0433・第10エリア
3人部屋で着替えた後、食堂に移動して注文。大銅貨12枚を支払って席に着くと、適当に雑談をして暇を潰す。昼食が来たので食べると、再び第9エリアに行って周回。ドラゴンを18頭倒したところで飽きた為、<妖精の洞>へと戻る。
3人部屋に戻ったミクは魔道具なども完成させる為、ベッドに寝転がって分体をほぼ停止。レティーとセリオは遊んでいるが、気にせず魔道具作りに集中する。10個を同時並行作業で作っているので余裕が無いのだ。
夕方になったので目を開け、アレッサとティアに言って食堂へと移動。注文して大銅貨12枚を支払ったら、席に座ってダラダラと待つ。既に雑談のネタもあまり無い3人。
そうしていると3人が帰ってきたので、イリュの話を聞く前に装備を渡して、今までの物を回収する。ダンジョンに捨ててくる為だ。
「勿体ないと言えば勿体ないのよねえ。ワイバーン素材の防具だって十分なのよ、普通は。ドラゴンと比べれば違い過ぎるけど、それでも悪い訳じゃないの」
「もう諦めたら? ドラゴンの皮っていう尋常じゃない物だけど、貰えるなら貰っておくべきでしょ。ミクが私達の事を考えて渡してくれてるんだしさ」
「そうそう、こういう時は黙って受け取るべきさ。気持ちは分かるけどね」
何故かシャルとカルティクは諦めた表情のまま受け取り、部屋に戻って着替えに行った。イリュも溜息を吐いた後で着替えに行き、戻ってくるとミクに今までの装備を渡す。
その後は運ばれてきた食事を食べ、ミクは夜中の内に第10エリアへと行ってくる事を伝える。
「行くのは構わないけど、第10エリアって大丈夫かしら? 最後のエリアだけあってとんでもないのでも驚かないわよ、わたしは」
「どんな所なのでしょうか? 海の中とか? もしくは空の上とかでしょうか?」
「溺れて死ぬし、落ちて死ぬでしょ。どうやって攻略すんのよ、そんなトコ」
そんな下らない話をしながら食事をし、終わったら3人部屋へ。アレッサとティアを綺麗にし、ミクは適当にベッドに寝転がる。ちょっと面倒だなと思いつつ。
◆◆◆
夜。ミクは起き上がり、セリオとレティーを本体空間に入れると、ムカデに変化して窓から外へ。そのままダンジョンへ移動し、第10エリアの魔法陣に乗ってオークに変わる。
そのまま転移されたミクは、第10エリアを見て驚く。魔法陣の周りが”真っ黒”で、向こうが見えないのだ。それは悪意が滲み出た瘴気であり、その所為でミクの目ですら先が見えない。
仕方なく【浄滅】を使い、周りの瘴気を全て浄化する。その結果見えたのは花畑だった。ただし黒い花ばかりの花畑であり、【浄滅】を受けたからか花びらが殆ど消えている。
まさか第10エリアがこんな場所だとは思わなかったが、面倒なのでどんどんと浄化していくミク。むしろ行っていない場所が分かりやすいなと思いつつ、浄化しながら移動すると階段を発見。下へと下りる。
すると階段の出口すぐまで瘴気があり、それも【浄滅】で完全に浄化し2階を進む。あまりにも濃い瘴気と悪意により、魔物が存在しない階層を進んでいくミク。ある意味では唯の清掃作業なので気楽なものだ。
そしてその花畑の景色は9階になっても変わらないのであった。
(第10エリアという割には不自然な場所だね? 魔物も居なければ瘴気や悪意だけが充満している。いったい何故ダンジョンの最後のエリアがこんな事になってるんだろう?)
そのまま9階の階段も見つけて下りていき、10階のボス前の扉まで到着する。今までのボス扉と明らかに違い、豪華ではなく質素。そして何かを封じるような紋様が、木の扉と思わしき物に刻まれていた。
その扉をしばし見ていると、目の前に光を纏った人型が現れた。その瞬間、目の前の存在が何かを理解するミク。その光る人型、ミクの事などお構いなしに話しかけてくる。
『私達よりも上位の神の使徒よ。これ以上先に進み、封印を解くのはお止め下さい。ここに封じられしは、かつてこの星の悪を司っていた者。しかし悪意を撒き散らしすぎたのです。その結果、この星を一度滅ぼしかけました』
「ふーん………それで?」
『それで、とは?』
「私には関係無いって事だよ。この先に何が居ようが、お前に遮られる筋合いは無い。まさか願えば止まるとでも思ってるの? 何の神だか知らないけど、私が止まってやる義理は無いね」
『そうですか。この先の者を外に出されては困るのです、残念ですが<善の神>とし』
「バクンッ!」っという擬音が付きそうなほど、ミクの首から上は巨大化して目の前の存在を喰らう。それで神を名乗った存在は食い荒らされた。ミクは喰った相手の神力で自分の力が明らかに上がった事を理解し、口角が自然と上がる。
「ククククク………何だ、神を喰う事にメリットはちゃんとあるじゃない。まさか神の権能の一部を奪えるとはねえ。これは面白いけど、それは後だ。っと、お前達も喰われにきたのかな?」
目の前に様々な色をした光が現れたが、それらは明らかにミクに対し憎悪を向けていた。それを神から向けられても涼しい顔をしているミク。その中で一番大きな光が前に出て話し始めた。
『悪を司る神の封印を解こうとするだけでなく、善を司る神を喰らうとは……貴様、いったい何者だ?』
「私はミク。正しくは<喰らうもの>だ。根源の神に生み出され、ゴミを喰らい尽くして来いと命じられた肉の塊だよ。そのゴミにはお前達も含まれているぞ? 星の神ども」
『『『『『『『『『『なっ!?』』』』』』』』』』
「何だ、私がこの星に居て気付いてなかったのか? 神どもは惑星1つ満足に管理もできんゴミどもなど喰らえと言っていたからな。当然お前達も含まれているに決まっているだろう」
更に憎悪が膨れ上がったが、慌てて大きな光が周りの神を抑える。
『あまり挑発をされては困るのだがな? 私でも抑えきれぬかもしれんぞ?』
「何を勘違いしている? お前達も喰っていいと言われた以上、お前達を喰えるものとして創られている事も分からんのか? 神どもは言っていたぞ、代わりは幾らでも創れるとな。良かったな、お前達はその程度の存在らしい」
『『『『『『『『『『………』』』』』』』』』』
自分達の存在をもっと高位だと思い込んでいたのだろう、愕然としている雰囲気を感じる。
「はっ、バカバカしい。お前達が人間種を見て醜さを感じるように、根源の神もお前達を見て醜さを感じているという事だ。まさかその程度の事も分かっていなかったとはな。まことに人間種と変わらん程度でしかないとは……」
ミクが挑発したものの、目の前の神々は少しずつ消え始め、最後には大きな光の存在のみとなった。
『お前はこの奥に行き、悪を司る神を滅ぼすのか?』
「何故お前如きに答えねばならんのか分からんが、まあいい。私にとってゴミは喰い物なのだよ。そこに喰らえと言われた物が在る以上、私は喰らうのだ。その為に創られたのだからな」
『所詮は神の駒か……』
「駒にすら成れんものが何様のつもりだ? お前達を喰っていいと言われた以上、既に見捨てられているのだがな? まだ分からんのか、無様な」
『!?』
大きな光も慌てたように消えていき、再びボス扉前には静寂が戻った。挑発したものの襲ってこなかったので仕方ないと諦めるが、本当は問答無用で喰いたかったのだ。特に権能の一部が手に入ったのだから。
(まあいいか。この中に居る悪を司る神の権能の一部も喰って手に入れれば済む。さて、そろそろ行くか)
ミクはボス扉を開けて中に入ると、そこには外とは比較にならない程の瘴気と悪意が満ちていた。




