0397・雑談の終了と深夜の発見
「………はぁ。私ではどちらが良かったのかの判断がつきませんね。確かに小国家群が善政を敷けば、その後は大変でしょう。相当の抵抗が予想されますし、素直に従う事も無い。エルフなど自分達が最高だと思っており、むしろ他の種族が従うべきだとしか考えていない」
「何処の国がやっても無駄なんだよね。エルフィンのエルフは同じエルフにしか従わない。一番手っ取り早いのは皆殺しだよ、そうすれば終わる。後は自分の所の国民を入植させればいい」
「怖い事を言いますね?」
「そう? 永遠に妄想に塗れた奴等なんてどうにもならないよ。それをどうにかするなんて無駄。皆殺しにして、そんな奴等は居なかったとすればいい。そうしない限り、奴等は永遠に残る。そのうえ他のエルフを洗脳しかねない。ああいうのは現状に不満があると洗脳されやすいからね」
「現状に不満なんて誰にでもあるでしょ。………つまり洗脳されやすいエルフが結構居るって事?」
「そういう事。現状に不満がある、上手くいっていない。そういうヤツほど、自分より下を求めるんだよ。自分より下が居るとして、見下して悦に入る。自分は何一つ良くなっていないのに他人を見下して満足し、今の苦しい状態を受け入れてしまう。1つの統治方法ではあるんだよ」
「つまり、意図的に見下されて差別される者達を用意していたと?」
「それを<狂乱王>が思いついたのか、それとも側近が思いついたのかは知らないけどね」
ただし、「あの<狂乱王>なら喜んで許可を出したろうけどね」。ミクは内心そう考えているが、これは<ノーライフキング>になった<狂乱王>に会った事があるからである。アンデッドになって狂っていたとはいえ、見下しの酷いヤツであった。
昼食が終わっても雑談を続けていたが、流石にイェルシュは神聖キルス法国の軍に呼ばれたので去り、残ったミク達はゆっくりしている。
「ミク達に聞きたいんだけど、さっき言ってた王族が居ないっていうの。あれって、もしかして……」
「まあ、そういう事よ。あまり言うと意識してしまうから、フィグレイオ軍の上層部しか知らないけど、ミクが見つけてね……」
「やっぱり。そうじゃないかと思った」
「まあ、順当に考えれば答えは簡単に分かるよね。それで、どれぐらい殺ったんだい? ……もしかして王族全部?」
「最初は第3王子。こいつが第3の町の戦いの最中に逃げてたから、私が気付いて始末した。その後は挟撃の後に森を移動しているのを発見、強襲したら第2王女だった。それを殺した後、更に来た連中が居てね」
「ミク殿が言うには。その後は一気に王太子と王族全員が来たようですね。まあ、皆殺しにされましたが。……そういえばドラゴンの爪の短剣はどうだったのですか?」
「それがねー、無いんだよ。何処にも無い。だからイェルシュに聞いたんだけど、まさか向こうも知らないとはね。誰かが盗んだか、最初からそんな物は無かったか。おそらくどちらかだと思う」
「最初から無かったなんて事があるの?」
「最初からでっち上げであった可能性があるって事。それっぽい装飾の鞘を用意すればいいだけでしょ。宝物だから抜いたりしないとか、もしくは爪っぽい偽物を作らせればいい。どうせドラゴンの爪の本物なんて知られてないんだし」
「まあ、そうだけどね。それにしても宝物とされていたドラゴンの爪の短剣が、実際には存在しないか、またはその都度作られていた程度の物だったなんて」
「鞘は劣化し辛い素材で作られてたんだろうね。宝石とか金とか。だったら長く保つし、後は中の爪っぽいのを作るだけで済むから。言葉は悪いけど、ドラゴンの爪の短剣はそんな物だと思う」
「流石にずっと保存されていたなら、おそらく600年は超える筈だし、そうなると完全に崩れ去ってるでしょうね。仮にドラゴンの爪は1000年経っても劣化しないって言うなら、どこかで使われた噂が出るかも」
「そこまでの切れ味はするでしょうからね、本物なら。とはいえ王太子や他の王族が持ってないって事は、ミクの言う通り盗まれたのか無かったのか、そのどちらかしかないでしょ」
「でしょうね。そもそもドラゴンの爪の短剣って部分で怪しいのに、王太子が持ち出そうとしない時点で……ねえ」
「その時には既に無かった可能性もありますが、流石に王太子が持っていないというのは迂闊過ぎますね。王太子なら………王冠は? 王の証明は王冠の筈よ」
「王冠なら宝石を取り外してフィグレイオに渡したけど? 王冠の残骸なら私が持ってるけど、そもそも本体空間にあるからこっちには無いよ。だから何処を探しても見つからない」
「ミクの本体が居る本体空間は、この星とは全く違うもの。この星全体を探したとしても見つからないでしょうよ」
「「「「………」」」」
「それはともかくとして、後は戻るだけですね。その際にも襲ってくる可能性はありますが……」
「それはそれで蹴散らせば済むでしょ。残党が残ってたとしても東でしょうし、西のわたし達にはそこまで多く襲っては来ない筈よ。数が少なければ2000の兵でどうにでも出来るでしょ」
「そうでしょうね。むしろフィグレイオは出来るだけ早く離脱するでしょ。ここに居たって無駄に食料を消費するだけだし、東の連中が王都に入れてくれるとは思えないしね」
「むしろその発言を引き出してから帰るんじゃない? ミクの御蔭で手に入った物は多いし、王族は全て始末されてる。東の連中は知らないけど、そっちに教えてやる義理なんて無いしね」
「そうだね。それにしても、ようやく戦争も終わりかー。疲れたし焦った事もあったけど、何とか生き延びる事ができたよ」
「まだまだ。ゴールダームに戻るまでは気を抜いちゃ駄目さ。どこで奇襲してくるか分からないし、気を抜くと殺されかねないよ。安全な所までは気を抜くべきじゃない」
既に暗くなっている中でまだ話しているが、そろそろ眠たくなったきたのか、<鮮烈の色>は毛布を敷き始めた。それを見てアレッサとティアも毛皮を敷き、ミクもセリオとレティーの為に毛皮を敷く。
その後はミクが起きて不寝番をし、残りはさっさと寝たようだ。ミクは瞑想の練習をしつつ、王太子などが持っていた魔道具を複製し始めた。
なかなか数が多く、出来得る限り素早く複製していく。とはいえ同じ物もそれなりに多く、複製を1つ作っておくだけで十分である。特に<射出機>のように色々とアレンジして楽しめそうな物は、今のところ見当たらない。
そうやって複製しつつ時間を潰していたのだが、深夜、箱型の魔道具を弄っていた際に蓋が開いてしまう。それ自体は蓋が開いただけなのだが、中から短剣が出てきたのだ。
それは金色に輝く鞘で、宝石が散りばめられていた。この事から考えて、間違いなくドラゴンの爪の短剣であろう。本体は取り出して抜いてみたのだが、その剣身を見てガッカリする。
『やっぱり偽物だったか。それっぽい質感に作ってあるが、これは何かの角か? それにしても切れ味の悪い事だ。流石にドラゴンの爪でこの切れ味は無いだろう、ありえんと言っていい』
ワイバーンの皮すら切れない物が、ドラゴンの爪である筈が無い。そんな事は天地が引っ繰り返ってもあり得ないのだ。何故ならドラゴンはワイバーンを食うからである。
にも関わらず、爪でワイバーンの皮を切る事も出来ないのか? あのドラゴンが? という話になる。そしてそんな事はあり得ないのだ。
『やはり権威付けのでっち上げだったか……つまらん』
どうやら本体は心底ガッカリしたらしい。本体も本物ではない事は予想できていたが、せめてもうちょっとマシな物で作れと言いたいようだ。




