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0424・本日の予定




 宿への道を戻りつつ、ミクは遠心分離機を作成していく。これは明日渡さねばならないので、今の内に完成させておかねばならない。明日は近衛と探索者を第4エリアに連れていく必要があるが、ティアに任せれば渡してくれるだろう。


 その時に向こうから報酬を貰えばいいのだし、ティアには駄賃ぐらいを渡せばいい。どのみちミクの渡したアイテムバッグで運ぶだけなのだ。それも実家に帰るようなものなのだから、大した手間でもあるまい。


 そんな事を考えつつ戻ったミクは、ベッドに寝転がり朝まで瞑想の練習に励む。何となく上手くいっているような、いないような。相変わらず休むというのが分からないミクであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 朝。2人が起きたので挨拶し、準備を整えて片付けたら食堂へ。女性従業員に注文し、大銅貨12枚を渡すと席に座る。ミクは今日の予定を2人に話す。といってもティアがメインだが。



 「ティア。今日は近衛と探索者を第4エリアに連れて行く日だけど、ティアは遠心分離機とか持って王城に行ってくれる? あれもそれなりの大きさをしてるから、アイテムバッグで持っていかないと大変だからさ」


 「ついでに実家でゆっくりしてきたら良いんじゃない? 色々話したい事もあるかもしれないしね。向こうが」


 「それはそれで面倒なのですよ? あまり大きな声では言えませんが。何と言っても陛下が色々と過保護ですから、どうにも……。私もあんな事が無ければ城を出られなかったでしょうし」


 「ああ、それはそもそも当然よ。言葉は悪いけれど王族なんてそういうものだからね。だからこそ不自由は我慢しなければいけないし、やんごとなき身分に生まれた者の宿命ってヤツよ」


 「まあ、そうなんですが……」


 「そんな事より、昨夜も掘ってきて作っておいたから。はい、コレ」



 話をさえぎったミクが右腕を肉塊にし、2人の前に投げナイフを置く。鞘付きのソレを見てピンときた2人は、すぐに手に持って鞘から抜いた。暗い銀色をした剣身を見て理解した2人は、すぐにナイフを鞘に納める。



 「2人も分かっただろうけど、それがマジックキラーの投げナイフ。それね、触れている者や物の魔力を乱しまくるから注意して。その所為でアイテムバッグに入らないんだよ」


 「「えっ!?」」



 2人は驚きアイテムバッグに入れようとしたが、マジックキラーで作られた投げナイフは入らなかった。まさかと思ったものの、入らないのではどうしようもない。



 「どうやらアイテムバッグって魔力的な何かで作られてるらしくて、私も入れようとして入らなかったから諦めた。まあ、護身用だと思って肌身離さず持ち歩くといいよ。ちなみに巨人は突き刺せたから」


 「えっ? 巨人が突き刺せるのですか? だってあの肌……ああ、魔力での強化ですものね。マジックキラーは魔力を乱すのですから、肌の強化は無効化されると……」


 「そう考えるとエゲつないわよねえ。魔力で強化しているようなのは、これを突き刺しておけば相当に動きを阻害される筈。そもそもワイバーンとかドラゴンって、あんな巨体で飛んでるんだもの。このナイフを刺したら飛べなくなるかも」


 「それは……どうなのでしょうね? ワイバーンやドラゴンがどうやって飛んでいるのかなど知りませんし、もしかしたら本当にそうなるかも」


 「ワイバーンやドラゴンがどうかした?」



 3人も起きてきたのか食堂に来たらしく、イリュが質問をしてきた。それに答える前に、ミクが隣のテーブルに投げナイフを3つ置く。



 「それがマジックキラーで作った投げナイフ。それを突き刺してると相手の魔力を乱せるから、そうしたらワイバーンやドラゴンは飛べなくなるかもって、そうアレッサが言ったのよ」


 「んー……何となく言いたい事は分かるわね。そもそもあの巨体があんな小さな翼で飛べる筈ないのよ。鳥だって自分より何倍も大きな翼で飛ぶのだし、あれほどの重さとなれば、もはや魔力的な何かで飛んでないとおかしいわ」


 「そうね。昔からドラゴンがどうやって飛んでるかっていう疑問はあったらしいけど、それを解明した者は居ないわ。ま、知らなくても問題ないし、知ったところで意味あるの? って聞かれたら、誰も答えられないしね」


 「解き明かせば、あたし達だって空を飛べるかもしれないよ?」


 「ドラゴンみたいな莫大な魔力も無いのに?」


 「………」


 「そうなのよ、大抵の研究者がそこで詰まるの。昔から変わらないわ。ドラゴンが魔力で飛んでるとして、どうやったらドラゴンのような莫大な魔力が持てるのかって話に必ずなるの。あれだけの重さを飛ばすのだもの、相当の魔力がないと飛べないわ」


 「そうなると、人間種が持つ魔力ではあまりにも足りないという答えにしかならないのよ。例えば【風魔法】で飛んでると仮定してみても、どれだけの魔力があれば浮くのか分からないし、強力な魔法だと飛ぶのではなくて吹き飛ぶからね」


 「実験するのも命懸け、そのうえ飛ぶんじゃなくて吹き飛ぶかー。無理に知ろうとも思わないわね。空を飛んでみたいという気持ちは分かるけど、地に足がつかないのも怖いし、わたしは遠慮しておく」


 「だろうね、あたしも御免だよ。そんな危険な事をする気にはなれない」


 「そもそも研究者どもの事だし、私達にとってはどうでもいい事よ。それより、このマジックキラーは役に立つの?」


 「巨人に使ったら普通に突き刺さったし、普通に切れたよ。魔力で強化してる連中に関しては、これで戦った方が格段に楽だね」



 改めてカルティクは投げナイフを抜き、ジッと見つめた後で鞘に戻す。



 「これがもっと早くあればと思うけど、手に入るのは第8エリアかー。なかなかにやってくれるわね。そのうえ簡単には精錬出来ないんでしょ?」


 「魔力を乱すからね。私みたいに強引にやるか、それとも魔力に頼らないで高温を生み出すか。どっちかしかないよ」


 「どちらにしても現状では殆ど無理ね。儀式魔法を使うか、それとも技術開発をするか。どちらかしかないけど、どちらも今すぐは難しいとしか言えないわ」


 「そもそも溶かすだけで儀式魔法が要るって時点で、メチャクチャに過ぎるだろうさ。それでも魔力関係を無効化できる意味は大きいけど」


 「魔法を霧散させられるっていうのは、それだけでとても大きい事よ。アイテムバッグに入らない以上は、持ち運ぶしかないんだけども」


 「そこがネックだね。それさえ克服できたら最高なんだけど、流石に諦めるしかないか。魔法を使ったり、魔力で強化してくるヤツへの特効武器なんだ。それだけで感謝するべきで、それ以上は望んじゃいけないね」


 「そろそろ食事も終わりだし、近衛と探索者を連れていく為に行こうか?」


 「ういうい。ティアは遠心分離機を届けてきなさいね」


 「ええ、分かっています。そもそも近衛を連れて行くのもハチミツの為ですし」


 「あっ、忘れてた。これが<閃光機>の複製ね。5つもあれば十分でしょ」


 「わたし達3人で対処できたんだから余裕でしょ。ただし使うヤツが怖がってると、たかられて殺されるから、そこだけは注意しておいた方がいいかな?」


 「だね。あの蜂地獄は警戒し過ぎて損は無い。それにあそこのモグラも面倒なヤツだからねえ」


 「それらも含めて、陛下や王太子殿下に御知らせしておきます」



 どうやら近衛や探索者を連れて行く仕事にはイリュとシャルも来るらしい。カルティクは相変わらず第3エリアの見回りだ。一時期はミクが喰って減ったが、最近またもや増えてきたらしい。


 前に比べて手口が荒いので分かりやすいそうなので、おそらく他所から来た者の仕業との事だ。エルフは入って来れないとはいえ、連中は姿を偽る魔道具を持っている。それを使われると入国されてしまう可能性は高い。


 とはいえ、今のエルフィンの状況では魔道具を量産するのは無理であろうが……。


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