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0037・西の盗賊団




 ミクにとっては、他者を見下す気に入らないエルフをぶちのめしてやったというくらいである。ただ、それでも少々スッキリしているのは、盗賊の頭がどちらかというと愚直な軍人風だったからだろう。


 洞窟前の死体を全て転送したら、美女の姿に戻り服を着る。その後、アイテムバッグとレティーを転送したら洞窟の中へと入り、麻痺している者達を殺害してレティーに血と脳を喰わせてから転送。


 中の物資も転送していき、血の一滴までレティーが掃除したら洞窟を出る。血の臭いを嗅ぎつけたのかゴブリンが寄ってきたので、ウィリウム鋼の槍で突き刺した。


 やはり三角錐型の威力は高く、傷口の広がり方も大きい。血を噴き出しながら苦しむゴブリンを観察しつつ、硬い敵でなければ優秀な武器だと確認したミクであった。尚、ゴブリンの血は乾涸びるまでレティーが吸い上げた。


 全てを終わらせたミクは荷物とレティーを転送し、再び鳥の姿になると最後の西方面に行く。先ほどの盗賊団とエルフどもの死体は全て喰らったので、ギルドに提出しない。



 (それにしても、何故あいつらは争ってたんだろう……。エルフどもが来たのは、ブラウンエルフの盗賊団が居たという報告があったから? それで……ああ、見下しから潰す事に決めたと)



 どうもあの高慢なエルフの裏には、そういうエルフの貴族がついているらしい。エルフの国の一部らしいが、それでも森を出たブラウンエルフに対する見下しや差別感情があるとレティーは言う。


 その者どもは、そもそもエルフこそがこの世を統べるべきという、いわゆる選民思想のようなものを持っているようだ。神どもが嫌うゴミの一つかとミクは理解した。


 そういう輩は無条件に喰っていいのだから、ミクからすれば非常に分かりやすい連中である。エルフの国の選民思想は喰っていい、それだけを肉塊は強く覚えておく事にした。


 西へと飛び、盗賊の居場所はどこかと探していると、結構な数の反応がある場所を見つけた。どうも100人単位で居そうである。ここも洞窟ではあるものの、どちらかというと人口的にくり抜いたように見える。


 そんな洞窟前には歩哨が立っていた。あからさまで分かりやすいが、歩哨は一言も発さず立っているので情報は得られそうもない。


 仕方なく洞窟の上に飛び、そこで蜘蛛の姿になって洞窟内へと侵入。南と同じく天井を歩いて移動し、中をくまなく調べていく。


 一本の道の左右に小部屋があり、そこに5~7人程が寝泊りしているようだ。メインの道がカーブしている状態が続き、最奥には3人の男が居るが、何やら顔を突き合わせて話している。



 「ゴールダームのスラムに侵入している奴等からの定期報告が来ない。それと同時にゴールダームの空堀が崩れ、地下道が発見されたようだ。……どう思う?」


 「侵入路が見つかっただ、アタッ!!」


 「そんな事は誰だって分かっとる。裏をどう思うかという事だ。我らの所業を理解しておるぞというアピールか、それとも地下道を持っておった奴等が攻められただけか」


 「でも定期報告は無いんだろ? ならこっちをターゲットにした事じゃないのかよ」


 「そうとも言い切れん。侵入した奴等は殺されたかもしれんが、奴等は危険な薬の実験をしていた。逆恨みから殺された可能性も否定できん。つまり空堀が崩れたのと、奴等が死んだのは別かもしれんのだ」


 「だったら調べるしかねーんじゃねえの? 正面から堂々と行けば済むだろうに。ゴールダームに行く探索者なんて腐るほど居るんだ。成り済ませば簡単に入れるだろ」


 「だったらお前が行くか? あそこの国の兵士とてバカではない。泳がしておる可能性もあるし、ある程度の者が来たとなれば出張ってくるぞ」


 「何でオレが行かなきゃなんないんだよ。そういう仕事は下っ端のやる事だろ。それじゃあ、何の為に必死こいて上に上がったか分からなくなるぜ」


 「世の中そんなもんだ。まあ、行かせるならカバーストーリーのしっかりした奴を派遣するがな。お前じゃ、あっさりバレる。そんな奴を行かせたりなどする訳が無い」


 「それはともかくとして、調査の人員の選定を頼む。なるべく疑われ難い奴をな。そちらを優先し、無理をしない慎重な奴にしてくれ。他国だからと侮るような奴は選ぶな」


 「そんな奴はここに居ない……って言いたいんだけど、他国というだけで下に見るバカはウチにも居るからなぁ……」


 「ともかく、そんなマヌケは選びませんので安心を。さて、選ぶ必要があるのだから、お前も手伝え。どうせ暇だろう」


 「洞窟の中じゃ何もする事がないからな。魔物狩りぐらいには行きたいもんだ」


 「昨日行っとるだろうが、今日は他の奴等の番だ」



 そう言って軽い男と年を取った男は出て行った。この盗賊団のリーダーらしき男は腕を組んでジッと考え込んでいるが、そのうち答えが出たのか紙を取り出し書き始める。


 そんな書き物の内容など気にせず、ミクは部屋の中を見回り、何処からか風が流れている事を発見した。リーダーの男に見つからずに調べていると、どうやらこの部屋の隅から流れている事が分かる。


 ミクがその壁を調べてみると、どうも土を盛っただけだという事が分かった。おそらく有事の際には崩して逃げるのだろう。つまり、この裏には隠し通路があるという事だ。



 (今、無理に隠し通路を調べる必要は無いね。こいつらはカムラ帝国の奴等だろうし。問題は隠し通路がある以上、逃げられてしまう事。だから正面からは攻められない)



 敵に逃げられずに全滅させる方法を考えるミク。しかし早々上手い方法など見つからず、仕方なくレッドアイスネークの麻痺毒を散布する事を始める。


 すると効果は覿面で、リーダーの男は完全に麻痺してしまい床に倒れた。ミクはすぐに男を転送、部屋の中の物も片っ端から肉で覆い本体空間へ飛ばす。


 終わったら部屋を出て移動し、それぞれの部屋で散布しては麻痺した者と物資を転送していく。ここの盗賊団も壊滅すれば、多少はゴールダームも楽になるだろう。


 もちろんミクにとってはゴールダームの事はどうでもよく、肉が喰えれば何でもいい訳なのだが。


 部屋の中に麻痺毒を散布しつつ転送を繰り返していると、ついに気付かれたのか動きが慌ただしくなってきた。原因は……。



 (レッドアイスネークの麻痺毒が流れた所為で、他の部屋の奴まで軽度の麻痺になったか。まさかそんな事で発覚するなんてね)



 ある意味で当然と言えるが、ミクが散布しすぎた事が原因である。自業自得な部分はあるが、今はどうこうと言っていられない。メインの道にも麻痺毒を散布するが、ここでついに毒が切れてしまう。


 流石にミク自身が毒を精製できる訳ではないので、これ以外の毒はブラックスパイダーの出血毒しかない。あれでは動きを止められないので意味がなく、毒を使った攻撃はここで終わりだ。


 敵を逃がさない為には……考えても結論が出ないミクは、仕方なく洞窟を出ると森に行く。そしてオークの姿になると殴り込みをかけるのだった。


 身長2メートル程で脂肪により腹は出ているが、それ以外の全身は筋肉の塊。猪と猿を合わせたような顔をし、口の中には大量の牙が生えている。そんなオークになったミクは、早速とばかりに洞窟に向かって走る。


 もともとオークの身体能力は高く、人間種の探索者では苦戦が必死な魔物である。特に閉所だと格段に対処が難しく、噛みつかれれば鉄の鎧でさえ喰い破られる程なのだ。


 何処かの星ではザコキャラ扱いされるオークだが、現実においてはそんなに甘い相手ではない。


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