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0436・ファーストコンタクト




 『聞こえてる? 聞こえてたら返事をして。これは【念送】。だからそっちには聞こえている筈』


 「うぉっ!? 何だ、どこから声がしてるんだ!? えっ、【念送】?」


 『聞こえてる? それとも聞こえてない? おかしいな、【念送】は意思を伝える筈だから、向こうの言葉に勝手に変換される筈なんだけど……』


 「お、おお! 分かる! 目の前のアンタが喋ってるんだな? OK、OK。大丈夫だよ、聞こえてる。……うん? 聞こえてるってどうやって伝えればいいんだ?」


 『聞こえてると仮定して話すよ。まずは、っと出すの忘れてた』



 ミクはアイテムバッグを下ろして中からイヤーカフスを出す。これは大分前に手に入れた物で、着けている者同士で【念話】が可能な代物である。



 『あった、あった。このイヤーカフスを着けてくれる? これでお互いに【念話】が出来るようになるから、とりあえず話せる筈』


 「えっと、これを耳に着けるのか? こんなオシャレアイテム着けた事ないけど、多分こうやって着けるんだと思う………っと、合ってるみたいだな」


 『こっちも着け終わったけど聞こえる? さっきと違ってイヤーカフスの【念話】を使ってるけど、聞こえてる?』


 「うぉ!? このイヤーカフスから聞こえてるけど、どうすりゃいいんだ? 使い方が分からない!」


 『聞こえてたらイヤーカフスに集中。微量の魔力が吸い出されて使用できる。とにかくイヤーカフスを使う事を意識して、心で相手に語りかけて』


 「う、俺がパニック起こして女性の方は動じてないとか、色々と駄目すぎる。とにかく集中、集中……」


 『こう、かな? 聞こえるか?』


 『聞こえてる。やっと使ってくれたけど、随分と慌ててるというか時間が掛かったね。ここはダンジョンの中だと思うんだけど、冷静で居なきゃ死ぬよ?』


 「うっ!? そんな事、って違う違う。心で念じるんだった」


 『そんな事を言われても困る。魔物しかいない筈の場所に人が居るわ、その相手はメチャクチャ美人だわってなったら、頭がパニックになっても仕方ないだろう』


 『そんな事はないと思うけどね。それよりも、ここは何処? ダンジョンなのは確実だろうけど、私の知っているダンジョンとは同じじゃない』


 『それより言葉が通じないっておかしいだろ! アンタいったい何処の誰だよ! 何処の国の人だか知らないが、ウチの庭のダンジョンにどうやって入ったんだ!?』


 『ウチの庭? 私はゴールダームのダンジョンの最奥に居た筈。そこから脱出の魔法陣に乗って出る筈だったんだけど、何故か薄暗い部屋に居たの。そこから出て上って行ったら、キミと出会ったってわけ』


 『ゴールダーム? それって国か都市の名前? そんな所は聞いた事が無いし、ダンジョンの最奥ってダンジョンコアがある<コアルーム>だろうに、何言ってんだ?』


 『<コアルーム>ってなに?』


 『は?』



 ミクと若い男。言葉はようやく通じたものの、それ以外が何も通じない状態であり、2人は歩きながら意見交換をする事になった。若い男もダンジョンを脱出するつもりだったので便乗する形だ。



 『まさか、全く別の星の出身だとは思わなかった。でも最初に全く聞いた事のない言葉だった時点で考えるべきだったんだよなー。<ガイア>の人じゃないってさ』


 『<ガイア>?』


 『<ガイア>っていうのはこの星の名前だよ。ヨーロッパの方の神様の名前? 俺もあんまり詳しい事は知らないから分からないけど、神様の名前だったと思う』


 『ふーん。で、さっき聞いたけど、ダンジョンコアっていうのを壊すと、そのダンジョンが崩壊するって事か。私が居た星とは違うね』


 『そうなのか?』


 『そりゃね。そもそもダンジョンが沢山生まれるって時点で違う。私の居た星ではダンジョンは固定で決まってる。そこに国の首都が置かれてるというか、ダンジョンの恵みに人が集まって国が出来るというのが普通』


 『へー。まあ、食い物が手に入るってなれば人も集まるか。こっちは5年前に急にダンジョンが現れ始めて、それからだからなー。しかも今でも減ったり増えたりを繰り返してるし』



 2人は歩きながらも会話をし、お互いに情報を得ていく。そうしているとダンジョンの入り口に差し掛かり、黒い渦を出ると建物らしき物の近くに出た。


 家の庭と言っていたが、確かに前には家っぽい物が見える。近くにも同じ形の家が沢山見えるので、ここは住宅街エリアなのだろうと当たりをつけるミク。ゴールダームもそれぞれのエリアに分かれていたし。



 『目の前のがウチの家だよ。父親は1年前に死んでるから、今は母親と妹の3人暮らしなんだ。それでお金儲けの為にダンジョンに潜って稼いでたんだよ』


 『へー。という事は私もダンジョンに潜れば稼げるねぇ』


 『うん? もしかして金持ってないのか? って、日本のお金なんて持ってる筈ないか。しまったな……どうしよう?』


 『ダンジョンに潜って稼げばいいだけでしょ。他にお金儲けの方法があるの?』


 『ダンジョンに潜るには<日本ダンジョン探索者支援協会>に入らなきゃいけないんだよ。でも入るのに戸籍が必要なわけ』


 『戸籍?』


 『戸籍っていうのは……うーん。簡単に言うと、自分を保証する物ってところかな? それがないと探索者登録はできないんだ。軍に報せるしかないかな? 流石にマズいし』


 『軍? この国の?』


 『そう。流石に別の星からやってきた人を無碍むげにはしないと思う。だから家に戻ったら、とりあえず電話だな』


 『電話……』



 大凡おおよその知識があるミクは、この先の展開の予想を立てる。とはいえ、そこまで悪い事にはならない筈だ。ついでに目の前のこの男も利用する気であるし。



 『そういえば話ばっかりで忘れてたね? 私の名前はミク。そっちは?』


 『あ、本当だ忘れてた。俺の名前は北条光時。ミツトキと書いてコウジって読む。皆はミツとか呼ぶけど』


 『ふーん。なんか長いから私はコウジと呼ぶ事にするよ。名前なんて分かればなんでもいいし』


 『まあ、それはそうだけどさ……』



 コウジは庭に面したガラス窓から家に入ろうと開けると、ちょうどハンディコンピューター、略してハコを使っていた妹と目が合う。だが妹は兄であるコウジを見ていなかった。


 妹の目はミクに注がれており、スッと立ち上がった妹は、大きな声で母親に対して叫ぶ。



 「おかーさーん!! お兄ちゃんが、美人の人をウチに連れ込んでるーー!!」


 「ちょ!? 違う! 誤解だ!! ここに居るミクとはダンジョンで会ったんだよ!!」


 「おかーさーん! なんかスッゴイ美人の人を連れ込もうとしてるーー!!」


 「ちょっと待て、セン! お前絶対にワザとだろ!?」



 言葉が分かるミクとしては単なるじゃれ合いにしか見えないが、一応分からないフリをしておく。



 「どうしたの、そんな大きな声を出して? 女性を連れ込むとか、随分な言葉が聞こえたけれど?」



 奥から女性がやってきたが、未だに庭先に立ったままなミク。セリオもレティーもまだ許可が出ない為に【念送】も送れず、今は黙って見守っている。



 「確かに凄い美人さんだけど、あがってもらいなさい。幾らなんでも庭に立たせたままは礼儀が無さ過ぎるわ」


 「そ、そうだった。とりあえず中に、って違う違う!」


 『とりあえず中に入ってくれ。流石に立たせままじゃ駄目すぎるからさ』


 『分かった』



 そういって庭から上がらせてもらおうとすると止められ、ブーツを脱いでから入る事になったミク。どうやらこの星か国では、家に入る時に靴を脱ぐようだ。


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