0035・渇きの園
第3エリアの不良探索者や迷賊を殺しつつ、彼らの金品も含めて強奪する。もちろん周りに誰もいない間に行っており、ミクの犯行を見られる事はない。
【気配察知】系のスキルで知られるかもしれないが、仮に知られても証拠が無いし目撃も無理だ。そんな事をミクが許す筈が無い。なので秘密裏に処理されており、随分と犯罪者は数が減った。
それでも居なくはならない。それほどまでに犯罪者に身を落とす者と、ゴールダームにやってくる者は多いのだ。だからこそミクの食事が無くならないとも言えるのだが。
今も罠を仕掛けて近くで待機していた者を強襲し、左右のスティレットと骨杭の発射で5人を殺害している。その後は素早くレティーに脳を喰わせ、本体空間に転送。何事も無かったかのうように歩き出す。
それらを繰り返し十分に食事を済ませたら脱出、外は夕方だったので宿に戻る。町中を歩いていても特に変わりは無く、いつもと変わらない中を歩いていると、人集りがあった。
何かあったのかと思い近付くと、そこでは何やらパフォーマンスをしている者が居た。いわゆる大道芸人なのだろうが、興味の無いミクはチラリと見ただけで歩きだし、宿への道を歩いていく。
町も全く変化が無い訳ではなく、色々な変化というものはあるらしい。宿に戻ったミクは食堂に行き、大銅貨1枚を払って食事をした後、さっさと部屋へと戻る。
レティーをベッドに置き、装備を外して服を脱いだミクは、ベッドに横になって目を瞑る。後は本体空間で朝まで遊ぶのだった。
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小銅貨11枚、大銅貨32枚、小銀貨15枚。これが今日第3エリアで殺害した連中の全財産である。あまりにも少ないが、元々犯罪をするような連中が大量に金銭を持っているのもおかしな話だ。
なのでこの程度の金銭しか得られなかったのは仕方のない事なのだろう。それよりも盗賊団のアジトを含め、多くの鉄製武器が手に入った為、今は溶かしてインゴットにしている。
本体も色々な武器を考えてみるも、今のところはウォーハンマー以上の耐久力の武器を考え付かない。インゴットのまま置いておけばいつでも使えるのだが、かといって使わないのも勿体ないと思ってしまう。
どうしたものかと思いつつ、気付けばスティレットとインゴットを溶かして大型のナイフを作っているミク。刃渡りは30センチで片刃の物であり、先だけが両刃になっている。
それを作成した後に剣帯を作り変え、大型ナイフを携帯できるようにしておく。完成した物を眺めつつ、どうしたものかと考える本体。やはり気になるのはウィリウム鋼の槍だ。
あれを何に加工するべきかと考えているのだが、なかなかしっくり来る答えが本体の中で生まれない。ウォーハンマーを変更するのもアレだし、カイトシールドはあのままで良い。
そのまま使えばバレるし、剣を使う気は無い。斧はあってもいいかと思うが、それも無理に作るほどの物じゃない。どうした物かと考えて、出した結論は槍だった。
そのまま使う訳ではないが、ウォーハンマーの打撃と大型ナイフなどの斬撃はあるのだが、スティレットを溶かしたので刺突が無いのだ。それに柄の長い物の方が戦闘では有利である。
(私には関係が無いが、人間種としてはリーチが長い方が有利ではある。特に刺突は出が速い。だが、ウォーハンマーと違って力をセーブしなければいけないからな……)
骨で型を作って、そこに溶かしたウィリウム鋼を流し込む。冷えて固まったら取り出し、本体の牙で整えれば完成だ。本来の物は柄が2メートルほどに穂先が70センチという大型の槍だった。
それを柄と穂先合わせて2メートルの物に縮小。代わりに柄を太くして石突を大型化、更に穂先は30センチの大きな三角錐型にしている。これは傷口を広げ出血を増やす為だ。
ここまでの武器であれば、そうそう元の槍を勘繰られたりはしないだろう。意図的に同じ種類の武器にしているが、明らかにこの星では使われない形の穂先だ。これならば問題あるまい。
(私は神どもから教えられたから知っているが、ゴールダームの武具屋を色々見たものの、この型の槍は無かった。人間種を殺すという意味では、よく考えられた槍だと思うがね?)
人間種など10センチも突き刺されれば致命傷となる。その10センチも、真っ直ぐの物が10センチと、三角錐で深くなるにつれ広がっていく10センチは同じではない。
更に幅広になる事によって刺さりすぎを防ぎ、傷口を広げる事で出血を促し死亡確率を上げる。どのみち槍など敵を殺す武器なのだから、出来得る限り殺しに特化させるべきだ。
ゴールダームの武具屋には細長い穂先の槍が多かったのだが、軽くする為に穂先をあんな形にしているのだろうか? 本体が考えても答えは出ない。
人間種の世界には昔からこうしているからという、意味不明な考えがあるのだ。完全に思考停止なのだが、「古くからこうだから、これが正しい」という意味不明な言葉を吐く。
もしかしたらあの細長い槍も、古くから変わっていないだけかもしれない。ミクはそう思うのだった。
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翌日。朝起きたミクは準備を整え、レティーを抱いて食堂へ。大銅貨1枚を払って食事を済ませると、今日もゴールダームを出て盗賊退治に向かうのだった。
今日は南にアジトを持つ、<渇きの園>という盗賊団だ。名前から想像する事は出来るが、それが合っているかは分からないので決め付ける事はしない。とはいえジャンダルコだろうとミクは思っている。
南へと歩きながら気配を調べるも、盗賊らしき連中はいない。なので近くの森に入り、誰も見ていない事を確認したらピーバードの姿に変化。一気に森から飛び立った。
空を飛びつつ確認していると、西側の森の中で争っているのを確認。ミクは素早く近くの木に降り、そこから争いあっている連中の会話を聞く。
「くそ! こいつらエルフィンの連中だぞ! 気を付けろ、ここは森の中だから不利だ。それを理解して動け!」
「我らに森の中で勝つ気か? 片腹痛いわ!!」
「ぐぁっ!!」
「奴等の射線に入るな! 盾を持つ奴が前に出ろ!! 接近してしまえばこっちのものだ!!」
「ふん! 懐に入らせるほど愚かではない!」
「がぁっ!!」 「ぎゃぁっ!!」
「よし、良いぞ! こいつらは弓さえどうにかすれば何とかなる。優先して弓矢を潰せ! 我らの剣ならば容易く壊せる!」
「チッ! 面倒な事を!!」
どうやらエルフィン樹王国の者と、ジャンダルコ商王国の者が争っているらしい。エルフィンの方は緑や茶色の服を着て帽子を被っている。森に擬態しているつもりだろうか?。
それとは別にジャンダルコの方は、砂色のマントやターバンなどを身に着けている。更に持っているのは曲剣のようで、切れ味が鋭い。特に弓の弦を狙って切りつけている。
「おのれぇ、元は樹人族の癖に盗賊などするような者どもが!」
「はっ! 貴様らとてゴールダームに潜ませてるだろうが、我らが知らぬとでも思っているのか! 貴様らの手下の中には、攫って奴隷として売り払う連中すら居るぞ!! 随分と醜いなぁ!」
「何だと!? 我ら樹人族にそんな蛮族のような者はおらぬわ!」
「さて、本当にそうかな?」
「その減らず口、ここで永遠に開けぬようにしてやる!!」
エルフの側から襲ったようだが、理由は判然としない。そもそも理由を知るのが目的ではないと思い出したミクは、<渇きの園>のアジトらしき場所へと飛んでいくのだった。




