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0394・挟撃戦の終わりと森の中




 「やぁぁぁぁぁぁっ!!」



 再びメイスを使って敵に攻撃。相手の肘にヒットしたメイスは、確実に敵の肘の骨をし折り潰している。当たり前だが巨人の骨のメイスであり、そのうえ爪や歯だけでなく魔石まで練りこんだ物なのだ。


 普通の武器とは桁が違い、相手の盾ごと叩き潰せる武器となる。そんな物を人体に振り下ろしたらどうなるかは簡単に分かる事であろう。エルフィンの兵に支給されている盾では、アレを止めるのは無理だ。


 押せ押せムードで攻撃しているものの、キッチリ当てられる攻撃を着実に当てている様は、意外と言ったら悪いが冷静に見える。盾を狙って強引に叩き潰そうとはしていない。無理押し出来るなら、無理押しをしそうだが……。



 「あたしが止めさせたんだよ! 無理押しして戦うなんてマヌケの戦い方だからねえ! 無理押しするなら、それしかない時にやるもんだ。普段からやる事じゃない」


 「まあ、それはそうね! わたし達の場合は少し違っていて、別に無理押しでもなく叩き潰してるからセーフ!」


 「セーフとかではなくて、これが一番速いからです、よ! 私達と他の方では、戦い方が異なるのが当たり前です!」



 ミク達が参戦したからか、シャルもかなり余裕が出てきたようだ。特に精神的な余裕が大きい。ミク達が来た以上は負けなど無いのだから、精神的には随分と楽だろう。それが良いか悪いかは別であるが。


 最前線で戦っているミク達に対し援護に来た歩兵が居るものの、そこまで数は多くない。多くの歩兵は疲れきっていて休んでおり、無理に動かしても戦力にならないと判断されたからだ。むしろ休んでろという事である。


 歩兵の助けが無くともミク達が蹂躙してしまう為、あまり意味が無いというのもあるのだが、それは仕方がない事であろう。ミク達の邪魔にもなりかねない。そうガルドクスは考えているが故の指示だ。


 そのまま押し返したミク達は勝利し、後ろで歩兵達が勝鬨かちどきを上げるのを聞いている。しかしミクは左斜め前を向いたままであった。嫌な予感がしたシャルは聞いておいた方が良いと思い、ミクに聞く。



 「ミク、左前の方をジッと見てるけど……何か厄介そうな事でもあるのかい? もし引っ掛かる事でもあるなら早めに頼むよ。王都ユグルの近くになって妙な事に巻き込まれても困る」


 「森の中を走っている奴等が何人か居る。多分だけど王族じゃないかな? 慌てて逃げ出してきたっぽいんだけど……。とりあえず行ってみるよ。皆はここに居て」



 そうミクは言い残すと、素早く走り出して森の中へと入っていく。一塊で6人ほど居るのだが、第3王子の時とそっくりだ。だからこそミクは王族ではないかと考えたのだが、それは当たっていた。



 「なんだ!? 人間かキサマ! さっさとそこを退け、下郎!」


 「お前達エルフィンのエルフは本当に変わらないね。高が人間種の1つでしかないというのに、どこまでおごれば気が済むのやら」


 「なんだと!? 下等な生き物の分際で、我らエルフに物を申すとは言語道断! ここで死ね!」


 「死ぬのは、お前達だ」



 剣を抜いて襲ってきたエルフの攻撃をミクはギリギリでかわし、そのエルフの首から上を喰らった。ミクは首から上を化け物の口に変えており、その口で喰らっただけである。たったそれだけで人間種は容易く死ぬのだ。



 「実に愚かなものだ。これほどに腐っているから、神どもが私に喰らえと命じるのだが……。お前達のようなマヌケは己がゴミであるという事も理解せんのだろう? だが、構わん。そのまま私に喰われて死ね」


 「「「「「!?」」」」」



 ミクの異形の姿を見て言葉も出なかった5人は、透明の触手から麻痺毒を注入されて倒れた。ミクはその5人に近付き素早く転送。既に首から上は美女の姿に戻している。周囲に誰も居ない事は把握済みだ。


 そしてレティーを転送して脳を食わせる。流石にドンナはシャルのブラッドスライムなので、人間種の血を飲ませてもいいものか分からない。なので転送するのはレティーだけだ。


 ミクがシャル達の下に戻ろうとしたその時、再び王都方面から逃げてくる者を感知。どういう事だと疑問を持ちながらも、確かめる為にミクは移動する。



 「何奴!? そこに居るだろう、出てこい!」



 どうやら近付いた段階で見つかったらしい。いったい何故かと思うものの、ミクは素直に出た。



 「チッ! 人間か! 人間風情がこんな所に何故一人で居る? 怪しい奴め」


 「何故も何もフィグレイオ軍に同行してるからだよ。しかし見たところ、王太子と他の王族って感じだね? 王都ユグルから逃げたって事は、東の国々に王都は制圧されたかな?」


 「何故それを!? ……チッ! 余計な事を言ったか。ええい、こいつ1人だ。さっさと殺せ!」


 「「「「「「「「「「ガッ!?」」」」」」」」」」



 ミクがわざわざ姿を現したのは透明の触手を用意し、いつでも麻痺毒を注入出来る様にする為であり、下らない話をする為ではない。もちろん、そんな事を知らない相手は下らない話をして時間を潰してしまった。


 戦場では僅かな隙が命取りになるとは知らなかったらしい。周囲を守る騎士と王太子を含めた王族。それらを麻痺させて喰らったミクは、持っていたアイテムバッグも全て転送してシャル達の下に戻る。


 シャルやアリストラにガルドクス、それにアレッサやティアが立ち話をしており、セリオは適当に寝転がっていた。ただし大きいままであり、まだ戦闘の可能性を考えているのだろう。



 「おかえり。ミクが戻ってきたのはいいけど、随分と時間が掛かってたね。いったいどうしたんだい?」


 「とりあえず兵士の休憩も必要だから休憩させて、今の間に幹部連中を集めてくれる? その間に用意するから」


 「分かった。ガルドクス、頼めるかい?」


 「分かりました。すぐに集めましょう」



 そう言ってガルドクスが離れていったので、セリオを手招きする。セリオは起き上がってトコトコやって来たが、ミクはセリオを盾にするようにしてアイテムバッグを出す。シャル達には見られているが、兵士達には見られていない。



 「ありがとう、セリオ。御蔭で見られずに済んだよ。それと、戦闘は無いから小さくなっておいて」


 『分かった』



 素直に従い小さくなったセリオをアレッサに預け、ミクは少し森へと行く。レティーを戻し【浅穴】の魔法で穴を掘ったら、そこに糞尿を捨てて土を被せたら戻る。セリオは臭いで分かっており、アレッサとティアは分かっているので何も言わない。


 その後は適当に雑談をし、幹部連中が集まったら座って話を始める。



 「集まってもらったのは、さっき森の中で動く者達を見つけてね。そいつらを調べに行ってたんだ」


 「あたしは聞いてたけど、まだ結果は知らされてない。……わざわざ幹部連中まで集めたんだ、何かしら教えておかなきゃいけない事なんだろう?」


 「そう。森の中で会ったのは第2王女の一行だった。まあ、生かしておいても何の得も無いし、こっちに剣を向けてきたからね。全員殺したよ。ただ、何も持ってなかった。慌てて逃げて来た感じかな」


 「ふーん………慌てて逃げてきた、ねえ」


 「予想はつきますな。既に王都ユグルが攻められておるか、それとも陥落寸前かです」


 「じゃないと慌てて逃げ出したりはしないだろうさ。王族なら隠し通路ぐらい知ってるだろうし、それを使えば攻められている最中でも脱出できるからねえ」



 やはり王族が逃げてくる以上、王都ユグルの事は簡単に予想できるようだ。


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