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0407・ラーディオンへの説明




 「第1の町の門は【火球】で壊して、後はフィグレイオ軍にお任せだったね。相手は魔力枯渇を起こして大抵ダウンしてたから、特に死人が出る事もなく制圧した筈だよ。守備兵の頑張りすぎが原因だね」


 「それは聞いていたが、特にお前さんが特別な事をしていないならいい。もし負担が違うなら、こちらで調整せにゃならんのでな。頑張ったヤツと頑張ってないヤツの受け取る金銭が一緒なのはマズいだろ?」


 「ああ、そういう事ね。私は大して魔力を篭めてないよ。そもそも木製の門だったからね、連射して燃やせればいいっていう程度にしか魔力を篭めてない。後は燃えるまで皆で撃ってただけだよ。それは第3の町まで変わらない」


 「うむ、それも2人から聞いたのと同じだな。次に第3の町の近くに居たという第3王子だが……事実かどうかは横に置いておく。そんなものは分からんし、既に殺されてるんで意味はない。大事なのは、奪ったもんは今フィグレイオ軍が持ってるかどうかだ」


 「私が魔道具を貰う気だったんだけど、それも複製し終わったからね。わざわざオリジナルを持っておく必要も無いし。だから魔道具も含めて渡しておいた。私にとっては要らない物だし」


 「まあ、お前さんがそう言うならそうなんだろうな。それよりも金銭まで向こうに渡しちまって良かったのか?」


 「王太子の分も含めたら、本来国家が持つべき金額になる。それを個人が持ってるっていうのは、どう考えたって面倒事に巻き込まれるでしょ。それで喰えるならいいけど、喰えないなら鬱憤うっぷんが溜まるだけでしかない。面倒の極みだよ」


 「ああ、うむ。まあ、お前さん達なら幾らでも自分で稼げるからな、必要ないと言えば必要ないのか。殿下からも聞いたが、光金貨なんて個人が持ってても使えないだろうしな」


 「ええ、あんな物を一商店で出されても困るだけでしかありません。店ごと全てを買い取っても、お釣りが渡せない程の金額なのです。ミク殿も言っていましたが、あの額の貨幣は非常に使いづらいのですよね」


 「1枚で1000000ゼムだからなぁ。そんなもん出されても困るだけだろうし、平民じゃ見た事もねえだろうよ。かくいうワシだって光金貨なんぞ見た事も無いんだしな。なんでも光輝いているとは聞いた事があるが」


 「そもそも国家間取り引きくらいでしか使われないんだから、当然でしょうけどね。それも程度の低い国家じゃ王でさえ見た事が無いほどの物。それが光金貨なんだし、そりゃ使いにくいでしょ」



 そんな話をしているとセリオが「お腹空いた」と念を寄越してきたので、ミクは作ったばかりの赤黒い猪の干し肉を食べさせる。セリオは一口食べた後、夢中で噛んでいるので相当に美味しかったらしい。



 「えーっと、王都ユグルに行く前の森の中を王太子と王族が逃げていた。それに間違いはねえか?」


 「無いね。あれは挟撃を撃退した後に見つけたから、間違いなく第3の町と王都ユグルの間だよ。挟撃を受けたのはそこだけだし、それ以外の場所では受けてない」


 「そして王太子と王族をブチ殺して、王族が全て居なくなったと。更に言やあ、証拠は何も無いってこったな。後はエルフィン次第だが、これからは偉そうに出る事なんて出来ねえだろうよ」


 「それはそうでしょう。王都まで制圧されてしまったのでは、もう観念する以外に出来る事はありません。それでも自分達が世界一優秀だという妄想に逃げ込むのかもしれませんが、外に出れば現実を叩きつけられます」


 「そうね。妄想の中に逃げ込めるのはエルフィンの中だけでしょ、それもおそらくは森の中だけ。平地はこれから色々な国での分配でしょうしね。となると、エルフは森の中に封じ込めるのかもしれないわ」


 「そして平地を領土として手に入れ、森のエルフに食料を売るのですね? あそこは農業をしていないみたいですし、幾ら森の恵みと言ったところで冬は越せません。他の種族を見下すなら飢え死にすればいいのです」


 「そうなる前に確実に折れるだろうが、王都の奴等だけは折れないかもなー。あそこにはダンジョンがある。確か中は森の地形だった筈だし、そこには果物とか色々あった筈だ。エルフはそれらを糧にしている」


 「果物とかだけ? 穀物はどうするのかしら。流石に果物だけでは生きていけないでしょうし、肉などはダンジョンにあるとして、野草で野菜関係は大丈夫かな? やっぱり穀物が足りないわね」


 「それはエルフィンが考えりゃいい事で、ワシらが考える事じゃねえな。それよりも聞きたい事はこれで終了だ、御苦労さん。ところで、お前さんは何処に行ってたんだ? 朝っぱらから居なくなってたみたいだが」


 「行ってたのは第8エリアだよ。レティーに血を飲ませるついでに、新エリアの魔物を解体所に持っていこうと思ってね。で………はい、コレ」


 「なんだこりゃ? ………暗い色の鉄? それとも銀か? 何だか黒っぽい色が入ってて綺麗な色じゃねえな」


 「第8エリアは第7エリアとは打って変わって、火山がある暑いエリアなんだよ。挙句に噴火してるのか、噴石が落ちてくる。頭上に注意しながら戦う必要があるっていう危険なエリアなんだけど……」


 「暑いエリアっていうのがイヤだけど、何かあったの?」


 「その噴石。つまり火山が噴火して飛んできた石の中に、その金属が含まれてたんだよ。で、それは今まで私が触った事のある金属とは違っていて、言うなれば未知の金属なの。今はまだその程度しか集められてない」


 「おいおい。って事は何か、こいつはエクスダート鋼以上の代物である可能性があんのか? そいつはちょっとシャレになんねえな」


 「だから解体師にすら見せてない。見せたら絶対に採ってこいって五月蝿いだろうしね」


 「だな。こんなもんが採れるとなったら、目の色を変えそうだ。唯でさえ解体用の刃物を含めて大変だとか言われとるんだ。こんな未知の物で解体道具を作るとなったらどれほど掛かるか分からん」


 「それなら、売ったウサギの歯を使うとか何とか言ってたよ。赤黒いウサギだったけど、その歯はワイバーンの皮を削るくらいだったしね。実際に盾に貼ってあるワイバーン皮の1枚目を削ってる訳で……ほら」


 「確かに削られてますね、これは。少なくともワイバーンを傷つけられる程度には強い歯ですか。十分以上に脅威じゃありませんか? 防具に使っているのも皮ですけど、盾ほどには重ねていない筈です」


 「鎧は動きやすさを考えて作ってるからね、皮を重ねてはいないよ。だから貫通して肉を抉ってくる可能性がある。だから気をつけて戦ってほしい。まあ、回避の練習だと思えばいいよ」


 「言いたい事は分かるけど、失敗したら肉が削られるじゃない。絶対に御免だし、回避を優先させてもらうわ」


 「私もです。戦わないとは言いませんが、回避を優先しないと危険すぎます。そもそもウサギって素早いですし」


 「まあ、そうだな。大きさにもよるが、大きくても足は速いというのが多い。ウサギ系の魔物の特徴だ」


 「大きさはビッグラビットと同じくらいで、近付くと逃げる。しかし一度でも攻撃を受けたら、しつこく追い掛け回してくるよ。そして歯で噛み付いてくる」


 「そりゃまた面倒臭そうなウサギだ」



 ラーディオンの他人事のような声を最後に、ミク達は執務室を出て宿へと戻る。どうもラーディオンからの使いが<妖精の洞>に来て起こされたようだ。来たのは受付嬢だったが、場所が場所なだけにビビっていたらしい。


 スラムの近くなので仕方ないのだが、慣れれば怖い所……かと思い直したミク。久しぶりにスラムの掃除をするかと思うも、今は食堂に行こうと横道に逸れる思考を止めるのだった。


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