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0437・北条家族との話し合い




 先ほどまで妹がくつろいでいたリビングに集まり、コウジが家族に説明している。ミクはこちらの言語が分からないていで居るので、分からないフリをしておく。



 「とりあえず説明すると、こちらの女性の名前はミク。俺がダンジョンの3階でビッグアントを倒してた時に足音がしたんだよ。それで警戒してたら、前からミクがスタスタ歩いてきたんだ」


 「お兄ちゃんが女性の事を呼び捨てにしてるー」


 「うるさい、茶化すな。それで言葉が全く通じなかったんだけど、このイヤーカフス? っていうのをしてると、【念話】っていうのが出来るらしいんだ。それで何とか会話が出来てさ。それでウチまで連れて来たってわけ」


 「【念話】って本当? それって超凄いじゃん。そんなアイテム聞いた事ないし、売れば大儲けだよ! 今すぐ売ろう!」


 「これは俺のじゃなくて、ミクの物なの! あくまで話す為に借りてるだけだ! 他人様の物を売れるかよ!!」


 「そんなの聞いてないんだから仕方ないじゃん。言わないお兄ちゃんが悪いんでしょ!」


 「おま!? さっきのは俺の所為じゃないだろう!」


 「はいはい、いちいち喧嘩しない。それよりミクさんとはお話できないのかしら? 流石に不便だし、でも言葉が通じないって言ってたわね?」


 「ミクの言う事を信じるなら、別の星の人だよ。<ガイア>とは別の星の人で、ゴールダームっていう国のダンジョンに潜ってたらしい。それで最奥にある脱出の魔法陣? っていうのに乗ったら、何故かウチのダンジョンの<コアルーム>に居たんだってさ」


 「えー、嘘くさ。って、あれ? もし嘘ならどうやってウチの庭のダンジョンに入ったの?」


 「それどころか、4階への階段手前で前から来たんだよ。どう考えたって下から来たとしか考えられないうえに、こんな手の込んだドッキリ誰がするんだよ」


 「確かにそうね。でもぬいぐるみとか抱えてるし、若干変わった人なのかしら?」


 「あ、ホントだ。サイのぬいぐるみ抱えてる。お母さん、よく気づいたね」


 「あんなに堂々とぬいぐるみを抱えてたら、むしろ気にならない? いえ、堂々としてるから気にならないのかしら?」


 「とりあえず、ちょっと聞いてみるよ」



 コウジはミクの方に向き、イヤーカフスを使ってミクに聞いてみる。まさかぬいぐるみと思われているとは思っておらず、微妙にどうしようか困惑しているが、気を取り直してコウジの言葉に耳を傾けるミク。



 『ちょっと聞きたいんだけど、その抱いているぬいぐるみってなに? サイに似ているヤツだけど』


 『サイ? そのサイっていうのがよく分からないし、ぬいぐるみっていうのも分からないけど、この子の名前はセリオだよ』


 『ああ、サイとかぬいぐるみが伝わらないのか。困ったな、ぬいぐるみの名前を聞いても仕方ないし……。えーっと、ぬいぐるみっていうのは、綿とかで作った人形? これも駄目かな。何て説明すりゃいいんだ?』



 コウジが悩んでる間にミクはセリオに【念送】を使うように言い、セリオはようやく話せるようになった。



 『僕は作り物じゃないよ?』


 「うわっ!?」 「「キャッ!?」」



 いきなりセリオが3人に対して【念送】を使ったからだろう。ビックリしているが、その反応は対照的だった。驚いてキョロキョロする妹と母親。そして【念送】だと気付いてセリオを凝視するコウジ。



 「なに今の!? いったい誰の声!?」


 「落ち着け、セン。さっきのはおそらくだけど、ぬいぐるみだと思ってたあのサイだ」


 「何を言ってるの? 喋るぬいぐるみにしたって声がおかしかったでしょうに」


 『あれ? 聞こえてない? 僕は作り物じゃないよ』



 そう言うセリオを、ミクはリビングの床に下ろす。セリオがトコトコ歩いてみせたので、ようやくぬいぐるみや人形ではなく生きている事が分かった北条家族。セリオを見ながら呆然としている。



 『セリオはセリオであって、作り物じゃないからね? そもそも生きてるし、種族はワイズライノ……だと思う。今は変わってるかもしれないけど、調べる事もできないしね』


 「ワイズライノ……。こんなに小さいのに普通に生きてる……」


 「ワイズライノっていうの?」



 そう言いながら「ヒョイ」っと持ち上げた北条母は、セリオを撫で始めた。



 「ちょ!? お母さんズルい! 私も撫でるから代わって!!」


 「あら駄目よ、今は私が撫でてるんだからね。それにしてもザラザラでちょっと硬いけど、それもまたいいわー。まさかこんなに小さいサイ、じゃなかった、ワイズライノというのが居るなんて。本当に別の星の人だと分かるわ」


 「そもそも言葉を交わせる動物って時点であり得ないだろ。これで信じてもらえた?」


 「あっ、そういえばそうだったわ。ミクさんが何故ウチの庭のダンジョンに居たかだったわね。言葉が通じないうえに<ガイア>には居ないワイズライノという話せる動物。どう考えても別の星の人でしょう」


 「わー、硬いけど柔らかいっていうか、よく分からない感触。ちょっとクセになるかも」


 「それはそうと、別の星の人って分かったからさ。俺は軍に連絡入れるよ。流石に黙ったままだと何をされるか分からないし」


 「それなら私がしておくわ。そのイヤーカフス? っていうのをしてないと話せないんでしょ? だったら私がしておくわよ」



 北条母が自分の持つハコで軍へと連絡する。とある宇宙の青い星ではスマホと呼ばれる物と変わらない。この星ではハコと呼ばれているだけである。


 その間にも自己紹介は終わり、レティーも挨拶した。ブラッドスライムと言われて驚いていたが、どうやらこの星のダンジョンにはスライムが出ないそうだ。ミクは不思議に思ったが、そういうものなのだろうとスルーした。


 ちなみに北条妹の名は仙理、母親の名は理緒というそうだ。ミクもセンとリオと呼ぶ事にした。とはいえ、やはり言葉のやりとりが出来ないのは不便なので、少し教えてもらう事に。


 テレビというもので子供向けの動画を流してもらい、それを見ながら横でコウジが教えるという形だ。どうも昼食前だったらしく、ミク達の分も作ってくれたらしい。



 『ごめんねー、なんか私の分まで用意してもらって。適当に干し肉でも食べるつもりだったんだけど』


 『いやいや。干し肉だけじゃマズいだろうよ。ちゃんと食事をとらないと体を壊すから、ちゃんと食べた方がいい。まあ、昼はコレだけど』


 「何って?」


 「いや、昼食を用意してもらってゴメンってさ。適当に干し肉でも食べるつもりだったみたいだ」


 「いやいや、それは駄目でしょ。栄養バランスがメチャクチャにな……もしかして干し肉を食べてるから大きいの? それとも遺伝?」


 「遺伝だろ、どう考えても。もしくは太ってから痩せるか。胸だって脂肪だって聞くし、太ってから胸だけ痩せないようにすると大きくなるとか聞くけどな」


 「それ都市伝説」


 「知らなかった。そうだったのか……。そういえば母さん、軍は何て言ってたの?」


 「それが……1週間ぐらいはそちらで何とかしてほしいって頼まれたわ。何というか、信じてもらえなかった感じね」


 「まあ、分かるよ。いきなり別の星の人、それも美人な女性が出てきましたって意味分からないし。ウチで保護するしかなくない?」


 「お金は……こうなったら稼いでもらおう」


 「ちょっと、コウジ」


 「いや、勘違いしないでほしい。こう見えてミクは”下から”上がってきてるから。俺より遥かに強いんだ。有名チームにも強い女性っていっぱい居るだろ? あんな感じだよ。後、ミクの話を聞くと、ウチの庭のダンジョンは20階まであるみたい」


 「「20階……」」



 ミクからすれば大した事は無いのだが、この星ではどうも難しいみたいだ。そんな事を思いながら、そうめんを食べるミク。もちろんフォークでだ。


 ちなみにセリオもちゃっかり食べている。


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