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0443・売値と夕食




 「ただいまー! それなりの値段で売れたうえに数が多かったから、儲かったよ」


 「ただいま。向こうの職員さんが運んでくれて本当に良かったわ。でなければ動かせなかったほどよ。あのファングボーアは意外に売れるお肉らしくって……って、何をしてるの?」


 「おかえりなさーい! これ? ミクに魔力の使い方を教えてもらってるの。魔力は分かったんだけど、循環っていうのが難しくて止まってる感じかな?」


 『おかえり。今はセンの魔力循環に関してやってるけど、もしかしてこの星の者って誰も魔力すら使えない? 魔法どころじゃなく、まさか魔力の使い方の基礎から教えなきゃいけないとは思わなかったよ』


 「あらあら! センだけズルいんじゃない? 私だって魔力とか魔法とか教えてほしいんだけど?」


 「元々は俺が教えてもらう予定だった筈だろ? いや、センもだけどさ。抜け駆けはズルくないか?」


 『ファングボーア7頭で売り上げは7万円だったよ。1頭1万円らしい。魔石も含めて丸々1頭分で、しかも血抜きも完璧で状態も良かったからだってさ』


 『血抜きに関してはブラッドスライムであるレティー以上は無理だからねえ。それに獲物は【冷却】の魔法で冷やしておいたし。そうすれば質が悪くなるのは防げるから、売値も上がるしね』



 実際には根源の神から叩き込まれた知識の中に、下級の色々な魔法もあったからであり、元の星では使ってなかったが別にいいだろう。細かい話をする気もないミクは、それが当たり前かのように言う。


 その後はミクが魔力の感じ方から教えていき、魔力の循環を学ばせていく。相変わらずセンは感覚が悪いのか、魔力の循環につまづいているが、コウジはあっさりと魔力循環を熟した。



 「ちょっと、お兄ちゃんだけズルくない?」


 「ズルくない。俺は【魔力操作】スキルを持ってるから上手くて当たり前なの。代わりにセンは【見切り】スキルを持ってるだろ。元々はハズレスキルって言われてたんだから、いいじゃないか」


 「そうねえ。ようやくハズレスキルなんて言ってた子達に言えるわね、外れなんかじゃないって。それに魔法が使える様になったら、また変わるんでしょうし……。何か便利な魔法を教えてもらいなさいね」


 「それって便利に使おうって魂胆が丸見えなんだけど?」


 「あらあら、何の事かしら?」



 コウジはリオをジト目で見ているが、リオはどこ吹く風だ。それはともかく、やはりコウジは【魔力操作】スキルを持つだけあって魔力の扱いは上手い。そして次に上手いのはリオだった。


 これに関しては経験の差か年齢の差かはイマイチ分からない。とはいえ出来るまで努力すれば使えるので然したる問題ではないだろう。そう教えつつ、それぞれに魔力の使い方を学ばせていく。


 夕食の時間になったものの一心不乱に練習しているので、仕方なくドラゴンの干し肉を出してセリオに食べさせる。それを見てようやく気付いたリオが慌てた。



 「あ、夕食を作るのをすっかり忘れてたわ。こうなったら何か頼みましょうか?」


 「適当にピザでいいよ。それより今日中に何とか魔法を……」


 「まあ、俺もピザでいいと思う」



 兄妹の声であっさりと決まる夕食。リオが適当に注文していると、ミクがワザとたどたどしい日本語で話す。地味に面倒臭いようで、内心溜息を吐いている。



 「お金、本来、半分。獲物、持って行く、無理」


 「いや、半分は流石に多すぎる。とはいえ、受け取らないとそれはそれで失礼か。それにウチに住むんだし、構わないよね?」


 「まあ、そうね。お互いに遠慮しない為にも受け取った方がいいわ。それにしても一日で7万円なのよねぇ……。税金は引かれてるし、探索者って本当に儲かるっていうのが分かるわ」


 「そもそもミクの場合は一頭丸々だし、それでだからね。ファングボーアって結構デカイし肉も多いし。そもそもウチの車によく7頭も乗ったよ、本当。車は大丈夫だったの?」


 「特に問題はなかったわよ? 血が抜けてたから、その分軽かったんでしょうね。それでも結構な重量だったけど」


 「ファングボーアは肉もそうだけど、皮も使われるから1万円だったんじゃないかな? 場合によっては太い牙も使われるかも。あれも槍の穂先に使われたりするらしいしさ。それに1頭丸々なんて滅多に持ってくる奴は居ないって言ってたよ」


 「それなら高いのも納得ね」


 「ミクの場合はアイテムバッグがあるから簡単に持ち運び出来るしね。そうなると1頭丸々なんて当たり前に持って帰れるでしょ」


 「そういう意味でもアイテムバッグはチートね。うんうん」


 「チートって言っても他にもあるんだけど? 確かアメリカとイギリスとロシアじゃなかったか?」


 「確かそうだったと思うけど、それっぽいフェイク映像じゃないかとも言われてるし……何とも言えないかなぁ。ミクが持ってるのは間違いなく本物だけど」


 「アレはな。正真正銘の本物だから疑う気持ちは欠片も無い。そもそも魔道具が出てくる時点であり得ないし。っと、そうだ。母さん、ミクから冷房の魔道具を借りたから、寝る時にコレを使ってよ」


 「良いのかしら?」


 「ミクは実験というか、改良の為に作った物だから問題無いってさ。ここを開けて魔石を入れると、その魔力を吸って自動的に起動するんだって。あんまり近いと寒いかもしれないから、適度に離すと良いらしいよ」


 「魔石ならダンジョンに行って獲ってくれば済むし、電気代も掛からない。俺が行ってた階層の魔石でも使えるみたいだから、これからは涼しい部屋で寝られるよ。俺の部屋は無かったし」


 「それよりミクさんが泊まるなら、寝具をどうしようかしら? ……来たから取りに行ってくるわ」



 リオはリビングを出て行ったので、コウジが先ほどの質問をミクにする。流石に泊めてやるから床で寝ろは無い。なので寝具をどうしようか聞くのだが……。



 『私はこの狐の毛皮があるからいいよ。これの上で寝るとすぐに眠れて、次の日の朝もスッキリ起きられるからね。これはそういう特殊な効果のある毛皮なんだよ』


 『へー、魔物の中にはそんな効果のある毛皮を持つ奴もいるのかぁ』



 リオが2つの箱を持って戻ってきたが、それを開けると中に平たい何かが入っていた。それなりに良い匂いがするので、おそらく食べ物なんだろう。セリオの目がキラキラしている。



 「じゃあ早速食べましょうか? 適当に取って食べて行ってね」



 リオがそう言うと、コウジとセンがすぐに取って食べる。それを見ているミクにコウジが食べ方を教え、ミクはアイテムバッグから皿を出すと、その上に取ったピザを乗せた。するとセリオがすぐに食べ始める。


 その後はミクも取って食べ始めるが、リオはセリオがピザを食べても大丈夫なのか心配しているらしい。



 「チーズとか色々使われているけれど、セリオは食べて大丈夫かしら?」


 「そういえば……。ちょっと聞いてみるよ」


 『ミク。聞きたいんだけど、セリオは食べちゃマズい物とかあるか?』


 『別に? 毒以外なら何でも食べられるよ。というか、何でそんな事を?』



 ミクがそう聞き返すと、コウジは動物には食べさせると駄目な物などがあると言った。それに対するミクの答えは簡単であり、何の問題も無いし、元の星でも色々な物を食べていたと返す。


 実際にはミクの血肉の御蔭なのだが、そこを伝える必要などは無い。



 「毒物以外は何を食べても問題ないって。元の星でも人間と同じ物を食べてたし、酒も飲んでたってさ」


 「えっ? お酒まで!?」


 「なかなかにワイルドだねー。とはいえ古い時代とかでは飲酒年齢とか決まってないし、飲んでても普通じゃない? それが魔物なだけでしょ?」


 「まあ、それもそうね。うーん、従魔がお酒………」


 「センの所為で母さんが長考に入っちまったぞ?」


 「仕方ないじゃん。ヨーロッパの古い時代なんて、ピケットとかいうのを飲んでたって聞くし」


 「あー……何かのラノベで出てきたなー、それ」



 適当な話をしつつの夕食は過ぎていき、ミクはリビングで寝る事になった。ミクの持っている狐の毛皮がフカフカであった事から、問題なしと判断したようだ。


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