0384・説明の続き
「本当に酷かったわ。森の奴等って、同じ森の奴等以外の全てを見下してるのよ。アレを見たり聞いたら分かるわよ、クズというのがどういう存在なのかってね。そのうえ戻った両親は森の奴等には何も言わない癖に、他種族は見下すのよ? その時から両親でさえも奴等の同類にしか見えなかったわ」
「それはまた……ウェルドーザもキッツイ体験してきてるねえ。それでも両親は両親だし、大丈夫なのかい?」
「大丈夫も何も、私の両親は既に死んでるわよ? 皆と会う少し前だったかしら? たまたま戻る事があって様子を見に行ったら、流行り病で死んでたわ。近所の人達に散々言われたけど、哀しさも何も無かったわね。ああ、”エルフ”が死んだんだとしか思わなかったわ。もちろんエルフィンのエルフという意味でね」
「そこまで他人になってたら、そりゃ悲しみも湧かないだろうさ。唯でさえエルフは長生きするのに、そのうえ遠い人になってるんじゃ感覚的にはもう他人だね。まあ、それでも嫌になるよりはマシなんじゃない?」
「場合によっては骨肉の争いをする場合もあるって聞くし、それなら他人として関わり無しってなる方がマシかな? ついでに亡くなってる以上は、もう何も言う事も無いでしょうし」
「そうね。たまに夢で思い出すけど、朝起きた時の気分が悪くなるから思い出したくないぐらいよ。今思い出しても碌でもないのが分かるし」
「まあ、思い出したくないウェルドーザの話はここで切って先に進めるよ。森のエルフの頭のおかしい話を聞いた後、町の周囲を見回ってみる事にしたの。これは偶然だし、時間が余ってるからやろうって思っただけ」
「ミクがそんな言い方するって事は、何かあったって事ね?」
「町の周囲を調べていると、罠に掛かった魔物が死んでた。それ自体はおかしな事じゃないから【聖浄】を使ってアンデッドにならないようにしておいたんだけど……。同じ物が大量にあったんだよ」
「同じ………ですか? つまり罠に掛かって死んでいる魔物が沢山いたと? ……何故そんな事をしているのでしょうか、意味が分かりませんね」
「町の周囲から攻められないように罠を仕掛けてたら、それに魔物が引っ掛かったとか? 毒を使ってるみたいだし、簡単に死ぬんじゃない?」
「………どうも違うみたいだよ、アレッサ。なんかミクはアレッサの方をジッと見てるけど?」
「えー、そんな真剣に見られても女同士だから……っていう冗談は置いといて、わたしに何か関わりがあるって事よね。でも罠と魔物の死体に関わりなんて無いし、こっちからお断りしたいんだけど?」
「うーん。いまだにミク殿はジッと見てますね。となるとアレッサ殿の何かが関わっているのでは? 元々エルフィンの出身ですし、その辺りでしょうか?」
「私は僻地の村の出身なうえ、平地だし人間なんだけど? エルフと関わりのあるような事はないわよ。そのうえロリコンヴァンパイアに眷属にされた後は、エルフィンから離れてるからね。関わりなんて12歳以降は無い筈だし……」
「話の感じからしたら違うんじゃない? さっきからミクは変わってないし。となるとミクと関わるようになってから?」
「ミクに関わるって、あの<ソーライフキング>になった<狂乱王>に心臓をくり貫かれてからよ? そもそもアイツは【死霊術】でゾンビに「それじゃない?」なった3代目の王で……?」
「【死霊術】って死体を操れる筈。エルフィンの昔の王がそんな怪しげな魔法の研究をしてたって聞いた事があるわ」
「ウェルドーザ、正解。私も【死霊術】の可能性を考えて、第3の町を統治してる貴族の屋敷に侵入して喰った。その結果、【死霊術】を使う予定だった事が判明。貴族の家族も纏めて喰って帰ってきたんだよ」
「貴族の家族も?」
「さっきアレッサが言った、エルフィン3代目の王である<狂乱王>。こいつが【死霊術】の研究をしていて、この国には【死霊術】を纏めた書籍がある。そして王族や高位貴族は【死霊術】を学んでる事が分かった」
「「「「「「ええっ!?」」」」」」
その驚きと同時に輜重の馬車が出発した為、慌ててミク達は馬車に乗る。シングルホーンに指示を出すとミク達の乗る馬車も出発。前を追いかけて行く。
「マジかー………この国は腐りきってない? 高位貴族や王族が【死霊術】を使うとか、完璧に終わってるでしょ。そのうえ魔物をアンデッド化して使おうなんて、もはや人類の敵じゃない」
「これは駄目ですね。絶対に陛下に御報告せねばなりません。【死霊術】を使うような国だと認識しておかないと危険です。【死霊術】を具体的に知っている訳ではありませんが、絶対に碌な物ではないでしょうし」
「【死霊術】は確かにアンデッド化して操れるけど、術者が指示を出さないと碌な行動が出来ないし、手綱を外すと暴れ回るだけになる。暴れると言っても見境なしに攻撃するんじゃなくて、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、もしくは噛み付いたりという風に暴れるだけ」
「狂戦士のように暴れるんじゃなくて、走り回るという意味で暴れるだけね。じゃあ、そこまで危険は無い?」
「腐った肉が走り回る形で暴れるから、体当たりや噛みつきなんてされると、どんな病気になるか分からないけどね。それが危険じゃないなら、危険なんて無いと思うよ」
「いやいやいやいや。それは危険すぎるでしょ! なにその厭らしい攻撃は。普通に戦いなさいよ、普通に!」
「そんな者が軍に対して突撃してきたら最悪ですね。輜重に突っ込んで来たら、それだけで食料が駄目になってしまいますし、兵士に向かってきたら病気ですか。本当に【死霊術】というのは最低です」
「とことんまでにエルフィンのエルフって奴は碌でもない。特に森のエルフなんだろ? 高位貴族と王は。アタシには理解できないよ、【死霊術】を学ぼうなんて考える奴の頭の中がね」
「それが普通だし、普通の国でも却下するでしょ。アンデッドを使う国なんて、冗談でも何でもなく世界中の敵になる。そんな危険な事をするなんて、普通の感覚ならあり得ないって」
「普通じゃないからエルフィンのエルフなんだけどね。その中でも腐りきってるのが森のエルフで、最悪なのが高位貴族と王族なんだろうさ。<狂乱王>なんて、その名の通り元々王なんだし」
「何ていうか、<神敵討伐隊>が動きそうね? あのロリコンヴァンパイアと同じように滅ぼされるかもしれないのに、よくやると思うわ。それこそ1つ残らず資料や記憶が無くなるその日まで、執拗に探して殺しそうじゃない?」
「それはいいけど、関係の無い人がとばっちりを受けそうな気がする」
「少しでも疑いがあれば即座に攻撃してきそうなのが、何とも言えないんだけどね。あいつら最初だけは温和な態度で優しげなのよねえ。こっちがヴァンンパイアだと分かった瞬間、狂ったように襲ってきたのを覚えてる。いきなり狂うのよ、連中」
「まあ、遭いたくもない連中だから、これ以上は聞きたくないけどね」
「私からの話は以上かな? 色々な方に飛んだけど、【死霊術】を使ってアンデッドを嗾けてくる可能性は覚えておいた方がいい」
「即座に【浄化魔法】を使えばいいんだろうけど、使えない者も多いからね。ウチじゃルッテが使えるから問題ないかな?」
「私だって強力な【浄化魔法】は使えないから、当てにされても困るよ。そこはミクに任せた」
「私やアレッサにティアは使えるから、軍全体がパニックになったらそっちを優先しなきゃいけないんだけど?」
「あー、そっちがあったか。ならルッテに任せるしかないね」
「えー……」
そんな話の間も馬車は動いており、ちょうど話が途切れた時に馬車が止まる。どうやらこれ以上は進まず、ここから第3の町を攻めるらしい。
既に森に入っている為、ミク達も<鮮烈の色>も緊張感を持つのだった。




