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0447・8階へ




 7階をウロウロしつつブルーラビットを倒しては魔石を手に入れる。既に皮を剥ぐのは諦めたのか、コウジもセンも魔石だけを取り出していた。そんな中、ミクだけがキッチリと皮を剥いでいる。



 「皮を剥ぐのに多少の時間は掛かるが、絶対にこれって速いよな? 普通はもっと時間が掛かる筈だし、そういう動画も見るぞ?」


 「あのグロ注意のヤツ?」


 「あれってグロ注意ってなってるけど、大昔の人は普通にやってただろうし、今でも家畜の肉を解体している人は居る訳でな? それを野蛮って言ってるヤツは肉を食うなと思うぞ? あれをグロいと思うのは誰かに押し付けてるヤツだけだろ」


 「でもグロ注意指定されてるじゃない? 私は気にしないけど」


 「そうなんだよなー。そもそも動画のタイトルで分かるんだから、それで察せないヤツは動画を見るなと思うわ。俺も最初は自分でやるのに嫌な思いをしたけど、もう慣れたし立派な仕事だと分かる。本当、やらないヤツほど大きな声で喚くんだよな」


 「そんなのずっと変わらないじゃん。自分で何もしないヤツとか、自分が見たくないっていう理由で文句言うんだよ。なら、その目を永遠に閉じればいいって思うけどね」


 「だよなー。俺も動画配信してるけど、あんな連中に負けずに動画をアップし続けるって決めてる。まあ、それ以前に殆ど誰も視てないけどさ」


 「前に見たら、視聴回数が200だったよ」


 「うん、まあそんなもんだろ。高校生が地味に解体とかしてるだけだし。なるべく簡単に、お金を使わず魔物を倒そうというコンセプトだしな。とはいえ、怪我したら余計な金が掛かるから当然なんだけど」


 「本当にそうだよね。まあ、お兄ちゃんの場合は半分取られるまでは行ってないけど。でも、ミクは1回で行ったんだよ? お兄ちゃんもファングボーアを丸々1頭持って帰ったら?」


 「そんな大変な事が出来るか」


 「半分、なに?」


 「ああ。あのね、ダンジョン探索者って税金が取られるんだけど、お兄ちゃんみたいな大した事の無いのは取られる税金が少ないんだよ」


 「五月蝿い。いちいち余計な言葉を付け足すな」


 「で、売値が1万円を超えるのは一律で5割も取られるの。代わりに税金はそれで払った事になるから、後は全て自分の物らしいけど」


 「税、とられる。それで1万円?」


 「そう。つまりファングボーア丸々1頭の売値は本来2万円って事。出てきたぞ、セン。……それが税金で半分引かれたから、1万円だったって訳だ。まあ、ファングボーアって何だかんだいってデカいしな」


 「牙、皮、肉、それらで、1万円?」


 「そういう事。牙だけなら多分、2本合わせても2千円もいかないと思う。丸ごと持って帰れるって凄いよな。そういう意味でもアイテムバッグってとんでもないと思うよ」


 「終わったー。レティーさん、後はお願いしまっす」


 「私が血抜きをし、中の魔石を取り出せばいいのですか?」


 「魔石を取り出すだけでいいよ。私は持ち帰れないし、ミクに持ち帰ってもらっても怪しまれるし」


 「分かりました。魔石を取り出しましょう」



 ミクはブルーラビットに近寄り、レティーを死体の上に下ろす。するとレティーは傷口からモゾモゾと入り込んでいき、魔石を引っ張り出してきた。どうも自分の体で覆ってから、引きずり出しているようだ。


 レティーが取り出した魔石は綺麗で、汚れも血も付いていない。それを受け取って喜ぶセンとジト目のコウジ。魔石を地力で取り出しているコウジからすれば、楽をするなと言いたいんだろう。



 「そういえば魔石って発電以外に何か活用されてたっけ?」


 「さあ? 聞いた事ないね? それでもクリーンエネルギーで環境汚染の無い便利な物なんだからいいじゃない。かつて環境汚染だなんだって喚いていた人達は、今でも何かに文句言ってるらしいけど」


 「環境団体ってヤツな。アレは文句を言いたいだけの団体で、裏から支援してるバカの団体だろ? <ガイア>の環境を心配してるオレカッケーの連中だから、そもそも人語を喋ってねーし」


 「酷いねー。でも抗議で絵画を汚そうとするような連中だし、確かに理解不能という意味では間違ってないね。話がズレたけど、魔石って使い道は何かないの?」



 センはそうミクに聞く。ミクは少し悩んだ後、【念送】で伝える事にした。



 『魔石の使い道は魔道具の燃料と、魔法を使う際の補助として使われる。魔石の魔力量にもよるけど、最大で3割の魔力を肩代わりしてくれる。何故かは分からないけど、3割以上は肩代わりしてくれない』


 「「へー!」」


 「魔道具の燃料なのは見たから分かるけど、魔法を使う際の魔力の肩代わりまでしてくれるのかー。だったら魔石を使って練習した方が良いんじゃないの?」


 「魔法、使う。まだ2人、無理。循環、魔石、関係ない」


 「ああ。魔力循環の練習中である俺達は、魔石を使うかどうかって段階ですらないのか。そりゃ魔石を持っても意味ないわ」


 「残念。使えれば魔石を沢山使って練習出来ると思ったのに。……そういえばミクがポンポン倒してくれてるけど、それはいいの?」


 「ブルーラビットは俺達じゃ儲からないし、ミクの方が圧倒的に早い。仮に俺だけで潜る場合でも、適当に倒しながら逃げて行くかな?」


 「儲からない魔物からは逃げた方がいいよね。どうせ復活するし。って、階段だ。やっと8階かー」


 「そこまで時間も掛かってないし、十分早いけどな?」



 そう言って、ミクが皮を剥ぎ取るのを待ち、それが終わったら8階への階段を下りる。到着してすぐ魔物が出迎えてくれたが、それは2足歩行の蟻だった。しかも手には槍のような物を持っている。



 「ゲッ!? アントマンかよ! 8階でこれって、ちょっとシャレになんねーなー」


 「2本の足で立ってるからアントマン? っていうか短い槍みたいなのもってるんだけど」


 「あれ、当然刺さるから注意しろよ? まあ、センの場合はミクの槍を借りてるし、そっちの方が長いから大丈夫だろうけどな。アントマンの槍って、短いっていっても1メートルぐらいはあるんだよ」


 「ようするに剣とかじゃ不利なんだね? 相手の方がリーチが長いから」


 「そういう事。だから強さの割にはケガをしやすいって言われてる。当たり前だがアントマンの槍が綺麗な訳がないからな。妙な病気になりたくなかったら、気をつけて戦えよ?」


 「分かってる。私だってケガしたくないし……って、ミクが行ったけど?」


 「行ったなぁ……」



 ミクはアントマンにズンズンと歩いて行き、アントマンが突き出してきた槍を弾いて態勢を崩させると、頭にウォーハンマーを振り下ろして一撃で倒した。後は解体ナイフで魔石を穿ほじくり出して終了だ。



 「アントマンの甲殻はそこまで硬くないとはいえ、一撃で頭が潰されて死亡かー。特に盾で弾かれた後、完全に無防備だったな」


 「なんか倒れそうになってたっていうか、バランスを崩してたよね?」


 「盾、流す。態勢、崩す、一撃。盾、基本」


 「あの使い方が盾の基本なのかー。思ってる以上に盾が強い気がするぞ? 俺も持った方がいいのか? いや、でも重そうだし……」


 「確かに重そうだよね。あの盾を当たり前に持って進んでるし、戦闘でちゃんと使うんだよ? もちろんポーチに仕舞えるんだけど、それでも戦闘中は普通に使える訳だしね。凄い力と体力だよ」


 「だよなー。筋力や体力がなきゃ盾は使えないだろうし、重くてキツいってうのも辛いしな。俺も段々とナイフ持ってる両手が厳しくなってきたからさ」


 「もう?」


 「センは槍を杖みたいに持ってるから楽でいいだろうけど、ナイフは常に持ち続けなきゃいけないんだぞ? 長く持ってると負担があるんだよ」



 確かに軽い物でも長時間持ち続けるのは大変だろう。怪物は違うが、それは例外中の例外だ。


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