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0440・ドラゴン肉の威力




 ドゴッ!! という音がしてゴブリンの頭が吹き飛ぶ。かなり手加減をしているものの、ゴブリンの頭が千切れて吹き飛ぶ様を見せられている北条兄妹。しかし、もう慣れたのか文句も出なくなった。



 「いやー、シャレにならない強さだね。お兄ちゃん、よくこんな美人に襲いかからなかったと思う。もし襲ってたら殺されてるね」


 「人を強姦魔みたいに言うな。どれだけ美人でも襲うとかあり得ないだろ。それはともかくとして、別の星の人達って強すぎないか? それともミクだけが強いのか? どっちにしても尋常じゃないぞ」


 「ねー。あれで魔法まで使えるんだよ? 完全に敵無しじゃない?」


 「そこまでかどうかは分かないが、っと、階段だ。あんまりゴブリンは居なかったな」


 「私も倒したから、思ってるよりは多かったけど?」


 「お前は解体をしてないから卑怯だけどな?」


 「それは超優秀なスライムさんに言ってほしいなぁ……」



 実はセンが倒したゴブリンは、血を飲むついでにレティーが魔石を取り出していた。レティーとしては不味いものの、この星での血の補給に関しては仕方ないと諦めてもいる。


 ミクから、この星ではダンジョン以外に魔物は居らず、居るとしたら動物ぐらいでしかない。そしてそれは人里離れた山の中だと聞いているのだ。だから不味くとも我慢するしかないというところだ。


 そんな中、ゴブリンの階層を抜けたミク達は6階へと進む。そこに出てきたのは牙の太い猪であり、それを見たコウジは驚く。



 「あれってもしかしてファングボーアじゃないのか? だとしたらかなりマズい。あれの突撃は初見「ドゴン!!」殺しと言われ……」


 「一撃で死んじゃったね。まあ、あのハンマーを頭に受けたら死ぬしかないし?」


 「あ、ああ……。一応言っておくと、突撃の威力が思っている以上に高いから、普通は回避しながら足を攻撃して倒すらしい。あんな正面からハンマーでブン殴ったりはしない。しかも自分から襲いに行くとかは絶対に無いからな?」



 ミクが首を切り、レティーが血抜きをしていく。その様を見ていて「スライムって便利だなー」と思う2人。血抜きをした後で【清潔】と【聖潔】を使ったら、ミクはアイテムバッグにファングボーアを丸ごと入れた。


 それを見て驚く北条兄妹。



 「アイテムバッグって世界に極僅かしかないって聞くけど、入れる時ってあんな「シュルン」って感じで入るんだなー。すげー羨ましいけど、取られるってなったらちょっと怖い」


 「分かる。絶対に色んな人から狙われるよね? ちょっとシャレにならないかも」


 「どう、かした?」



 ミクはアイテムバッグの事を話しているので、今の内に説明しておいた方がいいと判断し、聞く事にした。安易に手を入れるとマズい事になる。



 『アイテムバッグなんて、この<ガイア>では数個しか見つかってない非常に貴重な物なんだ。俺達のような一般人じゃ見た事ないし、そんな風に入るんだと思ってさ』


 『これは普通のアイテムバッグじゃなくて、かなり特殊なアイテムバッグなんだよ。何たって中に入れた物の時間が止まるっていう特別な物でね。ちなみに私以外が手を入れると、入れた部分が無くなるから注意してね』


 「こわっ!?」


 「どうしたの?」


 「あのアイテムバッグ、ラノベとかでお馴染みの時間停止機能が付いているんだと。ただし所有者以外が手を入れたら、入れた部分が無くなるらしい」


 「うぇっ!? 無くなるの!? 使ってみたかったのに……」


 「気持ちは分かるが止めとけ。そもそもよく考えたら、あの中って時間と空間はどうなってんだ? そう考えるとアイテムバッグって相当ヤバいんじゃ……」


 「お兄ちゃん、ファンタジーにそういうツッコミは無しでしょ」


 「いや、ここ現実だからな?」



 話が終わらないように感じたので移動しようとすると、セリオが自分も戦いたいと言い出した。仕方なく許可を出すも、慌ててコウジが反対する。



 『ちょっと待ってくれ、ミク。幾ら何でもセリオが勝てる訳が無い。死なせるような事を何故させるんだ!』


 『セリオがさっきの猪如きに負ける訳ないじゃん』



 ミクがそう言った後、セリオは最大の大きさになる。すると、その事に驚いた2人が大きな声を上げた。



 「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?!?!」」


 『五月蝿い。声が大きい』


 「いやいやいやいや。大きくなってるから! すっごく大きくなってるから!! つか、デカ!?」


 「うわー、凄い! 本物のサイよりおっきいんじゃない!? わー、セリオって本当はこんなに大きかったんだー」


 「あれか、大きくなったり小さくなったり出来るって事か? 何だよ、そのファンタジー生物」


 「魔法があるんだからファンタジーに決まってるじゃない」


 「ここリアルだからな!? ファンタジーじゃねえよ!?」



 生来のツッコミ気質なのか、どうにも妹のボケにはツッコまないと納得できないようだ。それはともかくファングボーアと対峙するセリオ。しかし体の大きさが違いすぎる為、ファングボーアは後ろを向いて一目散に逃走。それを見送るミク達。



 「俺、魔物が逃げる姿を初めて見た」


 「私も……。でもあれだけ大きなセリオが居たら、絶対に逃げるよね?」


 「だな」



 セリオは納得いかなかったのか、体高”4メートル”の姿から体高70センチ程度まで小さくなり、ファングボーアと変わらない大きさになった。そして再び前へと進んで行く。


 先ほど逃げたファングボーアとは別の個体なのかは分からないが、突っ込んで来たのでセリオも走る。そして2匹は正面衝突し、ファングボーアは飛ばされて天井に叩きつけられた。


 その後は悲しい感じで落ちてきて終了となったが、骨や内臓などがグチャグチャで食べる事も出来ない。それを説明するとガックリと、明らかに落ち込むセリオ。仕方なくドラゴンの干し肉を出し、機嫌を治しておく。



 「流石に中身がグチャグチャじゃ食べられないが、あれだけのパワーでぶつかって、天井に叩きつけられる威力だもんな。そうなっても仕方ない」


 「干し肉食べたら落ち込んでたのが元通りになったけど、あれって美味しいからかな? 私も1つ欲しい」



 センがそう言うので何となく分かったフリをしながら、アイテムバッグの中から干し肉を2つ取り出す。



 「食べる?」


 「いいの? ありがとう!」


 『センの奴が物欲しそうにしてたからか、気を使わせてすまん』


 『別にいいよ。ゴールダームの第9エリアのボスはドラゴンだったからね。その時に乱獲して干し肉は沢山作ってあるから』


 「は? これドラゴンの肉なのか!?」


 「………」


 「セン、お前さっきから黙ったまま口だけ動かしてるな?」


 『ドラゴンの肉って相当美味しいからか、私の仲間達も一心不乱に食べてたね。大きな声で言わないと気が付かないんだよ………って、お前もか』



 ミクの話を聞きながらコウジも食べ始めたが、そのコウジも一心不乱に干し肉をかじっている。最早それ以外には何も目に入らないかの如く、一心不乱に干し肉をかじる様は異様だ。


 そんな姿を晒しているという自覚の無い2人は、食べきるまで意識が戻ってこないのであった。



 ◆◆◆



 『で、そろそろ意識は戻ってきた?』


 「あ? あ、ああ……あれ? 俺何してたんだっけ?」


 「うん? ……あれ? ここドコ?」


 『2人ともドラゴンの干し肉を食べてたんだけど記憶に無い?』


 「あっ!? そうだ、ドラゴンの干し肉を食ってたんだった!!」


 「干し肉……。えっ!? あの干し肉、ドラゴンの肉なの!? ……味の記憶が無い!! 食べた筈なのに、どんな味か覚えてないんだけど!?」


 「ヤベェ……俺も全く覚えてない。いったいどうなってるんだ?」


 『何故か誰も彼も一心不乱に食べるんだよねー。そんなに集中するほど美味しいかな? ……はい、コレ。今度はじっくり味わうようにね』



 2人は感謝しつつ、再びドラゴンの干し肉をかじる。またもや一心不乱になりそうになるも、寸でで思いとどまった2人は、ゆっくりと味わう。


 そんな2人を連れて、ミクはもうちょっとファングボーアを倒したら戻ろうと思うのだった。


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