0386・アイテムバッグの中身は?
『ある程度は終わりましたので、順を追って説明します。まず殺された者は第3王子でした。そして、この男が後ろ盾と共に最初に暗殺者を送り込んだ者です。言うなればチャンスに真っ先に動いた者ですね』
『ほう。一番早くな。<機を見るに敏>と言うべきだろうが、その割には逃げる羽目になっているようだが?』
『この第3王子が最初に狙ったのは、私が予想した通り王太子でした。しかし王太子は後ろ盾に近衛騎士団長を持つ為、暗殺者は退けられたようです。そして王太子から糾弾されました……王族が全員居る場所で』
『成る程、孤立化させる為だな。誰かに暗殺者を送るような者など、危険すぎて組む相手にはなるまい。王太子の方が一枚上手だったな。おそらく意図的に己からは動かなかったのだろう。守りが堅牢ならば逆撃の方が良いと判断したか』
『第3王子は糾弾された後、王城から逃げる際に宝物庫から幾つかの物や金銭に宝石を略奪してきています。それがバレたのでしょう、途中から騎士などに追いかけられて必死に逃げて来たのが、こんな所に居た理由ですね』
『ほうほう、王城の宝物庫の中身をな。………黙っていれば我々の物だ。金銭や宝石に興味も無いが、魔道具などがあれば貰い受けるか。優秀な物であれば解析して複製したい』
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「レティーが言うには、豪華な死体は第3王子。そしてこいつは最も早く動き、王太子に暗殺者を送ってる。しかし失敗して逆に追い詰められ、宝物庫の金銭や宝石などを奪って逃走してた。他にもあるみたいだけど……」
「それって多分これらの事でしょ。魔道具みたいだし、説明書っぽいのも入ってるわよ。ミクが魔道具を持っていくなら、私とティアはお金と宝石ね」
「良いのでしょうか?」
「別に問題ないわよ。私達は逃走中の所属不明な賊を倒しただけだもの。豪華な服を着ていても、本当に第3王子かは分からないわ。私達はレティーが脳を喰ったから事実だと知っているけど、それを証明は出来ないでしょ?」
「どのみち私達が言い出さなければ、どこにも無いで終わりますしね。となると、今のところはミク殿の本体空間に移していただきましょう。それなら絶対にバレませんし」
「そうね、それが一番いいわ。だからお願いね。最悪返す事になっても、ミクが本体空間で魔道具は複製してくれるし。それなら多分わたし達にも得はあるでしょ」
「という事で、返さなければいけなくなるまでにお願いします」
「心配しなくても本体がやる気だから問題なく複製されるよ。こんなチャンスを逃したりしないし」
そう言ってミクは右腕を肉塊にし、本体空間にアイテムバッグを転送する。その後は何食わぬ顔で街道へと戻り、最後尾まで歩いていくのだった。
◆◆◆
戻ったミク達はそのまま最後尾で待機し、周囲の警戒を始める。元々は輜重の運ぶ食料を守る為に居るのだから、その依頼を熟すのが第一だ。ミクは周囲の警戒をしながらも、本体空間で有用な魔道具の解析を行っていく。
アイテムバッグに入っていた魔道具は6つであり、その6つともが有用な物であった。もちろんミクにとっては有用なだけで、他の者にとってはそうではないかもしれない。
まず最初は<浄水機>。これはコの字型の魔道具で、中央部分にゴミを集積する場所がある。コの字型の端と端のパイプを水に浸けておくと、自動的に水と共にゴミを吸い上げながら、水だけを吐き出すという物だ。
中央部分は下にゴミが落ちるようになっており、【清潔】が掛かりっぱなしなのでゴミが浮く事は無い。なので起動して放っておけば、後は勝手に水が綺麗になる。
2つ目は<破砕機>。完全に粉砕するのではなく、破砕ぐらいしか出来ない物のようだが、これはこれで使い道がある。料理に使うもよし、骨の処理に使うも良しである。最近またもや人間種の骨が溜まっているのだ。
3つ目は<温熱機>。どうやら中に入れた物をある程度の温度で温め続ける事が出来るらしい。もしかしたらオーブン的な使い方が出来るかもしれない。
4つ目は<爆音機>。筒状になっていて、外側に行くほど広がっている妙な形をしている。狭い方から声を出すと、自分の声が何倍にも増幅させられるようだ。使う時に篭めた魔力で音の大きさが変わるらしい。
5つ目は<攪拌機>。中に入れた物を掻き混ぜるだけだが、延々と魔石の魔力が無くなるまでやり続けてくれる。これも料理に役立ちそうだ。他に掻き混ぜる物なんて無いだろうし。
そして最後の6つ目こそが肝心要の物であり、騎士が必死に追いかけた理由であろう。それは<射出機>だ。直径30センチ、長さ1メートルの筒であり。この中に入れた物を高速で射出する魔道具となる。
例えば火の着いた槍などを入れても当然、高速で射出されるのだ。上手く使えば攻城兵器として使用できるだろう。コレの凄いところは魔石で使用できるところであり、言うなれば誰でも使えるという事だ。
これだけの武器となる魔道具であれば、第3王子を殺してでも奪い返そうとするのは当たり前であり、おそらく第3王子はコレを手土産にどこかへ亡命する気だったと思われる。そして他の王族が殺しあうのを眺めているつもりだったのだろう。
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『そのようでしたね。第3王子が復権したらという事で、協力した貴族の子息も逃亡に付き合っていたようです。全員が主達に殺されてしまいましたが、第3の町に着く手前までは護衛の騎士も居たみたいですね』
『という事は、第3の町に命からがら逃げ込んだ訳か。そしてフィグレイオの町攻めの間なら、混乱の隙に逃亡できると思ったのだな。妙に遠くを逃げていたのもその為か。奇襲するつもりではなく逃亡するつもりなら、遠くを逃げるのは当たり前だ』
『その結果、主に見つかり殺された訳ですが、どうしても危険から遠ざかりたかったようです。情報を精査すると、そのような結論にならざるを得ません』
『無様な奴だ。恐怖に駆られて逃亡したばかりに見つかり殺されるとは……。しかし、死ぬ奴というのは得てしてそういうものらしいがな』
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「という事で、暗殺者を送ったにも関わらず根性の無かった第3王子は、恐怖に駆られて飛び出た先で殺されましたとさ」
「何だか、やってはいけない事を教える童話みたいな終わり方ねえ。案外、真実が広がれば本当に童話になるかも。題名は「情けない第3王子」かしら? もしくは「慌てん坊の末路」?」
「どっちも微妙にトゲがありますけど、気持ちは分かります。王族が同じだと思われたくありませんので、「エルフィンの第3王子」でどうでしょう」
「いや、そのまま過ぎない? わたしだって一応エルフという種族名は出さなかったのに」
「エルフじゃなくて、エルフィンです。バカなのはエルフィンのエルフと覚えてもらいましょう。何も間違っていないのですし」
「まあ、確かにそれはそうなんだけど……。エルフ全体がバカにされる訳じゃないから良いのかな?」
「構いませんよ。エルフィンのエルフが愚かなだけで、他のエルフがどうかは別ですしね。それに第3王子と書いておけば、エルフィンの王族だけがマヌケになるんじゃないですか? 貴族は必死に否定するでしょう」
「必要なら王族を生贄にする連中だもんね。王族と貴族の関係なんて、大体がそんなものだけど」
確かにそうであり、これで忠義などと言い出すのだから笑い話にしかなるまい。それに、己の方針には合わないからと、何も知ろうとしなかった愚かな王も居るのだ。
その結果が暗殺になったのだから、どっちもどっちでしかない。




