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0036・エルフとブラウンエルフ




 ミクが生命反応の多い場所に行くと、そこには洞窟があり、多数のターバンを巻いた者達が話し合いをしていた。



 「どうやら東方面に出た連中が何かと争っているらしい。何処の者かは知らんが、こちらに喧嘩を売ってきた以上潰す。皆の者、準備は出来たな? 行くぞ」


 「「「「「「「「「「ハッ」」」」」」」」」」



 何だか妙に静かな連中だなと思いつつ、ミクは移動していく盗賊達を見送ると、蜘蛛の姿に変わり洞窟内へと侵入する。天井を逆さになって歩き、中の者達になるべく気付かれないように進む。


 洞窟の中にはそれなりの数の盗賊がおり、半数以上は残っている感じだった。ミクは生命力を感知しながら進んでいき、一番奥の部屋まできた。


 そこには神経質そうな男が何かの書き物をしており、横にいる少し太ったブラウンエルフは紙を交互に見て何かを確認している。



 「やはり食料を少々切り詰めなければなりませんな。本国に送る量が増えているので致し方ないのですが、残念です……」


 「お前は食いすぎなのだ。かつては腹も出ていなかったというのに……こちらへ来たら美男子も形無しだな」


 「ハッハッハッ、食べられるのであれば美醜などいかようでも構いませんな。子供の頃から食べる物には苦労してきたのです、自分で得た金なのですから悪くはないでしょう?」


 「ふっ、まあな。それより騒がしいようだが、何があった?」


 「どうやら東側の者が攻められたようですな。声が少々聞こえてきたので、出て行ったのでしょう。またエルフィンの者どもでしょう」


 「奴等か……。我々の祖先と同じとはいえ、我らは既にブラウンエルフ。奴等とは何の関わりも無いというのに」


 「どうせ見下したい相手が欲しい者どもが、エルフィンで喚いているのでしょう。毎回毎回バカバカしい連中です。奴等は気位が高すぎる。森で鍛えると言いながら、実際には森の恵みに依存しているだけの愚か者です」


 「我らにはその恵みが無いからな、奴等がいかに恵まれているかがよく分かる。我らからすれば甘ったれの連中がエルフだ。連中は気付いてもいないがな」


 「まったくですな。いい加減、あの国の一部の阿呆どもにはウンザリします。だからこそ、我らが祖は全ての者に平等な太陽の神に信仰を変えたのです。森の者にしか恵みを与えぬ神など吐き気がする」


 「やめよ、神は神だ。その神を利用し他種族を見下すエルフがゴミなだけだ。神は敬わねばならぬ」


 「申し訳ございません。奴等への怒りの所為で……」


 「なに。神々もお分かり下さろう。それよりも帰って来ぬな。不測の事態でも起きたか?」


 「ここに居るのは本国からの精鋭ばかり。ちょっかいを掛けてくるエルフ如きに負けるとは思えませぬが、確認に行って参ります」


 「すまんが、頼む。私は報告書を書かねばならん」



 そう行って小太りの方は外へと出て行った。おそらくは盗賊団の頭なのだろうが、どちらかと言うと潜入か破壊工作を行う軍人のような連中だ。ミクは彼らをそう評価した。


 奥の部屋に居ても仕方ないと思い、天井を伝って手前の部屋へと戻ろうと思うミク。ここの盗賊団は潰すかどうか迷う感じであり、それは軍ならば話が変わってくるからだ。


 本人が犯罪を犯しているならば犯罪者として喰えば済むのだが、これが作戦か何かだと微妙なラインになってくる。実行者が悪いのか命令者が悪いのか。


 どっちも喰えるなら手っ取り早いのだが、ミクはまだそこまで判断できていない。こいつらが何をしているかをよく知らないからだ。盗賊団だから大丈夫だと思うのだが……。


 そうやって悩んでいると「ドォン!!!」という音が入り口から響き、慌てて頭の男は部屋を出た。ミクはそこら辺りにある物を片っ端から回収して転送し、全て奪ったら部屋を出る。



 「おのれ、エルフどもが!! 我らを倒す為にどれほどの人数を掛けたのだ。頭がおかしいのか!!」


 「ハッ! 貴様らのような砂に塗れた汚物どもでは所詮その程度よ。貴様らブラウンエルフなどという醜い劣等種は、須らく根絶やしにせねばならんのだ!!」


 「トチ狂った差別主義者どもが!! だからこそ戦争が絶えぬし我らのような者が派遣されてくるのだ。貴様らの横暴が続く限り、我らは剣をとり続ける! 貴様らこそ滅ぶがいい!!」


 「太古の昔より連綿と歴史を紡ぐ我らが滅ぶ事など無いわ! 貴様らこそさっさと滅べ!!」



 盗賊の頭と攻めてきたエルフのリーダーが争っている隙に、他の部屋を探索するミク。中に誰か居ればレッドアイスネークの毒を散布し、身動きがとれなくなれば次へ行く。


 そうやって洞窟内の者を次々と行動不能にしていったが、洞窟の外でもそれなりの人数が戦っていた。ミクは面倒臭くなり、森の中へと進むと、そこでゴブリンの姿に変化する。


 多少体の動かし方を確認してから腰に布を巻き、洞窟前に近付くと素早く走り出て曲剣を拾った。そして近くの者を切りつける。



 「ぐぁぁ!!」


 「チィッ!! ゴブリンだと!? いったい何故ガッ!!!」


 「ハッ、戦場で余所見とは殺してぐぁぁぁ!!!」


 「くそっ! このゴブリン妙に強いうえに乱戦を利用してやがる! 気を付けろ、エルフどもにかまけていると襲ってくるぞ!!」


 「ふざけやがって! 漁夫の利って事か? 高がゴブリンの分際で!!」



 先ほどのエルフの見下しと同じ事を口走っている。エルフもブラウンエルフも同じだなと、呆れながらミクはそう評価した。そんな事をおくびにも出さず、ミクは回避し、切りつけ、突き刺していく。


 その度に人間種には致命傷ともいえる傷を与え、次々に殺していくのだった。


 粗方のエルフとブラウンエルフを殺したと思っていたら、中からエルフが出てきた。どうやら先ほど盗賊の頭と戦っていた奴のようだ。



 「ゴブリン……に負けるとは。乱戦を上手く利用されたか? どのみち愚かな。何があったかは分からんが、さっさと殺して麻痺している者達を助けねば」


 「ギギッ!」



 こちらを舐めているエルフは無造作に袈裟切りにきたが、ギリギリでかわしたミクは、下段に持っていた曲剣で足下を切る。が、鉄のグリーブでも付けていたのか「ギィン」という音と共に滑らされた。


 慌てたエルフはバックステップを行い、ミクから距離をとる。



 「グギャギャ!」


 「このゴブリン………。乱戦を征したのはマグレではない訳か。とはいえ所詮ゴブリンはゴブリン、さっさと殺してしまうか」



 そう言うとエルフから圧が放たれた。どうやら【身体強化】を使ったらしい。圧倒的な自分というものに酔っているのだろうか? 口元をニヤつかせながら、再び袈裟に切り込んできた。


 どうしても舐めたまま勝ちたいのか同じ方法で切り込んできた為、今回もギリギリで回避”してやって”こちらからも切り上げる。


 先ほどとは違い股間を切り上げる形だが、エルフは不恰好な横っ飛びで回避し何とか無事だった。意外に能力は悪くないのだろうか?。



 「クッ! このゴブリンはおかしいぞ! 何故私の【身体強化】についてこれる? 高がゴブリンの筈だろう!」


 「ギッギッギッギッギッ♪」


 「おのれ! ゴブリン如きが!! 私を見下すなど万死に値する!!!」



 激怒したエルフは更なる【身体強化】を行ってきたが、ミクは周囲が陽炎のように歪んでしまう【身体強化】ではなく、あれ以上の【身体強化】を行使した。


 それは揺らめく陽炎の如きものではなく、魔素が見える者であれば灼熱の太陽が顕現したに等しい程のものであった。


 ゴブリンの体の周囲が完全に歪みきってしまい、もはや破滅した世界とでもいうべき空間となっている。そんなものを目の当たりにしたエルフは、完全に戦意を喪失していた。



 「そ、んな………」


 「お前の知っている事が世の理ではない。愚か者はお前だ、そして死ね」


 「は?」



 突然ゴブリンが人語を話したからだろう、エルフの顔は呆然としている。その瞬間ミクは美女の姿に変わり、一瞬の後にエルフを斜めに両断した。



 「あ、え……?」


 「見た目しか見えぬ目を持つ憐れな存在よ。死して私の糧になれる事を喜ぶがいい」


 「か、て………」



 地に落ちたエルフはまだかろうじて意識があった、その目の前で、裸の美女は醜悪な肉の塊に変貌。周囲の死体を貪り始めた。


 エルフは最後まで、目の前に出てきた者が最悪の怪物だとは気づかなかったのだ。その事を理解できた瞬間、彼の意識は永遠の闇に閉ざされた。


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