0400・エルフィンでの話
若干ながら女性店員の態度に納得がいっていないティアは横に置いておき、ミク達は昼食を食べていく。今までと変わらない味に安心しつつも食べ進め、終わったら再びいつもの部屋へ。
シャルは宿のカウンターに居る女の子にお金を払い、1人部屋を一ヶ月とっていた。ミク達は小金貨を渡してあるので気にする必要は無く、そのままいつもの3人部屋へと行き仮眠をとる。
流石に外で寝ている事が大半だったとはいえ、狐の毛皮のおかげで快眠はとれていた。なのでそこまで体が大変な訳ではないのだが、それでも疲れは溜まっていたのであろう、狐の毛皮を敷く事もなく寝た2人。
ミクは複製した魔道具を調べつつ、何かアレンジ出来ないかと考える。今は昼過ぎだし瞑想の練習をする時間でもない。なので考え事をしていても構わない時間であり、起きて過ごすのも普通であろう。
冷房の魔道具はセットして起動してあるが、まだ起動して間が無い為、涼しいとはとても言えない。季節的には完全に夏になっているので、眠る際には起動しておいた方が良いだろう。
◆◆◆
「うん……んーーー! ………はぁ。起きたけど、まだ眠たい感じが取れないわね。あんまり長い時間を寝てないからかしら。今日は早く寝て体調を戻さないといけないかな?」
「………はぁ。背伸びをしてもスッキリという感じではありませんね。今まで毛皮を敷いていたとはいえ外で寝ていましたから、こう、体の隅々に疲れが残ってる感じです」
「それに関しては精神的なものもあるから、落ち着くまでは仕方ないと思うよ。とりあえず夕食に行こうか。ダラダラするのは食堂でも出来るし」
「部屋の方が涼しいんだけど、仕方ないかー」
「本当に涼しいですよね。夏はコレがないと生きていけないかもしれません」
「大袈裟ねーって言いたいけど、気持ちは痛いほど分かる。何と言うか、目覚めた時が違うのよね。暑い中で寝るって明らかに疲れるんだと分かるわ」
ダラダラと話しつつも準備を整え、夕食を食べに食堂へと移動。大銅貨12枚を支払って夕食を注文し、席に座ったら適当に雑談をする。そうしていると眠たそうなシャルが来て夕食を注文した後、ミク達の隣の席に座った。
そして4人で会話をしようとすると、イリュとカルティクも戻ってきたようだ。すぐに食堂に来て注文をしているのだが、相変わらず注文はカルティクに任せるイリュ。シャルの対面に座り、早速話し掛けてきた。
「おかえりー。意外と言ったらなんだけど、早かったわね。思っていたよりは早く帰ってきたから、ちょっと驚いてるわ」
「ただいまだけど、ミクが居るんだから止まる筈ないだろ? 町攻めだって1日で終わると言うか、半日掛かってないよ。門をブッ壊したらそれで終わりだろう? それよりさ、あの店員えらくご機嫌だね?」
「ああ。何でもアルトムをシェアする事になったらしいわね。どうなるかは本人に任せてたんだけど、その所為で3日ほど悩んでたわ。まあ、私達は諦めろと言っておいたけど」
「諦めろ……ですか?」
その時、カルティクがやってきてイリュの頭を小突く。
「痛いわね。何を考えているのかは分かるけど、ティアは不老なんだから意味は無いでしょうに。教えたところで王族が出てきたりしないわよ。何しろ子供が出来ないんだからね」
「それはそうでしょうけどね。だからといって堂々と言うのはどうなのよ?」
「別に問題ないわ。それよりアルトムだけど、当初は女性の相手だけしてたのよ。でも首を傾げてる事があってね、それに気付いた奴が男女両方で突撃したらしいわ。結果としてアルトム本人が愕然としたって事よ」
「まあ、愕然と言っても男女両方の相手が問題なく出来たってくらいだけどね。それで本人が3日ほど悩んでたわけ。でもねー、眷属にされてたとはいえ慣れてるのは間違いないんだから、そこから逃げるのは無理なのよ」
「あれよ、体が覚えてるってヤツ。ついでにそれを拒めない自分が居て悩んでたわけ。結果として吹っ切って、今は普通に相手をしているわ。従業員達のやる気も上がったし、万々歳ってトコかしら」
「………無理矢理にそう持って行ったんじゃないだろうね? イリュならそれぐらい造作もなくやるだろう?」
「流石にそこまではしないわ。【記憶】と【計算】持ちだから、そもそも裏方として支えてくれるだけで十分なのよ。何たって不老のデュアルなんだから」
「本人が悩んでたとしても、最終的にお尻で受け入れたのなら良いんじゃない?」
「お尻の事を、でしょ。お尻”で”受け入れるって直接的すぎるでしょうが」
「相変わらず硬いわねー。もっと柔らかくて良いと思うわよ? 聞いてるティアだって気にしてないでしょうに」
「特にどうもこうも無い話ですよ。だって貴族の方が余程………ですから」
「「「「あー……」」」」
ミクはいちいち話に混ざらないが、どうにもこういう話が好きらしく、その後も多少続いた。その間に夕食が運ばれてきたので食事にし、ようやくイリュが本題に入る。
「アルトムの事で話が横に逸れたけど、エルフィンの方はどんな感じだったの? 何だかんだと言って、ミクが居るんだから活躍が無いって事はないでしょ」
「最初から話すと、まずはエルフィンとの国境の縁に沿って移動していったわ。そこからエルフィンに進入したら、私達がエルフィンを侵略した事になるからね。あくまでもわたし達はフィグレイオに雇われてる立場だから」
「まあ、それはそうね。貴女達だけで入って行ったら侵略行為と見做される可能性がある。それは確かよ。で?」
「エルフィンとの国境の縁を進んで行って、フィグレイオに入ったわ。で、おそらくこの辺りから侵略していっただろうって所から、エルフィン国内へと入って行った。流石にもうフィグレイオは攻めてるだろうって思ってたから直接」
「合流を目指さなきゃいけないし、フィグレイオ軍がエルフィンに入ってるなら追いかけるしかないものね」
「そう。で、追いかけて行ったら、予想通りにフィグレイオ軍が居たわ。そこでシャルの玄孫に再会したみたい。ミクは知ってたから、前に会った事があるんだろうね」
「あたしがミクと知り合うキッカケはゴールダームに来た事だ。そしてその時にアリストラも居たんだよ。その後でフィグレイオに来てもらう際に、アリストラはミクの本性を知ったのさ」
「へー。まあ、そのアリストラよりも、ガルドクス将軍にあっさりバラしたシャルの方が問題だけどね。どう考えてもワザとだけど」
「まあね。とはいえガルドクスは、あたし以外の3将軍の中で一番頭が柔らかいのさ。だからバラすならガルドクスだ、他の2人だと面倒な事にしかならない。1人は疑う事をしつこくやる奴で、もう1人は相当の堅物なんだよ」
「あらら……その2人と比べたら、そのガルドクス? というヤツしか駄目ね。今回はその一番マシなヤツが来てたからバラしたって訳か」
「まあ、だからといって、あたしが今のフィグレイオに何かする気なんて無いんだけどね。もちろん、してやる気も無いよ」
「暗殺ですからね。流石にそこまでされれば愛想も尽きるでしょう。忠義を尽くした家臣を捨てた国でもある訳ですし」
「なんだよねえ……。色々あったにせよ、忠義を仇で返すってのは駄目すぎる。その点でも歴代の王の中には愚王が多いんだよ。側近の讒言に気付かないのも愚王の証さ」
これからのフィグレイオはどうなっちまうのかねえ? と他人事のように考えているシャルであった。




