0408・昼食と第8エリア
<妖精の洞>の食堂に入り、昼食を頼んで大銅貨12枚を支払う。適当に待っている間も第8エリアの話をしながら、気を付ける点を2人に話していく。
「第8エリアの魔物は魔法を使ってくるから気をつけなきゃいけないかな。赤黒い猪は【火球】、赤黒い鳥も【火球】、赤黒いウサギは不明。エルフィンで【旋風弾】の魔法陣を見て覚えたから、それを使えば鳥には2撃で勝てると思う」
「ミクの2撃と、普通の探索者の2撃は同じじゃないんだけど?」
「普通の探索者の威力程度まで抑えてるよ。2撃で地面に落とせるから、後は普通に攻撃すれば勝てるって事。発動最低限だと分からないけど、普通に篭める魔力量で十分だよ。流石に私しか勝てないとか、ラーディオンはともかく普通の探索者が納得しないからね」
「ならば赤黒い鳥というのは、単に落とすまでが面倒という魔物なんですね。一度地面に落としてしまえば、そこまででもないと。まあ、鳥なんて空を飛んでいるからこそ厄介なんですけど」
「そうね。飛んでなければ普通に戦えるし、普通に戦えるならそこまで苦戦する相手でもないでしょ。首を落としてしまえば良いんだし、それで勝てるなら苦労しない相手ね」
「その魔物以外には、黒い木があったよ。これがトレント材よりも優秀でさ。困った事に未だ値段が決まってない。解体所に多少渡したけどそれっきりだね。今は何に使えるかとか、色々とやってるんじゃないかな?」
「そんなに優秀だったのですか? 木という事は第8エリアに行けばさえ採りに行けるという事ですし、そうなればそこまで苦労せずとも儲かるのでは? それこそ引退した探索者の収入源に……」
「トレント以上の硬い木を得る為に、第8エリアの魔物が居る所に引退した探索者をねえ……。それ以前に、現役の間にそこまで行けるの? 行けたって一握りな気がするけど」
「まあ、それはそうかもしれませんが……。それでもおかしな組織に所属するよりも、余程良いと思いませんか? 変な所に流れて、おかしな事をされても困りますし……」
「ああ、そういう事ね。確かにゴールダーム特有の問題か。無事に引退まで生き延びた探索者でも、引退した後は仕事が無いのよね。腕っ節で生きてきたから、その後はどうするんだってなるし。故郷に帰って自警団とかに入るならまだマシよ」
「我が国で生まれた者は、困った事にそこまで仕事が無いのです。兵の数も今が限度ですし、他も似たり寄ったりですから。探索者を辞めた後の仕事もダンジョンにあると助かるのですが、そう上手くはいきませんか」
「それでも第8エリアともなれば良い物は手に入るだろうし、探索者は現役の間に稼げるだけ稼ぐべきだよ。そうすれば後の生活は十分やっていける筈。引退できるって事は、そんな歳まで生きてこれたんだろうしね」
運ばれてきた料理に手をつけつつ、3人の話は続く。セリオは興味が無いので食事を最優先にしており、話の内容など聞いていない。
「探索者の事は横に置いとくとして、第8エリアは大変そうね。わたし達でも攻略は出来そうだけど、そう簡単には攻略させてくれなさそう。それに石が飛んでくるんじゃ、直撃したら死ぬわね」
「でしょう。どれ程の高さから降ってきているか分かりませんし、そんな物が直撃すれば死んでしまいます。運良く死ななかったとしても、ある意味で死ぬより酷い目に遭っている気がしますし」
「それはね。石が直撃したにも関わらず死ななかったら、間違いなく重傷で動けないか死にかけってだけよ? むしろ死ななかったからこそ、余計に苦しむ羽目になってるじゃない。やーよ、そんな死に方」
「結局のところ死んでしまいますし、余計に苦しむだけですからね。そんな死に方は誰だって嫌です。流石に私達がそうなる可能性は低いですが、石が降ってくるとなると警戒し続けないといけません」
「そうなのよねえ。兜を被っていても、おそらく無駄でしょ。大きな石が飛んできたらどうにもならないし、それが直撃すれば兜ごと頭を潰されるだけ。それを警戒し続けるエリアかー。尋常じゃないわね」
「ええ、本当にそう思います。とはいえ行ってみなければ分かりませんが……」
「午後からは2人も連れて行くから。どのみち何度も行って慣れるしかないし、噴石が怖いのは仕方がないとしても、攻略には何度も足を運ぶしかない。だから文句があっても行くよ」
「「はーい」」
昼食を終えた3人と1頭は、諸々の準備を整えた後で出発。ダンジョンの第8エリアへの魔法陣に乗って転移する。相変わらず周りで騒いでいる奴等が居るが、3人とも無視しているだけだ。
転移が終わった後は、荒れた大地と暑い空気が歓迎してくる。こんな場所かと少々ゲンナリしている最中に、突然噴石が近くに落ちてきた。
ドゴン! という音がしてビックリする2人は、落ちてきた石を見て驚く。
「いやいやいやいや、思ってたより大きい! 確かに岩ほど大きくはないけど、石っていうサイズじゃないでしょ!?」
「あんな物が落ちてきたら、間違いなく死んでしまいます! 頭にだけは絶対に受けないようにしなくてはいけません! 冗談ではありませんわ、あんな大きな石!!」
「あれは特に大きいと思うけどね。まるで2人に見せる為に落ちてきたみたいな感じかな? 最初に大きな石を見せてビビらせる。誰かが何処かで笑ってそうな気も……」
「ダンジョンを作ったヤツって事? 第7エリアもそうだったけど、作ったヤツの性格の悪さが透けて見えるのよね。非常に腹立たしい感じの性格の悪さがさー」
「分かります。厭らしさが滲み出てますわよね、性根の悪さというか底意地の悪さが」
「とりあえず作ったヤツの事を考えても仕方ないから行くよ。猪とかウサギと戦って慣れないといけないからね。後、上を飛んでるのが赤黒い鳥。で、【旋風弾】の魔法陣はコレね」
ミクは発動させずに魔法陣を維持して2人に見せる。2人もすぐに理解し、【旋風弾】の魔法を放つ。2人が同時に放ったからか、2つの魔法がおかしな作用を起こし、赤黒い鳥を前に打ち消しあって消えてしまった。
しかし余波を受けたのか、赤黒い鳥が微妙に態勢を崩す。しかしそれだけで、赤黒い鳥が離れる事も旋回を止める事も無かった。何故あの鳥はこちらの上空を旋回するのだろうか?。
「ただグルグル回ってるだけなら、放っておいていいんじゃないの? 別に無理して倒さなくてもいいと思うし、何か気になる事でもあったりする?」
「別にそこまでじゃないんだけどね……。ま、いいや。なら先を急ごうか」
そう言ってミクは会話を止め、歩き出していく。2人は奇妙に思ったものの、スルーしてミクについていく。そして赤黒いウサギを発見した。ミクは先に攻撃しないと逃げられるからと改めて説明し、後をアレッサに任せる。
アレッサは先程と同じ【旋風弾】の魔法を放ち、赤黒いウサギにダメージを与える。そしてウォーアックスを構えるのだが……。
「ぐぅ……!! このクソウサギ! 速いっての!!」
思っていた以上に素早いウサギに突撃され、危うく噛み付かれるところだったアレッサ。なんとかウォーアックスで防ぐものの、噛みつきを防ぐ為に武器を使っており攻撃が出来ない。
ちなみにミクは加勢しないように言っているので、誰もアレッサの戦いに介入せず遠巻きに見ている。そもそもアレッサの能力であれば1対1で勝てるのだ。本人が余裕を見せていなければ。
つまり、今の状態は自業自得なのである。




