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0387・第3の町での戦い




 ミク達は下らない話をしつつ待っているが、なかなか戦闘は終わらないようで今も続いているらしい。いったい何故なのかは分からず、とはいえ邪魔する訳にもいかないので待機している。


 ミク達の手も必要なら呼ぶだろうし、シャルがやられる事は殆ど無い。余程のスキル持ちが居たならまだしも、シャルならばスキルに関係なく倒せるだろう。



 ◆◆◆



 少し時間を戻して第3の町。門を壊した後、シャルは兵士達より先に突撃していく。グレートソードを持ったままであり、それにアリストラが必死に喰らいついて行く。シャルのメイスと盾を借りての戦いだが、段々と使い方が分かってきたようだ。


 前回は少し危ない場面もあったのだが、重い代わりに高威力の武器は、上手く隙ができた時に振るえばいい。その一撃で兜ごと頭蓋をカチ割れるし、体ならば鎧ごと骨をし折れる。それ程の威力なのだ、巨人素材のメイスは。


 それを扱えるのも、アリストラが真面目に訓練を積んできたからだ。たとえ力を篭める時だけに使う【身体強化】でも、使えるからこそ巨人素材のメイスで威力を出せる。そこまでの長さはないものの、金属製よりも重いのだ巨人素材は。


 そんな武器を振るい敵の兵士を殺すアリストラ。その前では重いグレートソードをショートソードの様に振るい、纏めて3人を横に切り裂く元女将軍。見た目は変わってしまっているものの、間違いなく本人だ。それはアリストラも分かっている。


 だからこそ異常な強さにも納得できており、呆れる他ないのだ。そんな元女将軍の前に敵の兵が立ち塞がった。



 「獣どもとは違う黒い猿が混じっていたようだが、これ以上はやらせん。私のスキルでさっさと死ね!!」


 「ほーん。多少は出来るかもしれない奴が出てきたかい? しかしスキルに頼ってるようじゃ、大した強さは持ってなさそうだねえ」


 「ほざけ!!!」



 短剣を両手に持ったエルフは素早く踏み込みシャルに接近する。シャルはグレートソードを八双に構えて待つ。重い剣である以上は正眼に構えたりなどしないし、下段も殆ど使われない。使う構えは上段か八双か脇構えぐらいしかないのだ。


 八双で待つシャルに対し、緩急を付けるように【身体強化】を足に使い接近してくるエルフ。シャルはそれを許しつつ様子を見る。


 右の短剣を水平に振ってきたので後ろに半歩下がり、素早く左の短剣を水平に振ってきたので半歩下がる。今度は右の短剣で突いてきたので、右足を軸に体を半回転させて回避。するとスキルを使ってきた。



 「もらった! 【速薙ぎ】!!」



 それはおそらく素早く切り裂くスキルなのだろう。エルフが右手で突き出した短剣が、高速でシャルを襲おうと動く。しかしそれより速いシャルは、とっくにグレートソードで袈裟に切り捨てていた。



 「随分と遅いしチャチなやり方しか出来ないヤツだ。スキル持ちだからちょっと期待したけど、幾らなんでも弱すぎないかねえ……」



 接近距離であったにも関わらず、綺麗に袈裟に両断されたエルフ。シャルは敵がスキルを使う少し前、体をコンパクトに折り畳みながら足を引きつつ、【身体強化】を使いながら袈裟に切ったのだ。


 足の裏、足首、膝、腰、背、肩、腕、そして手首の連動。完璧に上手くはいっていないが、それでもダンジョンなどで反復練習をしていた結果である。実は誰にも見られていない時に、地味に練習を続けていたのだ。


 自身が思っていたよりは上手くいった結果に満足しつつ、周りで見ていたフィグレイオの兵が歓声をあげ、エルフ兵が悲しみの声を上げるのを聞きつつ、シャルは次の敵兵を切り裂いていく。


 それを見ていたアリストラは驚いていた。あの大きな剣をコンパクトに使い、短剣の相手の距離で仕留めるという技。自分の祖先とはいえ、あそこまで凄まじい技量を持つとは知らなかったのだ。


 そもそも実戦を殆ど見た事が無かったので、将軍としての能力が高いのだとばかり思っていた。2つ目の町での戦いも凄かったが、先ほどのはそれ以上であった。自分の祖先が強い事が新たに分かり、ちょっと誇らしいアリストラ。



 「何を戦場で気を抜いてるんだい!! さっさとこっちに来な!!!」



 シャルに怒鳴られたアリストラは慌てて背中を追いかけていく。戦場での隙は死を意味する。未だアリストラはその意味を知らないのであった。



 ◆◆◆



 シャルを追いかけていきエルフ兵と戦っているアリストラ。あまりシャルに近付きすぎると戦いにくくなってしまう。そう思ったアリストラが後ろに下がると、突然矢が飛来し、それが膝に命中する。



 「グゥッ!?」



 突然膝に衝撃を受けて倒れるアリストラ。そのアリストラの声を聞き、後ろに下がるシャル。もちろん目は敵から逸らさない。



 「大丈夫かい? いったい何があった?」


 「すみません。膝に矢が刺さって……」


 「チッ、動けないか。市街地戦でも当ててきたのか、それとも運悪く当たっちまったかで変わる。どっちかは聞いても分からないだろうけど、凄腕のヤツが居る可能性は考えておかなきゃいけないね」


 「申し訳ありません。何とか立ち上が、グッ!?」


 「膝に矢を受けたなら立ち上がれる訳ないだろ。大人しくしてな。それにしてもミクが居るなら任せるんだけど、戦場で守るのは大変だ、ね!」



 襲ってきたエルフ兵を切り捨てながら、アリストラに飛んでくる矢を弾くシャル。どうやら完全に的にされているらしいが、【身体強化】を使って弾いているシャルを突破する事はできない。


 ただシャルがアリストラを守っていると分かった敵兵は簡単には近付いてこなくなり、遠くからシャルやアリストラに攻撃をし始めた。特に弓矢が多く、シャルはそれを防ぎながら凌いでいく。


 その間にも味方は優勢に戦っており、いずれはここにも味方が来るだろう。そうなれば攻勢に出られるので、それまでの辛抱だった。


 アリストラの前で矢を弾きつつ、しかし前にも出ずに物を投げつけてきたりするエルフ兵。いちいち面倒な事をしてくれるとイライラしながらも、シャルは的確に捌いていく。


 四方八方から攻撃されているにも関わらず、シャルがそれで傷を受ける事はない。流石にヤバい人物だと理解したのか、攻撃を激しくするエルフ兵。他のところのフィグレイオ兵が加勢に来たら、目の前の化け物が解放されてしまう。


 それはマズいと分かっているのだろう。猛烈な勢いで攻撃し始めた。それでも【身体強化】を駆使し、確実に矢や投げられた物を弾くシャル。尋常ならざる魔力や栄養の消費ではあるものの、ミクの血肉の御蔭で助かっていた。


 普通の人間種のままだと、とっくに自分は殺されている。そう思いながらも、心はむしろ逆に今の状況を楽しんでおり、それが獰猛な笑顔になって現れていた。それを見て益々怯えるエルフ兵。


 普通に見ればシャルやアリストラが追い詰められているのだが、心境としてはエルフ兵の方が追い詰められていた。攻撃を苛烈に行っているのも恐怖からであり、それはパニックを起こしているのと変わらない。


 そして、遂にエルフ兵の矢や投げる物が尽きた。何も飛んでこなくなったタイミングで、獰猛な笑みを浮かべるシャルが牙を剥く。それはまさしく<雪原の餓狼>であり、その餓狼の牙が敵に突き立てられる。


 【身体強化】を使って接近したシャルは一刀両断とばかりにエルフ兵を真っ二つにした。縦に真っ二つにされたエルフが左右に分かれて倒れるのを機に、エルフ兵は完全なパニックを起こして逃げ惑う。


 まるで悪鬼が降臨したかの如き死に様に、蜘蛛の子を散らすように逃げるのであった。


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