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0418・王城での採蜜




 依頼を請けたミク達は歩いて王城へと向かう。もちろん途中の門はティアが居るのであっさりと通る事が可能だ。王城から出たとはいえ、ティアが王族であるという事実は変わらない。なので殆ど顔パスレベルで通れる。


 ミク達は顔パスでは無理だが、探索者である為に依頼票を見せれば通れる。そもそもベルカーラ王女からの依頼なのだから通れて当たり前の事であり、ミク達は門を越えて王城へと向かう。



 「後ろからついてきてたバカは引き下がったようね。ま、王城への門を越える手段を持っているとは思えないけど」


 「どのみち問題行動を行えば喰われるだけですので、あの者がどうなるかは興味もありません。愚か者なのか、それとも踏みとどまるのか。そこは御自分で決めれば宜しいでしょう」



 先ほどギルド内でケチをつけてきた男も、全て見切られているとは思わなかっただろう。ミク達はあの男が襲ってくる可能性を話しつつ、王城前の騎士にベルカーラ王女の依頼した物を運んできたと説明。


 それに対して騎士が王城の中へと入って行ったので、ミク達はしばし待つ。流石に王城内に勝手に入る訳にもいかないし、入る気も無かった。3人とも面倒はお断りなのだ。



 「すまない、待たせてしまったか。それにしても、ここまで早いとは思わなかった。朝に依頼したのに、お昼前には依頼を達成するとはな」



 そう言いながらミク達を案内するベル。そのまま大人しくついていくと、倉庫のような場所に連れて来られた。どうやらこの中に出せという事らしいのだが、採ってこいと言った蜂の巣の量を知らないのだろうか?。



 「ベル、この倉庫で足りると思ってるの? 後、渡したらすぐにハチミツを採らないといけないんだけど、その意味も分かってる? ハチミツを採蜜するところなんて見た事が無いから分からない?」


 「確かに私はハチミツを採るところなど見た事は無いが、この倉庫では無理なのか?」


 「それもあるけど、ハチミツを採った後の蜂の巣は利用できるけど、最後にはゴミになるわよ? この倉庫に入りきらないほどの蜂の巣。それがゴミになる事を考えたら分かるでしょう?」


 「しかもウニョウニョした蜂の子も入っていますが……あれはどうするのでしょうね? まあ、姉上が出せと言われたのですから出しましょう。まずは出さねば分からないと思います」


 「それもそうだね。見せる意味でも出そうか?」



 そう言って倉庫の中に蜂の巣をドンドン出していくミク達。ちゃんとハチミツが垂れたりしないように蜂の巣を壊してきているので、上手く置いていっているのだが、その量たるや、あまりにも多い。


 倉庫の奥から詰めていっているものの、その量に段々と眩暈がしてくるベル。しかし容赦なく置いていく3人。倉庫にどんどんと詰めて積み上げて置いていき、ついに倉庫がいっぱいになった。



 「だから言ったでしょ? そのうえハチミツってドロッとしてるから簡単には採蜜、つまりハチミツを得る事って出来ないのよ。蜂の巣を綺麗に壊して、ハチミツが全部垂れるようにして放置しておかなきゃいけない。全部のハチミツを出すのに何日かかるか……」


 「そ、そんなに時間が掛かるのか……。どうにか早くなる方法は無いだろうか?」


 「そんな事を言われてもねえ。世の中の採蜜してる人を探して雇ったら? もしくは騎士達にやらせるか。これって国の産業にする気なんでしょ? どのみち国策なら騎士にやらせてもおかしくないと思うけどね?」


 「騎士達はこういう事を嫌がるとは思います。それでも陛下が命じられればやるでしょうけど……」


 「王城でするのも変だし、そのうち別の区画でやる事になるかもね。別の区画なら町の人を臨時で雇えば済むしさ。ただ盗んでいく奴が出てくる可能性が高いけど」


 「それらも含めてこれから考える事ですわね。まずは今ある蜂の巣をどうにかしなければいけないのですが……」



 ずっと黙っているミクを奇妙に思っている2人だが、突如ミクは右腕を肉塊に変え、<採蜜機>を取り出した。これはミクが勝手に<採蜜機>と呼んでいるだけで、実際にはハチミツを採る為の遠心分離機だ。


 中に布でくるんだ蜂の巣を入れて、蓋をしたら上の取っ手を回す。下に受ける用の壺を置いておけば、あっと言う間にハチミツだけが出てくる。もちろんそうなる前に蜂の子などはけておかなければいけないが。



 「おおーっ!! こんな簡単にハチミツが採れる道具があるんなじゃないか。アレッサ殿が言うから大変なのかと思ったら、そこまででも無いな」


 「勘違いしてるようだけど、わたしはこんな道具なんて見た事ないからね? むしろミクが作ったであろうコレ、色々な事に使えそうで見せてよかったのか疑問があるわ」


 「これは原始的な遠心分離機だから別に問題ないよ。これが何に応用できるかは……まあ、時間が掛かるんじゃないかな。色々と頭で考えてみるといいよ」


 「という事はミク殿は色々な使い方を御存知という事ですか……。私には全く想像がつきませんが、色々とあるのでしょうね」



 ハチミツを搾り終わったら中の物を取り出して、廃棄する物として置く。再び蜂の巣を持って来て適度な大きさに壊し、遠心分離機に入れて採蜜していく。ハチミツは採れるが、途方もない時間が掛かると理解したベル。


 ミクに<採蜜機>を依頼し、ミクは仕方なくそれを了承した。残っていたトレント材と適度に集めていた黒い木も使い、5台の<採蜜機>を作って渡す。しかし足りないのは目の前の光景を見れば分かる事だ。


 騎士達が慣れない手つきで蜂の巣を壊し、それを遠心分離機に入れてハチミツを採取していく。既に王太子も来て確認しているが、まさかハチミツを採る事がこれほど大変だったとは知らなかったらしい。



 「先ほど3つの蜂の巣を取ってきたと言っていたけど、1個の大きさが桁違いに大きいんだね。私も普通の蜂の巣なら聞いた事はあったけど、流石は我が国のダンジョンだ。スケールが大きいね」


 「そんな言葉で言わなきゃ仕方ないくらいに大きいものね。実際に蜂が1万匹くらい飛んでるんだから、どうしようもな「ぁーーーっ!?!?」いんだけど……」


 「あの妙な声は……おそらく手に付いたハチミツを舐めてしまったのでしょうね。このハチミツは耐え難いほどに甘いのです。使う前にある程度まで薄めないと、とてもではないですが耐えられません」


 「わざわざ薄めるのかと思うけれど、人の口では耐えられないとなったら仕方ないんだろう。ハチミツを薄めて使うなんてアレだけども」


 「貧乏人みたいに感じるわよねえ……実際には耐えられないほど甘いだけなんだけど。しかも薄めたところで花の香りも濃いから、普通のハチミツの味……よりは美味しいかな? そんな味になるだけだし」


 「薄めて何とかという味ですからね。それは人間種に耐えられる物ではありません。だからこそ問題の無いミク殿とイリュディナ殿にセリオはおかしいのです。これは絶対に耐えられない筈なんです」


 『えー……普通に美味しいよ? 薄めなくても良いと思うけどなぁ……』


 「そうか、君は薄めなくても食べられるんだね。凄いなぁ」



 何故か王太子がセリオを抱いているが、どうやら気に入ったらしい。彼からすれば王城内の者のような裏が無い者であり、そのうえまだまだ若いのだ。人間種と違って可愛がっていてもおかしく思われない。


 そういう意味では王太子の癒しになっているセリオであった。


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