうしても間合いを詰めなきゃいけないんだよなー」


 「こっち、つかう?」



 そう言ってミクがアイテムバッグから取り出したのは、ドラゴンの骨で出来たメイスだった。フランジは6枚ついており、情け容赦の欠片も無い形は、いっそ清々しい程である。



 「メイスかー。でも使うのは楽だって聞くし、そっちの方が良いかも。とはいえ、この装備じゃ日本男児とはとても言えないな。むしろ海外の聖職者だ」


 「聖職者って、そもそも戦ったりしないでしょ」


 「センは知らないのか? 海外っていうか、ヨーロッパの聖職者は普通に戦争に出て人殺しをしてたぞ? メイスでカチ割って噴き出した血の事を、聖水のシャワーっていう隠語で呼んでたらしいし」


 「うわぁ……って思ったけど、日本だって僧兵がいたんだから変わらないか」


 「そんなもんだ」



 コウジはミクに大型ナイフとククリナイフを返し、代わりにミクからメイスを借りる。それなりの重量があり、「こんな物で殴られたら絶対に死ぬな」と判断したコウジ。


 それを敵に向ける事には何の躊躇ためらいも無いが、ミスした時が怖いと思っているのだ。何処か自分の体にぶつけてしまいそうであり、それが大怪我に繋がるような気もしている。


 次の番であるセンが戦い始めたので思考を止め、妹の戦いを見守る。



 「成る程ね。魔法陣から真っ直ぐ飛んでくるなら、これで良い筈だよ、ね!!」



 センは相手が魔法陣を出した直後、槍を真っ直ぐ持って突進する。慌てたウィンドウルフが魔法を放つも、その魔法を切り裂いて突き抜け、ウィンドウルフの頭を貫通。脳を潰されたウィンドウルフはあっさりと死亡した。



 「これが一番手っ取り早いと思ったんだー。考えた通りだったね」


 「それが出来るなら、それが一番良いんだろうけどさ、それってミクから借りてる槍があるからだからな? 普通の槍なら頭を貫通したりはしないから注意しろよ?」


 「そんな事ぐらい分かってるよ」



 再び嫌々ながらも解体するセン。本当に嫌なのが分かるが、だからといって必要な事なら文句を言いつつもやる。どうやら根は真面目らしい。


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