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0380・森のエルフ




 ミクは街道とその左右の森の中まで調べつつ進んで行く。そしてついに第3の町の近くまでやってきた。それでも相手には気付かれていない。見張りが居るにも関わらず、その見張りは真剣な顔で見張りを続けている。



 (御苦労様だね。ここに居るのにまるで気付いていない。とはいえ今の私はムカデの姿だし、見つかったとしてもムカデと思われるだけかな? いや、透明なムカデなんておかしいと、流石に怪しまれるか)



 そんな事を考えつつ、出来得る限り音を出さずに罠を解除していく。町のすぐ近くにまで罠が張り巡らせてあり、やはり町に近付くほど罠の数は多い。聞いていた通り、罠に引っ掛かった者を矢で射殺すのだろう。


 ここまでの罠の数だと確かに厄介だと言えるし、もし進軍中に罠に掛かれば全軍が停止してしまう。そこを狙われると厳しい。左右の森から一斉に矢を射かければ結構な相手を倒せるだろうし、手当たり次第に射っても当たるだろう。


 こういったゲリラ的な戦術をとられると、確かに大軍の利は活かせないし、相当の数で押し潰すなどしない限り攻める方は苦労をする。東の者達は相当の不利を強いられているかもしれない。その代わりに苛烈な報復をしているかもしれないが。


 守備兵をことごとく殺害するくらいはやっているかもしれないし、食料の買い叩き程度はやると思われる。仲間の悲惨な死を目の前にすれば、その程度はしないと兵の溜飲は下がらないかもしれないからだ。



 (今回は東の国々やフィグレイオから攻めてるからアレだけど、でもトラップなんかで死ぬと納得はいかないだろうね。正々堂々と戦って死ぬならまだしも、罠と弓矢じゃ納得はいかないと思う)



 エルフィンの防衛戦とはそういう戦争だから仕方ないのだが、それでも感情的に納得できるかは別だ。流石のミクもその程度の事は分かるし、大凡おおよその予想ぐらいはつく。その程度の心の機微は分かるのだ。その程度は。


 町を前にして大胆にも動き回り、罠をどんどん解除していくミク。振り子のように丸太が飛んでくるものは、触手で持ち上げてそっと下ろし、落とし穴は上の蓋を取って露出させておく。底に剣などが設置してある場合は、引っこ抜いて収納した。


 そんな事をしながら進んでいるが、町の前の地面は予想以上に落とし穴が多い。これは撃退した後の事を考えているのだろうか? そう疑問に思うほど、町の前は穴だらけである。



 (確かにこれなら進軍は遅れるだろうけど、その事に意味があるのか疑問があるね。後で埋めるにしたって一苦労だよこれは。とはいえ敵を追い返すのが先だと言われれば、その通りとしか言えないんだけども)



 妙に落とし穴が多いが、朝になって気付いた相手が再設置しかねないなと思いつつ、ミクは全ての罠を解除して回る。それが終わったのはいいのだが、未だ時間は深夜であり、罠を設置していたエルフ兵は全て喰らってしまった。


 それ以外の連中は町の中に篭もって出てくる様子が無い。これはどうしたものかと思いつつ、せっかくなのでちょっとだけつまみ食いをする事に決める。



 (明日穴を埋め戻されたりしたら厄介だからね。兵士であれば敵対している者だ、犯罪者かどうかに関わらず敵対している相手であれば喰っても問題ない。……うん、問題ないね)



 若干言い訳っぽいものの、そう決めたミクは町の壁をするすると登っていく。ここの壁は石壁であり、今までの町のような木の壁ではなかった。森の中の町だ、木の壁では魔物に壊される可能性が高いのだろう。


 ここでは木の壁では不十分なのは分かる。森の中の魔物という事は、最悪は熊の魔物を想定しないといけない。熊系の魔物が相手だと、木の壁では簡単に壊されてしまう。それは容易に想像できる事でしかない。


 ミクは石の壁を登り、壁の上に上がったら左右を確認する。見張りの兵士達はそこまで多くなく、またフィグレイオ軍の居る方角しか見張っていない。別の方向から魔物が攻めてきたらどうするつもりなのだろうか?。


 そんな事を思いつつ見張りに触手を使って麻痺毒を注入し、そのまま本体空間へ転送していく。見張りが居なくなっても気付かれていないのか、町の中にいる兵士達は寝ているようだった。


 起きている兵士は居るものの多くはなく、異変に気付いている者もいない。【気配察知】持ちなどには気付かれると思ったのだが、何故か全く気付く様子が無い。これは……町だからと調べもしていないのだろうか?。


 ミクは起きて雑談をしている兵士に近付き、話を聞く事にした。近付かなくても聞く事は可能だが、周りのいびきが五月蝿く聞き取りにくいのだ。



 「フィグレイオの軍が攻めて来ているらしいが、獣どもはこの町を越えられると思っているのか? 幾らなんでも頭が悪過ぎるだろう。この町がどれだけ難攻不落か理解できていないとは……獣の頭じゃ分からないんだろうな」


 「仕方ない。奴等は獣でしかないし、我々のように優れている訳でも無い。野蛮さでここまで来れている以上は、平地では強いんだろうさ。とはいえ獣が勝ったのは平地の連中でしかない。所詮は森に住めない程度の奴等だ」


 「能力も知恵も無く、平地に逃げた連中か……獣に負けるとは無様な奴等だ。森の中で生きられない軟弱者どもだから仕方ないのだろうが、我らの壁にもならんとはな」


 「お前が言う通り、軟弱者どもなのだから仕方あるまい。その程度の弱者に何を期待するというんだ? 所詮は森に生きる崇高な我らの捨て駒連中だぞ。期待する方が間違っている」


 「それはそうだな。森に住む我らとは違い、むしろ野蛮な黒肌連中に近い奴等。我らエルフの中でも出来損ないの者どもでしかない。期待するだけ無駄か」


 (散々に言っているけど、確かにこいつらの会話を聞いたら更生するのは不可能だと思えてくるね。ここまでの差別と見下しは矯正できないだろうし、何処の国もする気はないだろう。という事は……)



 ミクは頭の中でシミュレーションするが、何度考えても森に押し込める以外に無いと思える。平地のエルフもクズだが、森のエルフはそれを上回るクズだった。こりゃ駄目だと愛想を尽かされるのも仕方ない。


 そう思われる程に酷く、こんな連中はどうにもなるまい。



 (あれだね、アレッサが言ってた都とか都会に住む者のおごり。それと差別主義が合わさって酷い事になってるんだろう。自分達は都会の者だと田舎者を見下すように、国内の平地のエルフも見下してる。これじゃどうにもならないね)



 人間種とはここまで醜いものかとミクは驚くが、別に驚く事でもない。それしかすがるものが無い連中は、勝っていると思い込めるものに必死にすがるものである。


 むしろそれは弱さの証なのだが、すがりつく者は理解しないのだ。何処に住んでいるか、何処の出身かなどつまらない事でしかないのだが、哀れにすがる者ほど気にする。


 その様は実にみにく滑稽こっけいであり、周りから嘲笑あざわらわれているが、本人は欠片も理解しない。むしろ都会者を見下そうとしている哀れな連中と思い込む者も居る。


 現実を認識しないという点では、ここのエルフどもと何ら変わらない。すがるものがそれしかないというのは、本当に無様で憐れな事である。



 (だから人間種とも言えるんだけどね。訳の分からないプライドにしがみ付く滑稽こっけいな生き物。実に正しく人間種を表してる。ま、全員がそうではないけども)


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