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0404・エルフィンでの話と次の日




 「言葉は悪いけども、歴史的な汚点として今の王は残るでしょう。さっきも言ったけど、国の英雄が寿命で亡くなるならまだしも暗殺されたんだからね。流石に民は語り継ぐわ、どれだけ記録を抹消しても消せない物はあるのよ」


 「そして後世には本となって残ってるでしょうね。今ある歴史書だって、元々は口伝だったなんてよくある事よ。どれだけ緘口令を敷いても、どれだけ焚書しても消せない物というのはあるし、残り続ける物はある」


 「フィグレイオ最悪の王と呼ばれるかもしれないし、愚王の中の愚王と呼ばれるかも。とはいえ、やった事が大き過ぎるのよ。国を守り抜いてきた人物の暗殺だからね。罪を犯しての処刑とかじゃなくて暗殺なのよ」


 「最悪なうえに取り返しがつかない。2度と元には戻らない事を仕出かしてしまった。まあ、殺された本人でさえここまでになるとは思ってなかったようだけど……」



 カルティクがそう言いながらシャルを見ると、シャルは顔を横に背けた。政治的な争いも多く、そんな事に終始してきた結果、自分の人気などというものの実態を知らなさ過ぎたのだ。そしてそれはフィグレイオの貴族も同様だった。


 実際にシャルが暗殺されると、それが国家を割りかねない程の事だと知ったのだ。フィグレイオ獣王国は、ある意味でシャルが居たからこそ皆が安全だと思っていた。その安全だと思える根拠が失われてしまった。この影響が思っている以上に大きい。



 「つまり商人などの動きも相当小さくなってるし、買い控えなども起きてるのよ。いつおかしな命が下るか分からない。もちろん今の王にそんな事をするつもりは無いでしょうけど、国民が王を信用できなくなっているの」


 「思っているよりも深刻な事態ですわね。とはいえ暗殺という事柄が、特に最悪にしているのですが……。ここから復調するのは相当に骨が折れると思います。何と言っても国防の要を失っているのですから」


 「同じ事が出来るというか、同じになれる者は誰もいないね。皆の心の拠り所だった可能性すらあるんでしょ? それが失われたんだから、そう簡単に次の者なんて無理よ。むしろ、これから先は誰も出てこない恐れすらあるんだし」


 「様々な事があっての<雪原の餓狼>だもんねえ。本人にもう一度最初からやれって言っても無理でしょ。同じになるのは無理だって断言できるよ」


 「最後はシャルの話に逸れたけど、エルフィンでやってきた事はこれで終わりね。セリオも完全に寝ちゃってるし、そろそろ私は部屋に戻るよ」


 「そんな時間かー。わたしも何だか眠いし、そろそろ部屋に戻って寝ようっと」


 「なんだか意識すると眠たくなってきましたね。仮眠しても眠たかったのですから、お喋りが終わったら一気に来た感じです」


 「あー、あるある。興奮してる時は眠気を忘れるんだけど、少しでも冷静になると急激に来るのよねえ」


 「あっ! そうだ、忘れてた! ………これ。箱型の魔道具の中に入ってたんだけど、どうやらこれが自称ドラゴンの爪の短剣らしいよ。何の角で作ってるのか知らないけど、おそろしくもろくてビックリする」


 「………本当、何で出来てるんだろ? ビックリするほど切れない。確かにミクの言う通り、何かの角っぽいわね。はい」


 「うーん。何と言いますか、偽物だから魔道具の中に隠したのでしょうか? そう思えるぐらいに酷いですね。魔力の通りも驚くほど悪いですし、これがドラゴンの爪だとはとても思えません」


 「……確かに酷いわねえ。何かの角か、それとも骨か。そんなところでしょうけど、これは無いわ。ここまで酷いものだと、殆ど抜かないのは当然でしょ。それっぽいのをでっち上げただけじゃないの」


 「本当ね。コレは酷いし、見た目だけでしかない。儀式用の物だって、もっとしっかり作るわよ。もしかしてエルフにはこの程度の技術力しかなかった? ドルムやジャンダルコなら色々作ってるけど、エルフィンでは聞いた事も無いもの」


 「弓は優秀だったから木工の技術はあるんじゃないかい? ただし製鉄技術や鍛冶技術があるとは聞いた事がないよ。つまりは、そんなものなんだろうねえ」


 「ま、とりあえず話は終わり。部屋に帰って休みましょ。明日もゆっくりするといいわ」



 イリュの一言で解散となり、ミク達は3人部屋に戻って寝る事にした。部屋に戻った2人の服を脱がして綺麗にした後、部屋の中も綺麗にしてベッドに寝かせる。


 久しぶりにスッキリ綺麗に出来たなと思いつつ、狐の毛皮を敷いてレティーとセリオを寝かせる。ミクも寝転がり、瞑想の練習をしようと目を閉じかけた時、セリオが足を動かした。


 寝言っぽいものが聞こえるので、おそらくは走り回る夢でも見ているのだろう。ミクはそっとしておき、瞑想の練習を始めるのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。日の出の時刻はとっくに過ぎているが、2人が起きないのでミクも起きる気はなかった。そのままダラダラと時間を潰しているとセリオが起きたので、五月蝿くしないように言って部屋全体に【浄滅】を使う。


 そして冷房の魔道具に魔石を追加しておいてから、出来るだけ音をさせずに部屋を出て行き、そのまま食堂へ。朝食を頼み大銅貨6枚を支払うと、席に座って適当に待つ。セリオはジッとしながら大人しく待っている。


 いつもならジャレついてくるというか遊ぼうとする筈なのだが、今日の気分はマッタリらしい。朝食が運ばれてきたので食事にし、ミクは<妖精の洞>を出てダンジョンへ。


 第8エリアの魔法陣の上に立つと、周囲からどよめきが起きた。最近はエルフィンの戦争に行っていたので、騒がれるのを忘れてたなと思いつつ転移。第8エリアへと到着したら早速進む。


 特に攻略などは考えておらず、ここの魔物を倒してレティーの血を補給しようと思って来ただけだったりする。


 前に調べた通り、赤黒いウサギと赤黒い猪に上空には赤黒い鳥が飛んでいる。



 『わー……何だか暑そうな場所だね。それに石が飛んでくるし……あの猪こっちに気付いたんじゃないかな?』



 右斜め前の遠くには確かに赤黒い猪が居たのだが、どうやらこちらを発見したらしく突撃してきた。大きさは体高が3メートルほどだが赤黒い毛に覆われており、なかなかに強そうな風貌をしている。


 さて、どんなものかな? とミクが動き出そうとすると、それよりも早くセリオは大きくなり駆けて行った。どうやら正面から当たりに行くらしい。最悪は死んでもすぐに蘇生させるから大丈夫であり、だからこそ暢気のんきに見ているミク。


 すると猪はセリオに向かって【火球】の魔法を飛ばしてきた。しかしそんなものはお構いなしに突撃するセリオ。ぶつかっても気にせずそのまま突進し



 『どーん!!』


 「ブギュッ!?!!?!」



 頭から両者が突っ込んだものの、勝ったのはセリオであり、赤黒い猪は撥ね飛ばされた。流石に重いからか上空まで高く上がらなかったものの、正面衝突で頭蓋が陥没しているので、間違いなく即死だったろう。


 頭の中身がグチャグチャではあるものの、ミクは首を切り、そこからレティーに血を飲ませる。



 『この猪の血は栄養価が高いです! なかなかに美味しい物だと言えるでしょう。亀の血と同じかそれ以上ですよ!』



 レティーが大きく褒めるほど栄養価が高いらしい。これから潜る事になる場所なので良かったと思うが、第8エリアの猪と第6エリアの亀が変わらないというのもどうなのかと思うミク。


 仕方がないのであろうが、ここに来るのも結構大変なのだ。もちろん優秀な部分は沢山あるのだろうが、血の栄養価という一点で見れば然して変わらないという事実。


 なんだかなぁと思いつつ、レティーの血抜き作業を見守るミクであった。


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