0428・真紅の巨大トカゲ
夜。ゴールダームも寝静まったので起き上がり、ムカデになってダンジョンへと移動する。第8エリアの魔法陣の上に立ち、オークの姿になってダンジョン内へ。赤黒い猪を2頭狩り、本体空間に送って干し肉を作る。
走って進みながらゴミは捨てていき、10階のボス部屋前でいつもの姿に戻る。ここからは明日の予習として、普通の攻略をしておかなければいけない。他の皆で攻略できなければ困るからだ。
準備を終えたら中に入り、扉が閉まった後で魔法陣が輝く。地面が光り輝いた後で登場したのは、なんと巨大なトカゲだった。第8エリアの魔物は赤黒い色であったにも関わらず、コイツは真紅の鱗を持っている。
そのうえ妙な熱を持っているらしく、体そのものの温度が高いらしい。爬虫類の癖にどうなっているのかと思うが、こういう魔物なのだろう。ミクはカイトシールドとウォーハンマーを持ちジリジリと近付いていく。
体高は3メートル近く、頭から尾まで10メートルほどある。そんな巨大なトカゲがいきなり口を開けブレスを吐いてきた。ミクは素早く横っ飛びで回避するものの、ブレスは追尾してくる。
(いちいち面倒なヤツだね。ツインヘッドフレイムはここまで追尾させなかったけど、コイツは火を吐きながら首を回して追ってくる)
数回横っ飛びをしつつ側面に回ろうとすると、ブレスを止めて尻尾を振り回してきた。体ごと回転する一撃を、ミクは後ろにジャンプしつつ盾で受ける事でわざと吹き飛ばされる。
壁まで飛ばされたが、そこまでダメージも受けていない。仕切り直しといきたいところだが、相手の俊敏性が高く迂闊に攻められない。触手で切り裂けばあっさり終わるが、それでは予習の意味が無い。
再び対峙するも、またもやブレスを吐いてきた。ミクは素早く横っ飛びで回避するものの、相手は追尾をしてくる。思っているよりも鬱陶しい戦い方をするものだと思いつつ、側面に回りこもうと移動していく。
再びトカゲは尻尾で攻撃しようとするも、壁に当たる事で威力と速度は落ちていた。なので尻尾の先を普通にジャンプで飛び越え、そのまま走って側面に回る。トカゲは再びミクの方を向くが、その時には既に側面に回っていた。
トカゲは再び側面のミクを尻尾で攻撃しようとするが、それより早くミクは左前足に攻撃を行う。体高が3メートル近くある為、足の大きさも大きいが、逆に言えば攻撃が当たりやすく潰しやすいという事でもある。
ミクの一撃はトカゲの左前足の甲に大きなダメージを与え、その事により絶叫する巨大トカゲ。
「Gyaaaaaa!!?!!?」
前足とはいえ甲にハッキリと直撃した以上、どうしても全力を篭めるのは難しくなる。尻尾攻撃は体全体を回転させる為、体そのものを自分の手足で動かさなければいけない。あの尻尾攻撃が厄介なのであって、ブレスはそこまででもないのだ。
ミクが素早く離れると、怒ったトカゲはブレスを吐こうと口を開く。しかしそれより早く、ミクはトカゲの口に投げナイフを投げ込んだ。それは口の中に吸い込まれるように入り、どこかに刺さったのだろう、トカゲが苦しんでいる。
「Ga! GaGa!! Gaguuuu!?」
何をやっているのか分からないが、口の中から吐き出そうとしているのは分かる。とはいえ戦闘中にそんな事にかまけているから、怪物の一撃を更に受けるのだ。
今度は右前足の方に近付き、遠慮なくウォーハンマーを振り下ろしたミク。それは左前足と同じく甲の上に振り下ろされ、大きなダメージを与える。
「Gyaaaa!!! Ga! Gaaaa!? Gaa!!」
(必死に口を開けて吐き出そうとしてるみたいだけど、無駄だね。マジックキラーはかなりの高温でないと溶けない。である以上はトカゲのブレスじゃ……。ちょっと待って、もしかしてブレスが吐けない?)
投げナイフが刺さってからというもの、トカゲはブレスを一度も吐いていない。ミクは投げナイフを取る事に躍起になっているのかと思っていたが、もしかしたらブレスが吐けなくて困っているのかもしれない。
ならばマジックキラーはコイツに効くという事だ。左前足に攻撃は通ったので無理にマジックキラーを使わなくてもいいかと思ったが、そうではないらしい。というよりブレスが防げる可能性は大きい収穫だと言える。
ミクは再び側面に回ろうとしたが、すぐにトカゲは対応。またもや尻尾攻撃を行おうとするものの、ミクは再び先の細い部分を飛び越える。人間種の平均的な能力だと、おそらくこの辺りしか飛び越えられない筈だ。
肉塊の能力ありきで戦っても参考にならないので、今はそれを止める。まあ、マジックキラーを使っている時点で参考にはならないのだが、それに関しては仕方ない。
通り過ぎたら走り出し、ミクは左前足に更にウォーハンマーを叩きつける。今度は手首に直撃させたが、やはり掌に比べれば小さいからか、一撃で効果はハッキリ出た。腕で支えられなくなったのだ。
「Gugeeee!?! Gaa?」
やはりブレスが吐けずに困惑しているらしい。しかし既に左前足は潰したので、もはや満足に尻尾攻撃はできないだろう。ミクは再びトカゲの側面に回ろうとしたものの、トカゲは尻尾攻撃をしてはこなかった。
走って近付いたミクは通りすぎ、今度は左後ろ足を攻撃する。こちらは前足よりも太いものの、足首を攻撃すれば済む。連続でウォーハンマーを叩きつけ、あっと言う間に潰してしまった。
「Gyaaaaaaaaa!!!」
凄まじい絶叫をあげ、痛みに震える巨大トカゲ。しかしこの程度では倒せない。既に左の前足と後ろ足は破壊したが、だからと言って止めを刺した訳ではないのだ。
ミクは側面から腹に目掛けてウォーハンマーを振るう。この敵なら長巻の方が良かったかなと思いつつ、腹に何度もウォーハンマーを叩きつけ、その度に巨大トカゲの絶叫と悲鳴がボス部屋に木霊する。
何度も何度も叩きつけていると、遂にボス部屋の扉が開いた。つまりボスは死んだという事であるが、ボスが大きいので無駄に時間が掛かるのと、足を潰さないと尻尾攻撃などで一気にやられかねない。
更にミクは1人だったからいいが、複数人で戦う際にブレスを吐かれるのは厄介だ。アレもどうにかする方法を考えた方がいいが、おそらく魔法でどうにかなるとは思う。
右腕を巨大な肉塊にして取り込み、本体空間へと転送する。口の中に刺さっていたマジックキラーの投げナイフを本体が転送してきたので受け取り、ミクはオークの姿に変わり透明になると外に出た。
第9エリアの魔法陣に乗って確かめると転移されていき、ミクが見た景色はなんと崖の上だった。
細い道が曲がりくねって続いており、落ちたら間違いなく死ぬであろう場所だ。そのうえ強い風が吹いており、空には小さめのワイバーンが見える。崖の道の幅は大凡10メートル。思っているよりは狭い。
魔物との戦いに集中していると位置取りを誤りそうな広さであり、微妙な広さと言えるだろう。ミクはどういう場所か分かったので戻り、再び第8エリアへ。
何故再び第8エリアに行くのかと言えば、巨大トカゲの皮がワイバーンより優秀だったからだ。しかも熱に対する耐性も高いというおまけ付きであった。
ワイバーン皮はあれで強力ではあるが、実際にはミクが鋼鉄のバルディッシュで切り裂ける程度とも言える。もちろん普通の人間種には無理なのだが、それでも怪物は出来る。しかし巨大トカゲの皮は鋼鉄では無理だろう。
(本体がそう思っているという事は、ほぼ不可能ってこと。少なくとも巨人の武器だったから簡単に潰せただけで、エクスダート鋼ぐらいを持ってこないと傷もつけられないかな? 私ならウィリウム鋼で何とかなると思う)
ミクでもウィリウム鋼が要るという時点で、とんでもない防御力だと言えるだろう。




