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0396・イェルシュとの雑談




 「そういえば、ふと思い出したんだけど……ドラゴンの爪の短剣って本当にあったの? 何か200年ぐらい前に王が戴冠する際に使われたとかいうヤツ」


 「ああ、あの有名な物ですね。残念ながら宝物庫には見当たらなかったようです。何と言いますか、宝物庫の中身がゴッソリ無くなってましてね。いったい何処に行ったのかは分かっていません」


 「誰かが持ち出したって事? 王都が攻められてるドサクサ紛れに盗んだヤツが居る? ……でもゴッソリ無くなってたんだよね。って事は複数のヤツが持ち出したの?」



 ミクが王太子から奪った物や、その他の王族から奪った物の中にも、ドラゴンの爪の短剣は無かった。という事は、エルフィンにとってそこまで重要な物ではない? ……しかし戴冠式に使われる程の物である筈。



 「おそらくは何者かが盗んだんでしょうね。わたしが思うに高位貴族などじゃなくて、もっと下じゃないかしら? 混乱してるからこそチャンスだと思って、今までの鬱憤も篭めて盗んだんだと思うわよ」


 「可能性としては、それが一番高そうですね。幾ら宝物庫といえど、混乱している間なら誰が入ったかなど分かりません。もしくは忠義ある者が盗まれては堪らないと、何処かへ持って行ったのかも……」


 「それを世間一般では盗むと言うんだけどね。正当な所有者でない限り、場所を移動させただけでも窃盗でしょうに。むしろそうならない方が問題よ」


 「まあ、そうなんですけどね。それはともかく、ドラゴンの爪の短剣とやらが本物かどうか分からないのは残念です。私も本当のところを確認したかったのですが」


 「ウェルドーザ。ドラゴンの爪の短剣って本物なのかい?」


 「ごめん、分からない。私もあくまでドラゴンの爪の短剣って言われてるだけしか知らないし、それが本物かと言われたって、そもそもドラゴンの爪を知らないもの。あくまでも昔からドラゴンの爪の短剣と言われてるだけよ」


 「という事は偽物の可能性もあるんじゃ……。ハッ! もしかして偽物と知ってるヤツがワザと何処かへ持っていって、無かった事にしたとか? それで紛失した事にした、とか?」


 「元々そんな物は無いのに、さも在ったかのように見せるって事ね。分からなくもないけど、そうなると本物だったかどうかは永遠の謎になるわ。果たして本物だったのかしら?」


 「難しいところでは? 仮に本物だったとしても、ドラゴンの爪である以上、本来ならもうボロボロでないとおかしいと思います。確か結構前からエルフィンに存在する筈ですし、そうなるとボロボロになっていて当然では?」


 「まあ、ティアの言いたい事は分かる。どんな物でも年数が経てばボロボロになるものだし、ドラゴンの爪も例外じゃない筈。最後に使われたのも200年前なら、いつからエルフィンにあるかを考えると1000年ぐらいはある?」


 「仮に1000年ならもうボロボロじゃないとおかしい。もしくは鞘の中で粉みたいになってるか。そうじゃないなら新しく作り直したんだろうけど、じゃあ何処からドラゴンの爪を調達したんだって話になる」


 「ドラゴンの爪の調達……絶対に無理だよね? 仮にドラゴンを倒さなくても手に入れられるとしても、そんな方法があるなら話題になってないとおかしい。つまり色んな意味で偽物である可能性が濃厚」


 「となると、やっぱり知ってるヤツが破棄したか、何処かへ隠したかのどっちかだね。混乱の中で紛失したってなれば、証明しなくても本当に在った事になる。いや、違うか。偽物だと断定できなくなる」


 「何と言いますか、姑息な方法ですね。とはいえ小国家群の者達が血眼になって探したそうですが、見つからなかったそうです。それだけでなく金銭や宝石などもゴッソリ無くなっていたそうですよ」


 「そっちは王城で働いてた人達に盗まれたんじゃないの? それこそ分かりやすい物だしね、お金って。どの宝石が価値があるか素人には分からないけど、お金は確実じゃない」


 「って事は、宝石を盗んだのは貴族かね? とはいえ宝物庫にある宝石が安い物とか偽物である筈ないんだし、手当たり次第に持っていく可能性は高そうだけど」


 「まあ、宝物庫に偽物は置かないでしょう………と見せかけて、置いてる可能性もあるけどね。それより王族はどうなったんだい? 全員処刑?」


 「それが……王都ユグルに入った時には、既にもぬけの殻だったそうです。つまり、王族は全く居なかったのですよ」



 イェルシュはミク達を見ているが、ミク達は驚いた顔をするだけで怪しい表情も態度も無かった。<鮮烈の色>も無かったので、「やはり行方不明か……」と内心で溜息を吐く。



 「なら、さっきまでの話は変わるじゃん。王族が持って逃げたんでしょうよ。それが一番可能性が高い」


 「アレッサの言う通りだよ。それが一番可能性が高いし、流石に王族だってアイテムバッグくらい持ってるだろ。根こそぎ持っていく事は可能なんだから、その可能性が一番高いに決まってる」


 「それ以前に、王族に逃げられたって事は、どこかで再起を図ってる可能性が高いんだけど……。東の連中は大丈夫かい? 軍が去った後で出てくる可能性が高いし、場合によっては国民を煽り続けるかも」


 「エルフは寿命が長いしね。変に地下に潜られると辿れなくなっちゃうし、お金や宝石を持って逃げたなら資金は十分でしょ。そういう意味でも厄介極まりないと思う。それに森でエルフは面倒臭いし」


 「ええ、小国家群には相当の被害が出ています。内訳がどうなるかは知りませんけど、各国で領地の取り合いでしょうね。我が国は活躍していませんので、手に入る領土もありませんが」


 「後で小国家群ごと手に入れれば済むしね。しかも初期投資とか治安とか、色々な事を小国家群に丸投げ出来る。十分に利益が出るようになってから奪えばいい」


 「………」



 再びイェルシュはニッコリするだけで何も言わない。しかしミクが語った事が間違っていない事の証明である。<鮮烈の色>もジト目で見ているが、イェルシュが笑顔を崩す事はなかった。



 「やり口がエゲつないわねえ。と言っても、そういう事をする国と発覚するだけでしょうけど」


 「小国家群の者を入れれば良いと思うよ。特にエルフが少ない所にね。後は威圧せずに溶け込めれば……。神聖キルス法国に奪われる頃には、エルフ以外の種族に反感を持たせる事は可能だろうね」


 「ああ、エルフ以外の方々は虐げられていますからね。その方々を解放し善政を敷いておけば、今度は神聖キルス法国が悪役になる訳ですか。確かにエルフ以外の種族を味方につけるのは間違っていません」


 「それはあるかもね。エルフィンはエルフが一番多いけど、かと言って他の種族が少ない訳じゃない。エルフが一番多いとはいえ、他の種族も全て合わせれば半数ぐらい居るもの。国の中の半分が味方って結構怖ろしいわね」


 「………」



 イェルシュの笑顔は崩れないものの、汗が額から出始めた。おそらく高速で思考しているのだろう、笑顔が張り付いたままである。エルフィンがエルフの単一国家なら違ったのであろうが、ここは単一国家ではない。


 エルフという多数派が少数派を支配していた国である。だからこそ厄介であり、エルフ以外を普通に扱うだけで支持をされるというイージーモードなのだ。そのタイミングを逃す事になる神聖キルス法国。


 兵の損失を可能な限り減らした今と、前で戦い犠牲を出してでも勝利して領土を得た場合。果たしてどちらの方が得だったのだろうか? 考えたものの、答えの出ないイェルシュであった。


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