表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
388/1113

0383・昨夜の説明




 最後尾の仲間の下に戻ったミクは、早速朝食作りを開始する。鍋に水を入れたら亀の干し肉と海老と蟹の干し身を投入し煮込みつつ、全粒粉と塩と水を混ぜて捏ね、生地を作ると休ませておく。


 煮込んで柔らかくなってきたら野菜を投入し、そのまま煮込みつつ、休ませておいた生地を薄く伸ばしてフライパンで焼く。チャパティが出来たら皆を起こして食事の開始だ。



 「ふぁ~~~あ! ……昨日の夜は警戒というか罠とかの監視に行ってたんでしょ? 敵さんは罠を仕掛けたりとかしてた?」


 「結構してた。何といっても、ここから2時間ほどで到着する町だからね。昨日の夜に仕掛けないと、朝になってから仕掛けても間に合わないよ。それに夜の内にやらないと、朝になってからじゃ気付かれる」


 「夜ならまだしも朝なら動いているのが丸分かりですからね。そうなれば、どう考えても怪しいのが分かります。罠の意味がありません。棒などで叩いて進めば、罠に掛かる事は無いのでは?」


 「それはそうだけど、その罠を調べる為に止まっていると、左右の森から矢を射かけられるんだよ。そういう戦いを得意としているのがエルフだからね。罠で足止めとはそういう意味でもある」


 「射線さえ通っていれば、後は矢を放つだけかー。なかなかどうして面倒臭い事をしてくれるわねえ。確かに軍の弱点を突く攻撃だけど、相手にやられたら実に面倒な攻撃じゃないの」


 「だからエルフィンの兵は<森の悪夢>と呼ばれているのでしょう。その高い防御を活かして森で守り、各国……特にジャンダルコで暗躍するのです。だからこそジャンダルコはエルフィンのエルフを憎んでいます。種族的な事もありますけど」


 「昨夜の事を最初から話すと、罠を解除しに行ったのはいいけど、早速後ろから尾行してくる奴等がいた。まあ、フィグレイオの斥候だけど」


 「なんで味方の斥候が後ろをつけてくんのよ。ミクを監視してた? それとも別に理由がある?」


 「単に私に仕事が回ってきた事に対する嫉妬だったよ。斥候の自分達を使わず探索者である私を使うっていう理由からだね。下らないとはいえ、人間種なんてそんなものとも思うけど」


 「何だか最初からおかしな話になってきましたね? もうちょっとまともな理由かと思いましたが、嫉妬に狂う者達には難しかったのでしょうか?」


 「ティアも容赦ないわねえ。とはいえ味方の足を引っ張るなんていう愚かな事を、それも嫉妬からやらかすんだから当然か。で、ミクはどうしたの?」


 「当然無視して罠を調べて撤去していったよ。ちなみに方法は透明にした触手を使って音をさせずにしていって、自分では簡単な罠を解除しているのを後ろの奴に見せてた」


 「あー、成る程ね。透明な触手なら見えないし、罠を解除するのも大量の手があるようなものかー。そりゃ罠も解除できるわね」


 「本当ですね。それで終わりですか?」


 「いいや? 敵軍の工兵が罠を設置してる辺りに近付くと矢を射掛けられてね。もちろん私じゃなくて斥候の連中。で、1人が矢を受けて死んで、残りは逃走していったよ。前に居る私が見つかってなくて驚いていたかな?」


 「気持ちは分からなくもないわね。前に居るミクが見つかってなくて、後ろに居る自分達が見つかる。後ろから尾行してた連中からすれば、訳が分からないでしょうよ」


 「ですね。パニックを起こしたのかもしれません。とはいえ味方を死なせているのですから、同情などできませんが」


 「そりゃねえ。嫉妬から後ろをつけていき、味方を死なせるって大失態じゃない。その時点で間違いなく、降格とかそんな話でしょ」



 食事が終わり片付けながらも昨夜の話を続ける。未だ出発もしないので、ミク達は食後の休憩のようなものだ。<鮮烈の色>も口を挟まずに聞いている。



 「話を続けるけど、流石に敵の近くじゃ人間の姿のままでは見つかるから、ムカデの姿に変わって、敵の工兵を麻痺させて本体空間に転送していった。工兵の連中は碌な情報を持ってなかったよ」


 「まあ、罠を設置しているだけですし、それをする程度なら大した情報は与えられないでしょう。変に重要な情報を与えても、敵に襲われ口を割られても困るでしょうし」


 「だよね。そもそも工兵っていうのは、戦ったりするより何かを作ったり設置したりする兵の事だもの。敵に襲われたら殺されたり、連れて行かれて拷問を受ける可能性が高いわ。なら、碌な情報を与えないでしょう」


 「うん、結果的にはそうだったね。斥候の連中も居たけど、それも大した情報は持ってなかったよ。工兵よりはマシだったけどね。そして罠を設置している工兵や斥候を全滅させて、更に進んでいった」


 「ミクなら余裕でしょうよ。むしろ邪魔な奴等が居なくなったんだから動きやすくなってるし、その状態ならミクが見つかる事も無いわ。どう考えてもやりたい放題じゃない」


 「その後にフィグレイオの斥候連中は戻ってきたよ? その隊長の奴が罠に引っ掛かって死んだけどね。振り子みたいに丸太が襲ってくる奴で、その丸太には杭がついてて毒が塗られてた所為で死んだんだよ」


 「何というか、隊長が死ぬって駄目じゃん。それもう隠せないわよね? 斥候が一人死んだ時点で余計な事をしなければいいのに……。嫉妬に狂ってる奴って本当に碌な事をしないのがよく分かる」


 「これはこれで姉上に報告しておいた方が良いでしょうか? 我が国の軍は対外戦争の経験などがありません。なので本当の戦争がどうなのかは、色々な物から類推するしかないのです。しかしそれで分かる事にも限度がありますので……」


 「特に戦争の情報なんて、そう簡単に手に入る物でもないしね。そのうえ何処で何があったか逐一書いてある資料なんて、それこそ国家の極秘資料でしょうよ。次に活かす為の物なんだし」


 「それかわざわざ集めてないかだね。いつの時点で何があり、その結果どうなったか。そこまで詳細に資料に纏める事は殆ど不可能だよ。作戦が進んでいる間だって刻々と変化してる。その変化の仕方と内容を正しく纏められるかといえば……」


 「絶対に無理ですね、想像するだけでも分かります。特に相手の変化なんて、斥候が相手の拠点に侵入して、ずっと見張って監視していないと無理でしょう。もしくは敵国にスパイとして送り込んでおくしか不可能です」


 「だよね。敵の変化まで纏めるなら、それしか無理でしょ。もしくは戦後に捕虜から聞き取るか。でも、負けた側が本当の事を喋るかと言えば……」


 「嘘しか吐かないでしょうね。怨み憎しみの相手に事実を話すなんて無いです。それに勘違いしている可能性もありますので、大量の人から聞いて情報を集めないと、正しい資料にはならないでしょう」


 「またズレてるから戻すけど、町の前まで罠の解除が終わった私は、時間の余裕もあって第3の町に侵入した。当然だけど見つからないし、見張りの奴等を喰ったにも関わらず誰も反応しなかったよ」


 「何をやってんのよ、何を」


 「起きている奴等から話を聞いたけど、まあ酷かったねー。平地のエルフも見下してたし、他種族に対してはもっと酷かった。あれは更生不可能だと思ったよ。森に押し込めて出さないか、皆殺しにするしかない。そうハッキリ思うほどに酷かった」



 ミクがそう口に出すと、流石にウェルドーザも口を開く。



 「それはね、本当にミクの言う通りなのよ。私は平地のエルフだけど、かつて向こうにある第3の町に行った事があるの、家族と共にね。その時も酷かったわ。ずっと陰でヒソヒソと悪口を言い続けてるの。それを聞かされた時に初めておかしいと思ったのよ」



 どうやらウェルドーザがまともになるキッカケは、森のエルフのクズっぷりを目の当たりにしたからのようだ。


 もしかしたら他のエルフも、そういう事がキッカケでエルフィンを出たのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ