0411・いつもの雑談と未知の金属の話
運ばれてきた食事を食べているとイリュとカルティクが帰ってきた。2人はすぐに食堂に来たが、ミク達と会話をする前にアルトムに宿と娼館の事に関して相談されている。あれはイリュの本業に関してだから仕方ないだろう。
そして遅れてきたカルティクと、今ごろ起きてきたのか食堂にシャルもやってきた。隣の席に座ったカルティクと話を始めようと思ったら、シャルも注文を終えて来たので改めて5人で雑談を始める。
「どうも相変わらずエクスダート鋼の材料が足りてないみたいでね、それで第5エリアに行く羽目になったのよ。いや、儲かるから良いんだけど、私の本来の仕事は探索者の監視と保護だから」
「そういえば、そうね。カルティクって第3エリアで怪しい探索者を監視したり、必要なら犯罪者を始末する仕事だもんね。現行犯でないとなかなか難しいだろうけど、それでもやらないよりはマシな仕事」
「マシって言うの止めなさいよ。とはいえ、ミクが来るまではその程度でしかなかったのは事実だけど……。それよりエクスダート鋼の事よ。おそらくミク達にも参加しろっていう要求が来ると思うわよ? それぐらい足りてないらしいし」
「もしかしたら、あたしとジャンダルコの姫が来たんで足りなくなったのかねえ。結構な量を要求したのかも……。ちなみにあたしの方は例年の2割増しなだけだよ。ジャンダルコの方がどれほど要求したかは知らないけど」
「もしかしたら今の内にエクスダート鋼を売っておこうって事? でもミクが話したのは今日だし、流石に違うわよねえ」
「でしょう。ミク殿がラーディオン殿に話したのは、お昼前ぐらいの時間でした。にも関わらず、朝の時点でエクスダート鋼の素材集めを依頼するのは不自然です。順番が合っていません」
「そうよねえ。第8エリアで新しい金属が見つかったってミクが知らせたのは、わたし達が連れて行かれてからだし。わたし達はそれまで寝てたもんね。おかげで朝食を食べられなかったけど」
「第8エリアで新しい金属が見つかったのかい? そりゃ相当の衝撃だろうさ。場合によってはエクスダート鋼を上回る金属の可能性があるんだ。頭が痛いだろうが、採ってこいって言って来るのは確実だろうね」
「何だか私達もそっちに行けとか言ってくる可能性があるわね。少なくとも第8エリアには私達しか到達してないし、新しい金属ともなれば研究所が絶対に採ってこいと言い出す筈よ」
イリュ、カルティク、シャルの食事が運ばれてきたので、2人は食べ始め、少し経ってから話が終わったイリュも食事を開始した。どうやら結構長く掛かったものの、結果には満足しているらしい。
「それはね。簡潔に綺麗に纏められてたから分かりやすくて、それで色々な指示を出してたのよ。ようやく食事ができる。それで、いったい何の話をしてたの?」
「第8エリアで新しい金属が見つかったんだとさ。ミクが見つけたらしいけど、あたし達にそっちを採ってこいと研究所なんかが言ってきそうだっていう話だよ」
「あらら。第8エリアで新しい金属ねえ……。そっちはどうなるか分からないし、考えても無駄じゃないかしら? その新しい金属は武具に使えるのかのテストをしなければいけないし、他にも色々としなければいけないもの」
「ええ。だからこそ私達に採ってこいと言いかねないって事を話してたのよ。テストすら出来ていない訳だしね。まあ、イリュの言う通り考えても無駄なんだけど、言ってくるまでは無視するに限るわ」
「っていうか、それしかないわよね? そもそも採ってこいっていうのは簡単だけど、そう簡単に集まる物でもないでしょ。金属って言ったところで、鉱石を集めるのよ? その中にどれだけ含まれてるか考えたら、莫大な量が必要じゃない。嫌よ、朝から晩まで鉱石掘りなんて」
「もはや鉱山の労働者と何も変わらないね。採掘するのも重労働だし、それを運ぶのは……アイテムバッグで出来るけどさ。欲しいならお前達が行けって感じだねえ」
「それ以前に、噴石に含まれてるらしいのと、他の場所では見つかってないのよ。だから手に入れるのは超大変。それが分かってない連中に言われても、って感じ」
「第8エリアは火山という火を噴く山の地形です。それが火を噴く際に石なども噴くのですが、その飛んでくる石に含まれているそうです。なので頭の上に落ちてくるかもしれない石を拾わないと手に入らない訳でして……」
「そりゃまた、随分と厳しい。他には今のところ見つかってないみたいだし、そんな飛んでくる石を拾えったってねえ……冗談だって言ってほしい気分だよ。仮に言ってきたところで却下だね却下」
「それ以前にエクスダート鋼がどれぐらいか知らないけど、未知の金属はかなりの高温じゃないと溶かせないよ? 他の金属どころか石が溶融しても足りなかったし。だから未知の金属を取り出すのは簡単なんだけど、それはその温度まで耐えられる炉があればの話だよ」
「………ミクがそういうくらいだから相当の温度なんだろうけどさ。そこまでの温度なら、確かに炉の方が耐えられるかは謎だね。ちなみにミクはどうやってそんな炉を作ったんだい?」
「私が作った炉は、ワイバーンと巨人の骨なんかを混ぜて作った炉だよ。小さいけど私が使う分には特に問題ないしね。実験上は4000度程度までは耐えられると思う。どうも両方の魔石が相乗効果を発揮してるっぽい」
「ワイバーンと巨人ねえ。どう考えてもこの国の研究所が持ってない炉だろうさ。となると、未知の金属を溶かせる炉が無いって事になる。これなら多少採ってくれば分かるだろう。未知の金属だけ溶けないって」
「それもあるけど、石炭やコークスで未知の金属を溶かせる温度まで上げられるのかな? 私は魔法で無理矢理に高温を作りだしてるけど、それは私だから出来る事だと思うし、普通の連中じゃ難しいと思う。数回なら出来るだろうけど、日常で行うのは無理でしょ」
「まあ金属作りともなれば日常的に行うものだものね。それが20人以上の魔法使いを集めて、儀式魔法を使わなきゃ出来ないってなれば、日常的に作り出すのは不可能としか言えないわ」
「そもそも儀式魔法を使うのに集められる魔法使いって、エリートの連中だからね。それを20人も投入しなきゃなんないんだから、エリート連中だって断るだろ。何の為に頑張ってきたんだって話しさ」
「まあねえ。弛まぬ努力をしてきた先が、未知の金属を溶かす仕事とか。何をやってるのか分からなくなってくるでしょうね。自分はこんな事をする為に頑張ってきた訳じゃないって、爆発しそう」
食事の終わったセリオがミクにもう少しと強請り、ミクはワイバーンの干し肉を出して与えている。赤身が美味しい肉なので、セリオは喜んで齧り始めた。
「それより何より、さっきミクが言ってた通りに耐えられる炉がなきゃ意味ないよ。ミクの事だから夜の間に色々とするんだろうけど、それでも集まるかい? あたしは集まらない気がするけどね?」
「それでも集めて試してみるしかないよ。とりあえず必要なのは大型ナイフくらいかな? そこまで集まれば巨人素材の物と比べられるから、大凡は判明すると思う。私にとっては武具に使えるか否かだから、それ以上の特性にはあんまり興味無いし」
「特性?」
「雷を通しやすいかとか、腐食に強いかとか、塩に強いかとか。調べればキリがないからね、いちいち面倒な事はしないよ」
確かに未知の金属ともなれば様々な事を調べねばならないが、ミクはそこまでする気は無いのであった。




