0421・鉱床掘削
涼しくなった洞窟の中を歩いていく3人と1頭。既にセリオは大きくなっており、トコトコとミクの隣を歩いている。ここには赤黒い巨大コウモリと赤黒い巨大ムカデに、赤黒い巨大ミミズだ。
しかしながら冷気が吹き抜けた影響か、天井に張り付いていた巨大コウモリは縮こまっている。それを見たティアは最低魔力で【凍結嵐】を発動、巨大コウモリを中心に凍結する程の冷気の嵐を生み出す。
「あっぶないわねえ!! せめて魔法を使うなら使うって言いなさいよ!!」
「申し訳ありません! まさかあんなに強力な魔法だと思いませんでした。しかも思っていたよりも魔力の消費が多いです」
「まあ、ああなるぐらいだから仕方ないんでしょうけどね。とはいえ完全にこれ上級魔法でしょうよ。天井一面が凍りついてるじゃない」
「コウモリは凍るまでは行ってないけど、それに近い状態かな? 寒さで既に死んでるみたいだし。そもそも敵を凍らせなければいけない訳じゃないから十分でしょ」
「確かに十分だけど、冷気が凄いわよこの魔法。ハッキリ言ってまともには使えないわね」
「それはここが洞窟で閉鎖空間だからだよ。実際にはダンジョン内だから閉鎖されてる訳じゃないんだけど、それは横に置いておくとして、閉鎖されてる場所だから私達まで冷気に襲われるわけ。つまり開けている場所ならこうはならない」
「ああ、この場所の特性でああなってしまうという事ですね。すみませんでした」
「次から気をつけてくれれば良いんだけど、もうちょっと魔法の強さを落とした方がいいわね。ミクなら何の問題も無いんだろうけど、私達だと厳しすぎるわ。特にここだと薄着であって、防寒具なんて着てないし」
「とにかく進もうか。ここで喋ってても仕方ないしね」
そう言ってミクが話を切り上げ、先へと進む事を促す。寒さで死んだコウモリは叩き落し、レティーが血抜きをするものの不味かったようだ。それでも一応回収するティア。
そのまま進んでいき、今度は巨大ムカデが出てきた。しかしムカデに驚く者など居らず、逆にアレッサの【氷結嵐】を受けて寒さで動けなくなる巨大ムカデ。その後、すぐに動いたアレッサに輪切りにされて死亡した。
「これって使えるのかな? 甲殻はそれなりに頑丈そうだけど……やっすい防具には使える? それとも、それすら無理?」
「どうなのでしょう? 一度は持って帰った方が良いと思いますが、そこまで使えるようには見えません」
「ラメラーアーマーの素材としては使えそうだけどね? 甲殻の硬さがどれくらいかにもよるけど、鉄ぐらいの硬さがあれば十分に使えるんじゃない? 何より軽いし」
「「ラメラーアーマー?」」
「プレートアーマーとは違う鎧だと思えばいいよ。こういう形にした小札と呼ばれる物を継ぎ合わせて作られる鎧の事。糸とか革紐で繋いでいって1つの鎧として完成する。そんな鎧」
「何となくは分かりますが、そんな鎧が役に立つのですか?」
「いわゆるブレストプレートに比べれば防御力は落ちるけど、その分動きやすさが違うんだよ。ラメラーアーマーは、上手く作れば体の捻りも邪魔しない鎧になるの。そういう利点があるんだよ。あとブレストプレートより蒸れない」
「ああ、暑くない鎧って訳ね。ここに居るとその意味が分かるわ。こんな所にプレートアーマーで来たら、絶対に熱さで死ぬわね。断言出来る」
「成る程。暑さというのも確かに重要なのかもしれません。とはいえ、探索者でプレートアーマーを着る方など居ませんが……」
「そりゃね。沢山歩かなきゃいけないのにプレートアーマーなんて着てたら、間違いなく途中で体力が無くなるわ。探索者に必要なのは、1にも2にも体力よ」
「逃げる為にも体力は必要ですし、腕力に傾倒している者は駄目ですね。特に我が国のダンジョンは広いですし」
「それでも洞窟タイプはマシみたいだけど、元々の大きさが大きさだもんねー」
歩きながら喋っているものの、魔物が出てこないので気楽なものである。そんな中、再び小部屋のような場所を発見。中を覗くと今度は巨大ミミズだった。今度はティアが【氷結嵐】を使い、被害なく魔物を倒した。
「やはり【氷結嵐】なら被害なく倒せるようです。ついでに小部屋の仲が涼しくなりますし、丁度良いですね。この方法で倒していきましょう。どうせ進んでも魔物の数が増えるだけでしょうし」
「でしょうね。大きすぎて地中に潜れないミミズとか、地中から突き刺してくるモグラを見習えと言いたくなる。まあ、本当に見習われても困るから、このままで良いんだけどさ」
「アレはどういう魔物なのでしょうね。あの大きな体で体当たりをしてくるんでしょうか? それとも1階の魔物のように魔法を使ってくるのでしょうか?」
「どうなのかな? まあ、それはいいとして先に進みましょうか。早めに先へと進んで掘らないとね。わたし達のも作ってもらうんだし」
「そうですね」
その後も進んで行き、ミクが掘っていた場所に到着。ミクが作っていたツルハシを貰った2人は一気に掘り出していく。しかしながらミクが掘っていたからだろう、どうにも産出量が少ない。殆ど石か他の金属なので止め、先へと進む事に。
そうして進んで行くもなかなか鉱床は見つからず、2度目の鉱床が見つからないまま6階へ。その6階も進んで行き、ある程度地図が完成したところで鉱床を発見。3人は一気に掘り出していく。
「しっかし簡単に掘れるわねえ。流石は巨人の骨製のツルハシと思うけど、それでも時間が掛かるのは仕方ないのかしらね? 涼しいから掘るのに然したる苦労は無いけど、それでも少しずつしか掘れないから面倒ねえ」
「そうですね。もうちょっと一気に掘る事って出来ないんでしょうか?」
我儘だなと思うも言いたい事は分かるので新たに作成し、とりあえず転送したら使ってみるミク。一度の掘削で大量にゴッソリと掘れたのを見たアレッサとティアは、そっちの方が良いと口々に言い出した。
仕方なくアレッサとティアの分も作り、順次2人に渡していく。それを受け取った2人は一気に掘っていくが、ゴッソリと掘れる事にテンションが上がっている。
「いやー、一気に掘れるから助かる助かる。まさか鍬で鉱石を掘るとは思わなかったけど、子供の頃に畑の手伝いをしていた事を思い出すわ。あの時にもコレがあったら楽だったと思う」
「魔力を通せば石壁でもゴッソリと削りますね。これはとっても楽で助かります。畑という事は、この鍬というのは畑仕事の道具なのですか?」
「そうよ、土を耕す道具ね。それ以外にも収穫の時に使ったりするけど、これを使って横着すると野菜が傷付くのよ。よく怒られたわ」
「へー、それを使って壁を掘っている私達も私達ですね」
「特に問題ないでしょ。使わなきゃ損だし、こっちの方が速いからね。わざわざ少しずつ掘る意味無いし、巨人製だから土壁どころか石壁でも壊れないからさ」
「あれだけ強かったのもあるけど、巨人製の物って本当に役立ってくれるわねえ。ちょっと重めなのが玉に瑕だけど、そこは【身体強化】でどうにでもなるし、これで体も鍛えられてる。そう考えると無駄になってないのよねえ」
「セリオも角で掘ってますしね。あれもあれで凄いですけど」
『角を大きくして削っているだけだよ? 皆みたいにいっぱい削るのは無理かなぁ……』
「それは仕方ないわよ。むしろ壁に角を押し付けて、首の力だけで石壁を削ってる時点でメチャクチャだけどね」
そもそも石壁という時点で簡単に掘れるものではないのだが、あまり自覚はしていないらしい。普通の者からすれば、どっちもどっちであろう。




