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0439・この星の魔法




 魔法の使い方を教えろと目線で訴えてくるセンをスルーし、ミクは何故この星では魔法が使えないのかを聞いていく。



 『魔法が使えない理由って言われてもなぁ。確か最初に魔法陣? みたいなのが書かれた紙が見つかったのはアメリカだったと思う。魔法の名前と魔法陣が書かれた紙が見つかって、それを研究したんだけど誰も使い方が分からない……っていう話だった筈』


 『ふーん。確か5年前にダンジョンが出来たって言ってたね?』


 『ああ。5年前にダンジョンが出来たんだ。突然世界中にダンジョンが出来て、そこから魔物が溢れ出してきてさ。当時、多くの警察官とか軍人が亡くなったんだよ。それからダンジョンに関する研究もされてるけど、碌な事が分かってないらしい』


 『ふんふん、成る程。数千年前からダンジョンがある星と、5年前に突如ダンジョンが出来た星を同じにしちゃいけないね。それで魔力を操る事も出来ないのか』


 『そう……なのかな? さっきも言ったけど、その所為で俺の【魔力操作】とか魔力全般のスキルはハズレスキルって言われてる。手に入れたって使えないものって感じで』


 『まあ、ハズレスキルっていうのは分かるね。魔法なんて努力すれば誰にでも使えるしさ。ただ、他の人よりは早く上手くなるぐらいかな? それなら別のスキルがいいとなるのも分かる』


 『ああ、魔法が使えてもハズレスキルなのか……』


 『さて、そこまでは言えないんじゃない? 上級者で終わる筈の人が達人まで行く可能性はあるしね。元々達人まで行く人にはあんまり意味無いだろうけど』


 『そういう事か。俺が達人まで行く……あり得ないな。だったらこれはハズレじゃない』


 『実際、スキルに当たり外れなんて無いけどね。私なんてスキルを持たないから、特にどうもこうも思わないけど』


 『えっ? 誰でもスキルを持つ筈だろ? ……もしかして、ミクの居た星の人の中にはスキルを持たない人が居るのか?』


 『それなりの割合で居るけど、別に誰も気にしてないんじゃない? 努力する方が重要だからね。むしろスキル持ちの場合は努力しない傾向があるから、スキルを持たないヤツからバカにされたりするよ』


 「ちょっと、私をけ者にしないでよ!!」



 そのセンの一言をキッカケにして、先へと進む事にしたミク達。小部屋についたらコウモリを見つける度にミクが【火弾】を使うので、コウジとセンは喜んでいる。どうにも魔法というものに妙な憧れを持っているようだ。



 「魔法、見る、楽しい?」


 「楽しい、楽しい。だって世界でも私達しか見た事ないんだもん、凄いことだよこれって! どんな偉い人でも、どんな有名人でも見た事ないんだからね。私達が初めてなんだから!」


 「まあ、分かるけど興奮しすぎだ。落ち着け、魔物が寄ってくる」



 コウジがセンをなだめながら先へと進んで行く。ダンジョン内で魔法の練習をさせるのも危ないので、帰ってからという事に決まったものの、センは早く帰ろうと早速言い出した。


 再びコウジがなだめつつ、ミク達は5階へとやってきた。ここで出てくるのはゴブリン。ミクはコウジに対し、ゴブリンを倒してみるように言う。



 『人型の者を倒して駄目になるようなヤツとか居るから、とりあえず倒してみて。ゴブリン如きはそこまで強くないし、森の中とか見通しの悪い所で出会わない限り簡単に勝てるよ』


 『分かった。とりあえず倒してみる』



 スコップを持ったままのコウジは構えてジリジリと近付いていく。ゴブリンの方はそんなコウジに頓着とんちゃくせず、「ギャ!ギャ!」と言いながら飛んだり跳ねたりしている。


 ゴブリンが何がしたいのか分からないが、コウジは間合いに入ると、即座に胴体に向けてスコップを突き出した。その攻撃が直撃し、「ギャッ!」という声と共に後ろに倒れるゴブリン。それを見て止まるコウジ。



 「〝追撃!!〟」



 ミクが何を言ったかは分からなかったが、コウジの体は自然と動き、ゴブリンの頭を縦にしたスコップで殴りつける。その一撃は昏倒こんとうさせるにとどまったが、その後に何度も叩きつける事で勝利した。



 「ハァ、ハァ、ハァ………。ふぅ、何とか勝った。人型ってだけでイヤなもんだが、それでも何とか……」


 「お兄ちゃん……」



 あからさまに顔色の悪いコウジ。だからこそミクはハッキリと言っておく。



 『ゴブリンどもが人型だからといって、普通の生き物だと思うな。こいつらは人を殺さずにいじめ抜き、生きたままはらわたを引きずり出すようなゴミだ。それを見てケタケタ笑っているような害獣だ。見たら迷わず殺せ』


 「あ、ああ……分かった」


 「なに?」



 コウジはセンの顔を見て少し悩んだものの、敢えて言っておくべきだと判断したようだ。



 「こいつらゴブリンは人をいじめ抜き、生きたままはらわたを引きずり出すような害獣なんだとさ。見たら必ず殺せって」


 「………」



 センはあからさまに顔をしかめた。人型の生き物だからと思っていたが、自分達とは絶対に相容れないと理解したのだろう。そんなセンにミクは槍を渡し、解体ナイフで魔石を取り出す。相変わらず汚い魔石に【聖浄】を使い、コウジに渡した。



 『ゴブリンの魔石は汚く魔力もにごっている。正常な状態に戻すには【浄化魔法】の【聖浄】を使うのが一番良い。こうして綺麗にしておけば、ゴブリンの魔石がおかしな事を起こす事も無い』


 『ゴブリンの魔石ってにごってるのか、そもそも初めて得たから知らなかった。ちなみにゴブリンの魔石の買取は1個400円だよ』


 「えっと……これを渡されたって事は、私に戦えって言ってるんだよね。私のスキルは【槍術】とかじゃなくて【見切り】なんだけど……」


 「ゴブリン、殺れ」


 「それ絶対にやれじゃなくて殺れ、だよね? ……とはいえここまで来たら避けられない。女は度胸!」


 「愛嬌あいきょうじゃないのかよ……」



 次に出てきたゴブリンに槍を構えて近付いていく。「ギャ!ギャ!」と飛び跳ねているが、センは関係なしに胴体に突き込んだ。それはあっさりとゴブリンの胴体を突き抜けてしまい、慌ててゴブリンを蹴りながら引き抜くセン。


 その一撃で倒れたゴブリンは苦しむが、槍を抜いたセンは迷わず頭を突き刺した。その一撃で脳を貫き即死。そこで戦いは終わった。どうも【見切り】というスキルは回避だけではないようだ。



 「ふぅ……なんだろ、思ってるよりも衝撃を受けてない? 何かそんな気がする。……いや、それよりも、この槍おかしい! なんでゴブリンの体を突き抜けていくの? もっと、こう……刺さるだけとかじゃないの、普通は」


 『ミク、センがこの槍はおかしいって。何か切れ味が良すぎて変だってさ。俺もそう思うけど、それって何で出来てるんだ?』


 『それはドラゴン素材の槍だよ。というより、私の装備は一式がドラゴン素材の物だからさ、その程度の切れ味は当然なんだけどね』


 「ドラゴン!?」


 「えっ、ドラゴン? ……この槍、ドラゴン製なの!?」


 「どうやらそうらしい。初めて見たぞドラゴン素材の槍なんて……。尋常じゃねえ、ラスボス前の装備かよ。俺はスコップなのに」


 『それはドラゴンの牙と爪と骨と鱗と魔石を粉にして混ぜ合わせて、焼き上げた物だよ。魔力を通すと更に硬度と切れ味が上がるけど、ゴブリン程度にそこまでする必要はないね』


 「ドラゴンの牙と爪と骨と……えーっと鱗と魔石を粉にして焼いてあるんだってさ。で、魔力を通すと更に硬さと切れ味が上がるらしい」


 「わー、本当にトンデモ武器だったんだ。メチャクチャだね、コレ」



 センはドラゴン素材の槍をミクに返そうとしたが、ミクは持っておくように言い、自分はウォーハンマーとカイトシールドという、いつもの装備を出す。



 『これが私のいつもの装備だよ。そっちはサブだから護身用に持っておくといい』


 「その大きなハンマーと盾がミクのいつもの装備らしい。それは護身用に持っとけって」


 「おおぅ、ワイルド……」



 言いたい事は分からなくもないが、武器が壊れにくく盾で防げるので安定しているのだ。この装備は。


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