0039・西の盗賊団壊滅
バルディシュの刃が通過していった後、ミクは右に転がってすぐに起き上がった。結局一撃も喰らっていない。というより、ミクから当たってやらない限り、当たる事が無いのは分かりきっている。
「クゾが!! こいつ運が良すぎるだろう! こんな絶妙なタイミングでコケやがって!! いったいどうなってやがる!!」
「慌てるな、こんな事は戦場ならばよくある! 落ち着いて冷静になれ。理不尽なくらい、敵がツいている事などあるのだ! 文句を言っていても始まらん。それよりも態勢を整えろ、息が上がっとるぞ!!」
「うっせえ! こちとらまだ若いんだよ。おっさんこそ目が悪くなってるんじゃねえか? こんなにも外すなんてよお!!」
「小僧が言ってくれる。それよりもこいつは確実にここで殺すぞ。これ以上に成長されると本気でマズい。かつてのオーク王国のようになりかねん」
「んな事をさせる訳がねえだろうが!!」
「グッグッグッグッグッグッ♪」
「いちいち醜い顔で笑ってんじゃねえ!!!」
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オーク王国。それは人間種が勝手につけた名前ではあるものの、非常に大きく、多くのオークが暮らしている場所がかつてあった。
そこに居た身長3メートル近くのオーク。それこそが人間種の間で語り継がれるオークキングであり、当時のスキル持ちの多くが死闘を繰り広げた相手である。
少なくともオーク1000を率いていたオークは、紛れも無くオークキングと言っていい存在であった。
これ以外にもゴブリンキングやコボルトキングなども稀に出現する。ここ数百年は出現していないが、これは徹底的に人間種側が潰しているからであり、だからこそキング種になる前に処理されているのだ。
キング種になる方法は分かっていないが、長い間に様々な者と戦い勝利し続けた個体がキングになるのではと言われている。その理由として、天然の魔物は同じ種にも関わらず強さがバラバラなのだ。
ダンジョンでは一律で殆ど変わらないのに対し、天然の魔物の場合、個体差で倍近い強さの場合もある。明らかに異常なのだが、これこそがキング種になる者ではないかと思われているのだ。
だからこそ探索者ギルドでは強い個体の情報に注意を払っているし、もし本当に居るなら最優先での討伐対象になる。それほどまでにオークキングの話は有名なのだ。
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「チィ!! 何処まで強いんだコイツはよ!! もうオレ達だけじゃ無理だ、人数掛けるぞ!!」
「仕方ない。ワシらも休まんと、これ以上は動けん。すまんがお前達に任せる。少しの間だ、回復する時間をくれ!!」
「「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」」
剣や槍などを持った兵士が前に出たりしてミクを半包囲し、代わりに軽い男と歳をとった男は後ろに下がって休む。ミクはそもそも無限のスタミナを持つので休む必要など無い。
その時点で普通のオークとは違うのだが、多少の疑問を持ったとしてもオークキングを詳しく知らない者達は、オークキングとはこういう存在なのだと勝手に思い込んでいた。
突き出された槍を掴んで引っ張り、前に出させたら盾にする。当然、他の兵士は味方を攻撃するなど出来ない。ミクは前に倒れた兵士を鷲掴みにし、その兵士を盾にし続けた。
「くそっ! 卑怯な事しやがって! 迂闊に攻撃するな、味方に当たる!」
「ふざけやがって! こんな事、魔物にだってされた事ないぞ! オークキングって奴は悪知恵まで働くのかよ!!」
「とにかく味方に当てないように攻めるぞ! こうなったら半包囲じゃなくて、完全に包囲する! 後ろに回れ!!」
兵士達はミクの後ろに回ったものの、もうそこまで数が多くなかった。当然ながら数が少ないと包囲に穴が空く訳だ。
左後ろからの攻撃には兵士という盾を出して牽制し、右後ろからの攻撃は回避。前からの攻撃は敵の武器を掴み、奪い取って別の敵に投げつける。
「チクショウ!! また味方の武器で死んじまった!! こいつだけは何が何でも絶対に殺してやる! 皆、オレが突撃するから後を頼む!!」
「おい、待て!!」
「ぬぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」
剣を腰溜めにして持つと、そのまま体当たりするように突撃してきた。そんな奴の前に無造作に兵士の盾を出すと、変わらずにそのまま突っ込んでくる。これには流石のミクも驚いたが、冷静に対処。
剣を突き刺させて盾を殺させる。すると、周りの者達も一斉に突撃してきた。しかし躊躇した分は確実に遅く、ミクは膝を沈めると一気に跳躍。後ろに跳んで迫ってきていた兵士をかわした。
「くそっ!! あんなジャンプが出来たのか!! こいつは幾らなんでも、おかしすぎる! 本当にオークなのかよ!?」
「せっかく突撃したのに、あいつを死なせるだけの結果になっちまった………」
「お前が悪いんじゃない! あいつがおかしいだけだ。それに、いずれは殺されてるさ! オークは人間種を喰うからな! あいつらは……?」
「おい、戦闘中だぞ! ボーッとするな!!」
「いや、オークって性欲を満たすのに男女関係なく突っ込むんじゃなかったか? それも異常な性欲だった筈。戦闘中は関係ない?」
「知るか、そんな事。そもそも普通のオークだって戦闘中は戦ってるだろ! 頭のおかしい事を言ってんじゃねえぞ!!」
「いや、それにしても反応が無さ過ぎるぞ! オークキングの伝承では、攻めてきた人間種を喰いながら戦っていたという記述はある。性欲はともかく、喰いながら戦うというのは見てないぞ!」
「それが今の戦闘に関係あるのかよ? ねえだろ!」
「こいつは本当にオークなのかって事だ! そもそもオレ達は対処を間違えてるんじゃねえのか!? 一旦離れろ!!」
残る兵士は5人、またもや混乱したのか距離をとって計る事にしたらしい。軽い男と歳をとった男は未だに肩で息をしている。そして、それ以外の生命反応は既に無い。なのでそろそろ解禁する事にした。
「攻めてこないのなら仕方ない、こちらから行くぞ?」
「「「「「は?」」」」」
ミクは一気に接近し、殴り殺し、蹴り殺していく。一撃で首が折れ、内臓が破裂して死んでいく。苦しんでいる者はさっさと止めを刺し、残るは軽い男と歳をとった男だけ。
「………てめぇ、何者だ? 間違いなくオークじゃねえ。そして隊長をやったのも、てめぇだな?」
「そうだな。あっさりと殺して奪っておいた。報告書を書いていたからな、カムラ帝国の者だという動かぬ証拠として貰っておいたぞ」
「チッ! 通りで隊長がおらぬ筈だ。どうやったかは知らんが、もういちいち聞いたりはせん。ここでお前を倒さねば我らの生き残りも無い。スキルを使え、全力で殺すぞ」
「ハッ! 言われなくて……も……」
ミクは美女の姿に変わると同時に、太陽の如き【身体強化】を行う。そのうえで体からウォーハンマーを取り出して、それを歳をとった男の胴に叩き付けた。
それだけで胴が千切れ飛び、一撃で絶命。残りは一人となる。
「くそ! 最初からおかしかったが、てめぇは何者だ! オークの姿だったり女の姿だったり。どうせその姿も偽物だろうが!」
「その通りだ、人間種。私の本当の姿を見たいなら見せてやろう。ただし、そこでお前の命は終わりだ」
ミクは男に素早く触手を巻き付けると、即座に肉で覆って転送した。その後、下着を履いて服を着たら、レティーとアイテムバッグを転送。後片付けを行っていく。
軽い男? 脳をレティーに喰われた後、本体に喰われて消え失せている。ミクにとっては、わざわざ生かしておく価値も無いので当然だが。




