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0395・王都ユグルに到着




 「まあ、王都ユグルの状況は何となく予想はつくと思う。でもそれだけじゃなく、第2王女一行を殺した後、更に逃げてくる者達が居た」


 「何となくこの後が予想できるけど、しっかりと聞いておかないとね。で、どういう連中だったんだい?」


 「シャルの予想は当たってると思うけど、王太子と他の王族達だったよ。当然だけど皆殺しにしてアイテムバッグを奪っておいた。それがコレね」


 「何とまあ……。予想通りではあるが、これでエルフィンの王族の血は絶えましたな。第3王子も殺されておりますし、残りは逃亡に失敗しております。結局のところ、相談役殿のお仲間に王族全員が殺されましたな」


 「「「「「何と!?」」」」」


 「本当にね。まあ、ミクから逃れるのは難しいし、エルフィンの王族に逃げられなくて良かったよ。亡命や潜伏なんてされたら最悪だからさ。それに比べりゃ皆殺しなんて些細な事だ、どうせ真実は闇の中に消える。そうだろう?」


 「まあ、そうですな。こちらが皆殺しにしたとは公表できませんし、する意味もありません。適当に言っておけばよいでしょう。東の国々からすれば踏んだり蹴ったりでしょうが」


 「被害は大きく、それでいて王族には逃げられた。功績は無く被害だけが大きかったとなるだろう。とはいえ、神聖キルス法国は上手く小国家群を使ったとは思うけどね」


 「実際は小国家群が痛手を被っただけ、ですか。可能性としてはありそうですな。戦後の事を考えれば、犠牲の多い国が受け取るものも多い。そんな感じで煽ったのでしょう」


 「向こうの方も色々揉めてるからね。案外神聖キルス法国の狙いは、エルフィンだけじゃなく小国家群もかもしれない。ここいらで疲弊してほしいのかもねえ」


 「成る程。ここでエルフィンが手に入らなくても、後で小国家群ごと手に入れれば良いという事ですか。そこまで考えているとしたら、気をつけなければいけない国ですな」


 「何処の国にも気をつけなきゃいけないけど、神聖とかホザいてる国は怪しいからねえ。妙な忠誠とか信仰とか持ってたりするし」


 「周辺の事は後にしてくれる? それよりこのアイテムバッグをどうするか、それを決めたいんだけど?」


 「決めたいも何も、戦場で得た物は倒した者の物って決まってるよ。もちろん王族の持ち物ではあるんだけどさ」


 「前にも言ったけど、別に私は金銭が欲しい訳じゃないんだよね。で、この中には魔道具が結構あるんだよ。金銭とか宝石とか渡すから、代わりに魔道具は全部くれない?」


 「まあ、ミクが持っていきたければ持っていけばいいとは思う。とはいえ金銭が少ない訳じゃないんだろ? あんまりにも少ないと問題があるかもしれないけど、それなりに入ってるなら大丈夫さ」


 「王太子の持ってたアイテムバッグには、緑銅貨、紅鉄貨、黒銀貨、光金貨と入ってたよ。宝物庫にあったんじゃないかな? 私的には使いにくいと思うんだけどね、この単位の貨幣は」


 「おお! 光金貨までですか!! それなら問題ありませぬ。その一枚で五月蝿い者どもは黙らせられましょうぞ」


 「何だかんだといって、エルフィンは持ってるねえ。とはいえ他種族を酷使して貯めてきたもんだけど。でも、それも奪われてるんだから、情けない話さ」



 会話の最中も、ミクはアイテムバッグから魔道具を取り出して、自分のアイテムバッグに詰めていく。ガルドクスは王太子の持っていたアイテムバッグを貰い、そこに金銭と宝石などを詰め込んでいく。



 「さて、これはどうしたものですかのう……」


 「持って脱出するのは分からなくもない。とはいえ、エルフィンの王冠なんて誰も必要とはしていないよ。こんな物、むしろ邪魔じゃないか。金銭だけで十分だし、こんなもん持ってたら変な事に巻き込まれる」


 「間違いなく揉め事の元ですな。そのうえ持ち帰ったとしたら、絶対に陛下はそのまま残そうとしますぞ。歴史的な云々と言いかねませぬ。残して良い物と悪い物の区別がつくかは怪しいと、ワシは思います」


 「ならちょっと貸して。で、コレを……こうやって。こっちを、こう………して。そして、こっちを……」



 ミクは王冠に嵌まっている宝石を1つずつ外していき、それをガルドクスに渡す。散りばめられている宝石は巨人のナイフで切り落として渡し、王冠に付いていた殆ど全ての宝石を渡した。



 「で、宝石の殆ど無くなったコレは私が貰っとくよ。適当に鋳潰せば王冠だなんて誰にも分からなくなるからね。そもそも宝石が付いてない時点で価値は無いし」


 「ま、そりゃそうだ。後は実際に王都ユグルまで行ってみるだけか。おそらくは東の連中に制圧されているだろうけどね。こっちは十分に儲かってるけど、顔には出さないように」


 「「「「「「ハッ!」」」」」」



 話し合いが終わったので、ミク達は最後尾へと戻っていく。それと同時に休息も終わり、フィグレイオ軍は王都ユグルへと進み始める。第3の町から王都ユグルはそこまで遠くはない。


 むしろ近いともいえ、逆に東の方は森に入ってからの距離が長い。なのでそれだけ東の連合は苦戦した筈であり、それでも王都ユグルを制圧できたというのは優秀なのだろうか?。


 そんな話をしながら、ミク達は最後尾をノロノロとついていく。それが2時間、ちょうど夕方頃に王都ユグルに着く事が出来た。


 しかし王都の中は物々しい雰囲気になっているらしく、ミクの目にはエルフではない兵が石壁の上に立っているのが見える。おそらくは小国家群か神聖キルス法国の兵だろう。


 前の方で話し合いがされているようだが、「ここは我々が制圧した」という感じの事を言われているらしい。フィグレイオとしては無理をする必要は無いので、適当に話したら帰ればいいだけだ。


 話し合いがどうなるかは知らないが放っておき、ミクは夕食を作り始める。フィグレイオの輜重も夕食作りを始めているので、今の内に作らないと食べるのが夜になってしまう。


 適当な蛇肉の野菜炒めと亀の干し肉の出汁のスープを作り、後はチャパティを作れば完成だ。早速食事をしていると、何故かシャルがやってきた。アリストラも連れているが、一緒にいるのは神聖キルス騎士だ。



 「何ですか、神聖キルス騎士というのは……。私の名はイェルシュ・ウム・アラバールと申しましたよ?」


 「覚えてないし、ゴールダームに居たんじゃなかったの?」


 「とっくに戻っていますし、それで今回の軍に組み込まれたのです。一応大隊長なので、それなりには偉いのですけどね」


 「こっちは変わらず探索者だからね、偉いかどうかなんて知った事じゃないよ。それより東から攻めたなんて頑張ったんだねえ。ごくろうさま」


 「本当に苦労しました。西からは楽だったでしょうね、東の私達は敵の主力と戦ったのですよ? まあ、喜び勇んで出て行った者が多く、我々は大して被害も受けていませんが」


 「そして小国家群の奴等に略奪”させて”、神聖キルス法国の名で裁きでも下すの?」


 「………」



 イェルシュはニッコリとした笑顔を崩さない。という事は、元々そういう筋書きだったという事だ。これはシャルが予想していたから分かった事であり、ミクだと興味も無いので予想なんてしなかっただろう。



 「それにしても……本当に探索者ですか? 随分と美味しそうな物を食べてますね」


 「ダンジョンの中でも同じだよ。不味い物を食べても気分は良くないし、冷たい物をボソボソ食べても気が滅入るだけだからね。後、同じ物ばっかりだと飽きるし」


 「………」



 イェルシュは皮肉で言ったつもりだったのだが、ミクが素で返してきたので何も言えなくなったようだ。


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