0040・街道の豪華な馬車
洞窟の外の死体を全て喰らったミクは、洞窟の中に侵入して麻痺している者を殺していく。全員殺し終わったらレティーに脳を喰わせ、その間に物資を回収。全て回収し終わったら最奥の部屋へと進んだ。
隠し通路に続く壁を壊して先へと進み、そこにあった武具や金銭を回収して脱出。どうも元の入り口の左奥辺りから出てくる場所だったらしい。御丁寧にも、土と草で隠してあったようだ。もう壊してしまったが。
エルフの所と先ほどのカムラ帝国の連中の所で得た金銭も、本体が数え終わったようだ。
小銅貨が31枚、中銅貨が44枚、大銅貨が81枚、小銀貨が24枚、中銀貨が22枚、大銀貨が52枚、小金貨が18枚、大金貨が1枚。これが2つの盗賊団が持っていた金銭の全てだ。
思っていたよりも大銅貨が少ないが、それはおそらく持っていても仕方ないからだろう。ゴールダームに潜入して食料を補充していたようだが、メインは本国からの商人の補給だったようだ。
ジャンダルコ王国の方はエルフィンの商人を襲っていたようだが、カムラ帝国の方は本国からの補給が定期的にあったらしく、大きな金額の貨幣しか持っていなかった。小金貨の大半と大金貨はカムラ帝国の盗賊団の物だ。
それとは別に両方の盗賊団がアイテムバッグを持っていた。これもどうしたものかと思っていると、またもや神が来て革のアイテムバッグに変えていった。いったい何がしたいのか分からないが、これで揃った事になる。
何がと言えば、小、中、大のアイテムバッグと、ウェストポーチ型のアイテムバッグがだ。今まで持っていたのは中型とウェストポーチだったが、小型と大型が揃った事になる。ただし今は交換しない。
『いいのですか? 大型のアイテムバッグの方が沢山入ると聞きますが……』
『確かに沢山入るんだけど、ジャンダルコとカムラの盗賊団は報告しないから、奴等のアイテムバッグも報告できない。ま、今無理に持たなきゃいけない訳じゃないし、このまま時が来るまで死蔵かな』
『勿体ない気もしますが、余計な揉め事に発展して腹立たしい思いをするよりマシでしょうか』
『アイテムバッグを狙って襲ってくるなら良いんだけど、面倒なだけの搦め手とか鬱陶しい限りだしね。暗殺者とか送ってくれる方が気楽だよ』
そんな話をしつつミクは走って行き、ゴールダームへと戻っていく。わざわざ地上を行く理由は、地形やその他の確認の為だ。空を飛んだ方が早いのは当然だが、だからといってゴールダーム近くで出てくれば怪しまれる可能性がある。
門番の所には居るのに、それ以前に移動してきた形跡が無い。ゴールダームへの道には居なかった。そんな事を商人などの口から説明されると、ミクとしては答えに窮するしかない。だからこそ地上を行く訳だ。
『これも面倒な事ですが、後でもっと面倒な事になるよりマシという訳ですね。私としては風景などが見られるので悪くはありませんが』
『レティーは元々視覚とか無かったから、見るのも新鮮なのは分かるよ。私だって風景を見たのは、この星に降りてからが初めてだ。正しくは自分の視覚で風景を認識するのが、だけど』
まるで2人旅のようにレティーと会話しながら歩くミク。今は走っていないが、これは街道に出たからだ。流石に街道を爆走すると怪しまれはしないだろうが、「何やってんだ」と言われるのがオチである。
中には【身体強化】を使って走り回る探索者も居るらしいが、あまり褒められた事ではないようなのだ。
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ゴールダームの周辺10キロ程はゴールダームの領土なのだが、それより外側は他国の領土であり町や村がある。そこから商人はゴールダームまで運んでくるのだが、それ故に盗賊団がそこを狙う。
北以外は普通の盗賊とは言い難かったが、また何処からか普通の盗賊や工作員が入り込むのだ。世界最大のダンジョン国家はそれだけの旨味を持つ。それ故に悪人も無限のように湧いてくる。
だからこそ神々はゴールダームに行かせたのだし、ミクもゴールダームを拠点にするのだ。自らの食料が無限にやってくる場所。そう思っているからでもある。
もちろん固執するつもりはなく、例えばフィグレイオ獣王国で内戦でも起きたらミクは移動するだろう、肉の喰える場所に。
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レティーとダラダラ話しながらも休む事なく移動していると、目の前で豪華な馬車が立ち往生していた。どうやら車軸が折れたらしいが、付け替える事が出来ないらしい。ミクは無視して歩こうとしたが……。
「すまぬ、そこの者。馬車の車軸が折れて立ち往生しておるのだ。馬車を持ち上げたいのだが、協力してくれぬか? 謝礼は致す」
「謝礼は要らないから、代わりに攻撃してこない事を約束してほしい。それが約束できるなら協力する」
「キサマ! 我々を蛮族扱いする気か!!」
「止めよ! そのような事を言うから協力が得られんのだろうが! 誰が危険な者に近付くものか! 我が国の恥ともなるのだから、止めよ。よいな?」
「ハッ……」
ミクはあからさまに面倒臭いという表情をしながらも、馬車を下から持ち上げようとしたが、他の連中は誰も持ち上げようとしなかった。どういう事だと思っていると……。
「お前達、何故持ち上げんのだ? 車軸が交換できんだろう」
「いえいえ、丁度都合がいい身代わりが来ましたんで、ね!!」
そう言いながら剣を抜こうとした騎士を、ミクは後ろから前蹴りで蹴り飛ばす。当然、騎士は前に転び、顔から地面にダイブした。ミクは即座に「戦闘態勢!」と言って、女性騎士に剣を抜かせる。
「くそっ! 貴様ら侯爵の手の者だな!? 姫に手を掛けようとするなど万死に値するぞ!!」
「何を愚かな事を! 貴様とメイド如きがぇぁっ!?」
「私の存在を忘れてる? おそらく犯罪の身代わりとして私を利用しようとしたんだろうけど、そんな事を許す訳がない」
「くそ! 先にコイツをぅ!?」
ミクは陽炎の如き【身体強化】を使い、騎士のヘルムごとウォーハンマーで頭を潰していく。胴体への一撃でもプレートアーマーが陥没し、その一撃で死亡する程の威力であり、男の騎士どもが抗える力ではなかった。
敵であろう連中を全て始末したミクは、むしろミクに警戒している女性騎士に話しかけた。
「で、馬車の車軸を直さなくていいの?」
「は? ………あ、ああ、車軸を直さねばな。ちょっと待ってく……?」
「いえいえ、そうではないでしょう。そこの貴女が尋常ではない強さである事の方が先です。流石にそこは流せません」
傾いた馬車から出てきたメイドがそんな事を言い出したのだが、ミクは面倒になったのでもういいかと思い始めていた。
「疑う危険な相手でいいから、代わりに私はもう行っていいよね? 貴女達みたいなのって、いちいち面倒臭いから関わりたくなかったんだよ。じゃ」
そう言って迂回するように歩きだしたミクだが、慌てた様子の声が馬車の中からしてきた。
「し、少々お待ち下さい! 私は助けていただいた身です。何の御礼もしないままでは国の恥となってしまいます。貴女達も侯爵の手の者から救っていただいたのに、その方を疑うとは何事ですか。そのような事をしていれば誰も助けてくれなくなりますよ」
「「申し訳ございません」」
まるでそこまでが予定調和のように行われており、ミクは全て纏めてウンザリしている。
そんな表情を隠しもしていないのが分かったのだろう、中から出てきた少女は「ゴホンッ!」と咳払いをし、居住まいを正した。




