0423・マジックキラーの威力
<妖精の洞>に戻ったミク達は、食堂へと移動し注文をしていく。最後に大銅貨12枚を支払うと席に座り、適当に雑談しながら待っているとイリュ達も戻ってきた。
いつも通りイリュだけがさっさと席に座り、シャルとカルティクは注文とお金を払ってからこちらに来る。どうやらイリュ達は第5エリアでエクスダート鋼の材料を集めていたようだ。
「それなりに稼げたし、ある程度は集まったみたいね。おかげで買い取り価格が若干下がったけど、今までが高すぎたとも言えるから仕方がないみたい。1頭で小金貨1枚だったのは、お肉も合わせてだから」
「ああ、肉部分の単価が下がれば値段も下がるわね。魔石だってそこまで高い訳じゃないし。ミクが持ってるような、かなりの魔力を持った魔石を必要とするならまだしも、普通の魔道具は大した魔石を必要としないし」
「魔力の量が多い魔石の使い道は、その殆どが魔法の補助ですからね。最悪はゴブリンの魔石でも魔道具は動きますし、そうなると高価な魔石は必要ありません。それに強力な魔法を使える方も多く居る訳ではないので……」
「専ら小さい魔法の補助に複数回使うくらいだね。とはいえ、ダンジョンに行く探索者にとっては複数回使える魔石は重要なんだよ。3割は魔石が肩代わりしてくれるんだから、継戦能力を上げる手段としては優秀さ」
「でもマジシャンぐらいしか購入しないのよねえ。後は貴族家ぐらい? それでも下っ端の貴族家じゃ使わないのよ、蝋燭とかで済ませるから。そもそも魔道具自体が高価な物だから、魔石を消費する者も限定されてしまうわ」
「高価な魔道具を持ってる奴と、探索者のマジシャンぐらいしか買わないって訳ね。まあ、探索者の方が消費する事は多いし、獲ってくるのも探索者だから良いのかな? 誰に文句を言われる事も無いでしょ」
「ミクの作れる魔道具が出回ったら、魔石の需要は恐ろしく増えるでしょうけどね。ここに付けた<広照機>みたいな物とか、そういった物が広まれば、だけど」
「照らす魔道具の主流は手に持って使う物で、ここの天井に付けた<広照機>のような明るさはありません。これだけでも貴族は購入すると思います。ここまでの明るさで客を招くというのは、それだけで貴族の見栄を刺激しますし」
「他の者が知らない物を持つとか、他の者が持たない物を持つとかかい? とにかくそんな下らない争いばっかりやってるのが貴族だからねえ。あいつら本当に飽きずにやってるよ。あたしにはマヌケにしか見えなかったけどさ」
その後も食事をしながらの会話は続き、食事が終わったら各々の部屋に戻る。ミク達も3人部屋に戻り、いつも通りに冷房の魔道具を起動し、その後に2人の体を綺麗にしたら寝かせていく。
ミクも狐の毛皮を敷くと、そこにレティーとセリオを寝かせ、自らもベッドに寝転がって瞑想の練習を行う。そうやって、町が寝静まるまで待つのであった。
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夜。ゴールダームの殆どが寝静まった頃。ミクは起きだしてムカデに変わり、窓から外に出てダンジョンへと向かう。第8エリアの魔法陣の上に立ったらオークの姿に変わり、中に入ったら一気に走って行く。
6階まで行くと再びダンジョンの攻略を始め、マジックキラーの鉱床を探す。7階に発見したので鉱床を掘り、無くなってきたら次へ。その調子で9階まで下りたミクは、全ての地図を完成させて掘り終わった。
(5階も6階も復活してなかった。となるとマジックキラーの鉱床は復活までに時間が掛かるね。ま、とりあえず手に入ったんだから戻ろう。既にアレッサとティアに渡すナイフは完成してるし)
そうアレッサとティアが欲しがったのはナイフだった。ただし投げナイフのような小さい物だ。マジックキラーはあくまでも相手に触れていないと効果を発揮しない。ならば投げたり出来る方が優秀なのだ。何故なら自分が持っていても乱されるのだから。
触れていなければ全く効果が無いかと言えばそうでもない。多少の効果はあるうえに、厄介な事としてアイテムバッグには入らないのだ。つまりアイテムバッグというのは魔力的な物で拡張されたりしているらしい。
流石にアイテムバッグに触れてさえいなければ使用できるので安堵したが、マジックキラーは使用をよくよく考えなければいけない金属となる。それが分かっている以上、ミクとしては投げナイフにも鞘を作るべきだと考えていた。
アイテムバッグに入れて適当に投げつける事が出来ないうえ、刃の部分が当たると何処の魔力が乱されるか分からない。投げナイフ以外に大型ナイフも作っておくべきかと思い悩むミク。まあ、まずは巨人の所へ行くべきだろう。
ミクは脱出した後、第7エリアに進む。ピーバードに変化したら一気に巨人の居るボス部屋まで進み、右腕を肉塊にして投げナイフを取り出す。アイテムバッグとミクは理が違う為か、本体空間に収納する事は可能らしい。
ミクはオークの姿になってボス部屋へと入る。いつも通り巨人が出現したら、即座に近付いて足に投げナイフの切っ先を当てる。この状態で魔力を乱している筈なので、そのままミクは押し込んだ。
「Gaaaaaaa!?!!?!?!」
投げナイフはいとも簡単に突き刺さり、刃全体が足の甲に突き刺さっている。やはり巨人の皮膚を強化しているのは魔力であり、マジックキラーで乱せば容易く突き刺さる程度のようだ。それを考えれば、こういう厄介なヤツに対する切り札になるだろう。
ミクの場合は己の牙で突き刺したり切り裂けば良いのだが、アレッサ達のような他のメンバーにとっては重要な手段になるだろう。魔法を無効化するより、魔力を乱すという事の方が意味が大きい。
とはいえ悪用厳禁の金属である事に間違いはないだろう。少なくともウィリウム鋼と同レベル程度の切れ味は持つのだから、人体にとっては十分に凶器だ。これを使われると、どれだけ優秀な者でも暗殺を防げない可能性がある。
ミクはそう考えながらも実験を続け、押し付ける必要も無く切れる事が分かった。実際、つい先ほど巨人の首を切り裂いたからだ。今は血を噴き出して倒れており、後は待つだけで死ぬだろう。
それを見つつ、とりあえずマジックキラーはインゴットにして置いておく事にした。精錬するにもバカげた魔力量か、もしくは魔力を使わない高温を確保しなければいけない金属だ。考えれば考えるほど、今の人間種には精錬不可能な金属となる。
とりあえずは使われる危険性は殆ど無いと言え、あるのはラーディオンに渡した盾と大型ナイフぐらいだ。あれなら使われたところで大した問題ではない。離れていればそこまでの効果は無いのだし。
6人分の投げナイフを作成したら、巨人の骨で鞘を作る。持ち手はワイバーンの皮をグルグル巻きにし、鍔は作らないで仕舞う。投げナイフに鍔を付けても意味は無いので、わざわざ作ったり付けたりなどしない。
6人分が完成したら、後はインゴットにして保管するだけである。持っているだけでも多少の阻害効果はあるが、そこまで大きな物ではない。もしかしたらワイバーンの皮が何らかの効果を発揮しているのかもしれないが、直接触るとミクの魔力まで乱される。
これはなかなかに難儀な代物だなと思いつつも、巨人を本体空間に送ったミクは本体の解体を待ち、糞尿などを含めたゴミをボス部屋に捨てていく。全て終わったら奥の魔法陣で脱出、宿へと戻るのであった。




