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0403・エルフィンでの話 その4




 「その<射出機>を小型化して、肩に担いで使えるようにしたのが<バズーカ>。中に入れた物を高速で射出できるようにしてあるんだけど、オリジナルと違って魔石で使える機構は外してある。だから誰でも使える訳じゃないよ」


 「何かを射出するっていう時点で結構危ないんだから、誰でも使えるのはマズいでしょ」


 「そうだね。だから小型化したけど、その分だけ出力も上げてある。だから魔力の消費量は結構多いんだよ。これは意図的にそうしてあって、誰かに奪われても使えないようにしてある。正確には、効果の割に魔力消費量が多いって感じだね」


 「魔力が多くある奴は使えるけど、そうでもなきゃ使わない方が良いって感じかい。そこの説明は受けてなかったけど、あたし達には使えるんだろう?」


 「一応そういう設計にはしてあるけど、消費量が多いから魔力を鍛える練習にはなるかな? 中に適当な物を入れて、構えて魔力を流せば飛ぶよ。ただし真っ直ぐ飛んでいくから、前に味方が居ると危なくて使えないけどね」


 「ミクには味方に当たったら死ぬって言われたわよ。物凄く使いたくなかったけど、わたし達が使った御蔭で敵は撤退したって言えるかな? 目の前で頭が爆散したら、そりゃ恐怖から逃げるよねえ」


 「「………」」



 流石に威力を聞いて唖然とするイリュとカルティク。目の前で頭が弾け飛ぶともなれば、歴戦の兵でもなかなか大変な光景である。それが一般人ともなれば、耐えて戦うなど不可能であろう。



 「逃げ出すのは当たり前の事さ。あたし達でもいきなりそんな事になったら、思考停止する恐れがある。それが一般人ってなったら、どう考えても冷静じゃ居られないよ」


 「ミクは敢えてやらせてたけどね。見下していた相手が、簡単に自分達の頭を爆散させるような連中だった。怒らせればそういう目に遭わされると知って、今まで通り見下せるのか? って」


 「恐怖は逃げ帰った者達の口から広まるでしょう。連合に負けて王都が制圧されたのです。今までのような妄想にすがりつく事は難しくなりましたし、多少の者達の目は覚めるでしょう」


 「覚めたところで生き方が直るとは限ってないけどね。それでも奴等の根拠の無い妄想にひびを入れるくらいは出来たと思う。相手を見下していたら逆襲されるぞってさ」


 「今までは何だかんだと言って、いちいち攻める者も居なかったし、防衛に徹されると崩せなかったからねえ。だからこそ調子に乗ってた訳だし、だからこそ妄想に沈んでたんだろう。今はそこに冷水をブッ掛けたところさ」


 「いい気味ねえ。自分達の立場が、思っていた以上に磐石ではなかったと理解できたかしらね?」


 「それは多分だけど1年ぐらい経ってみなければ分からないと思うわ。その結果どれぐらい変わってるか、または変わらなかったかが分かるでしょ。私自身は変わらないとは思うけどね」


 「結局、妄想しかすがるものが無いのでしょう。だからこそ、また妄想にすがって沈む。確かにあり得そうと言いますか、可能性としては一番高そうですね」



 そう言いつつ、ほろ酔いのまま飲み進めて行く5人。意外にもそこまでガバガバ飲んではいない。



 「私達が一番後ろから進んで行き、前の敵兵を蹴散らして行ったの。それまではエルフの兵と拮抗状態だったんだけど、そのバランスが崩れた感じだったね」


 「その後は敵を倒して終わりじゃなく、ミクがまたもや森の中を逃走している奴等を見つけて襲いに行ったんだけど……。帰ってくるのに時間が掛かってたのよねー」


 「そうでしたね。戻ってこられてから、すぐにガルドクス将軍と幹部を集めるように言われまして、シャルティア殿がすぐに動いていました」


 「うん、何ていうか同じパターンなのが分かるわね。どう考えても第3王子の時と一緒でしょうよ。わざわざ聞かなくても分かるぐらいに同じ事しかないのねえ。とはいえ森の中を逃げるのが一番見つかり難いとは思うけど」


 「それでも見つかるのよねー。そして殺されたと」


 「ただ殺されただけじゃなくて、王太子も含めた王族皆殺しだけどね」


 「あーあー、王都から逃亡って事? となると小国家群と神聖キルス法国の連合に制圧されたのね。……うん? 挟み撃ちにされたタイミングで? ……つまり王都防衛の兵を出したって事じゃない」


 「何てバカバカしい事をするのか、もしくは連合の方は王都から兵が居なくなるのを待ってた? 偶然かもしれないけど、妙にタイミングが良いわね」


 「その結果、こちらがエルフィンの王族を全滅させる事になり、更には王族の持っていた金品も得る事になりましたね。宝物庫は殆ど空だったそうですよ?」


 「あらら。東の連合はある意味で踏んだり蹴ったりねえ。東の連中が攻めるっていう情報が流れてたんだし、主力はおそらく東に行ったでしょう。連合を組んでたって事は、結構な戦力があったのだろうしね」


 「犠牲を出しながらも敵を蹴散らして、苦労の末に王都を制圧したらもぬけの殻なんだもの、どうしていいか分からないんじゃない? だって、宝物庫の中身って大半はミクが得たんでしょ?」


 「ミクは金銭とか宝石とか要らないって言って渡してたわよ。魔道具だけ欲しいって言ってたけど、その魔道具も最後は全部渡してたし」


 「渡すでしょ。全て複製は終わってるんだし、オリジナルを絶対に持っていなければいけない訳じゃないしさ。だったら要らない物は全部渡すし、私達が持っていない方が都合が良い。面倒な事は向こうに丸投げ出来るから」


 「まあ、それはそうだけどね。わたし達は門を破ったりとか色々したし、シャルは相談役という立場で色々したもんね。正規の形で高額報酬が貰えるとは思う。そっちの方が良いと言えば、確かにそうかもしれない」


 「周囲にバレるような大金なんて、持っててもバカが狙ってくるだけだよ。それなら向こうに渡して正規のルートで貰った方がマシさ。それに魔道具はミクが全部複製してるんだし」


 「その後は王都に近付いたけど、東の連合が制圧してて近寄れたくらいだったかな。で、次の日には反転して帰ったよ。東の連中と揉めても仕方ないし、宝物庫の中身の大半はこっちが持ってるし」


 「建前だけ整えてさっさと逃亡するべきよね。長く居座れば居座るほどバレそうだし、無駄に食料も減るだけだもの。それにフィグレイオは多分だけど領土は必要としてないでしょ。唯でさえ国内が揉めてるのに」


 「揉めてるって……何かあったの?」


 「未だに<雪原の餓狼>が暗殺された事に納得してないのが沢山居るって事よ。近衛騎士団長も自ら辞任したそうだし、シャルと直接戦った近衛は全員辞めたらしいわ」


 「なんだいそりゃ。私は軍の者で近衛とはそこまで仲良くやってなかったんだけどねえ。直接教えたのも近衛騎士団長ぐらいさ。近衛と軍は仲が良くないからねえ」


 「近衛として軍と相対する事と、<雪原の餓狼>と呼ばれる女将軍とでは違うんでしょうね。貴女も祖国の英雄だった事を忘れてるんじゃない? 国民の人気も然る事ながら、近衛や軍にも様々に信奉者が居るって事を」


 「国の英雄なら憧れる者も多いでしょうし、その者達が軍や近衛に入ってくる訳ですから……」


 「つまり近衛や軍と、個人は別って事でしょ。近衛であっても英雄個人は英雄なんでしょうね。その感情にかまけて職務をないがしろにする訳にはいかないし、そういう事じゃないの」


 「あー……もしかして、あたしが思っているよりは好かれてたって事かい?」


 「だから今でも言われ続けてるのよ。何故国の英雄を暗殺した? とね」



 やり方が最悪だったのは間違いない。かつての宰相が何を思ってやったのかは分からないが、国が割れかねない最悪の出来事だったと言えるだろう。関係者の誰も得をしていない出来事である。



 「あたしは不老になったし自由にもなった。ある意味で、あたしだけ得をしてるね?」


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