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0376・不思議な肉




 ゲーターを解体したミクは、予想以上に身が少ない事にガッカリしている。体の大きさと身の少なさが合っていない。納得は出来ないものの。まずは【清潔】【聖潔】【浄滅】を使って綺麗にし、焼いていく。


 熟成もさせずにいきなり焼いてもいいのか戸惑うが、ウェルドーザいわく大丈夫だとの事。ゲーター釣りの名人達は、獲ってきてすぐに捌いて食べるらしい。



 「なんだ、凶暴な魔物と言いながら獲れる人が居るんじゃない。だったらそこまで凶暴でも何でも無いでしょ。大袈裟に言い過ぎ」


 「いや、その名人も最後はゲーターに食われて死んだんだけど? それに釣りって言ったでしょ。つまり竿で釣り上げるのよ、このゲーターを。陸の上ならまだ戦えなくもないから、まずは陸に上げるしかないし、その為に釣るのよ」


 「成る程ねー。っと、塩コショウだけではあるけど、それなりに肉としては悪くない色をしてるかな? 実際に食べるまでは何とも言えないし評価は下せないけど」



 その後も焼いていき、十分に焼けたと思える段階でフライパンから皿に移す。さて食べようか思ったら、横からセリオとドンナが取っていった。全部で9個焼いていたので構わないが、一口大じゃ足りないとか言い出しそうだ。



 「わたし達も貰うけど、まずはミクが食べてみてよ。流石に先に手を出すのはマナー違反だからさ」


 「了解、了解」



 そう言ってミクは口に入れて噛み味わっていく。咀嚼すればする程に首を傾げるミク。それを見て、もしかしたら食べてはいけない物だったのかと、躊躇ためらうアレッサ達。



 『なんかビミョーなお肉だね。別に不味い訳じゃないけど……あっさりしてるのかな? なんか美味しさが足りない気がする』


 『そう。何と言うか、肉の旨味が足りないの。それに……これって本当に肉なのかな? 何か違うような……』


 「んー……これはあれだね。魚肉と獣の肉を合わせたような肉っていうのが一番分かりやすいと思う。魚肉が混じってるから、獣の肉だと思うと拍子抜けするんだよ。魚肉と思えば濃厚な味だと感じると思う」


 「という事は不味い訳でも、食べちゃ駄目な訳でも無いのね。ああ、ビックリした。ミクが首を傾げるってどんな危険な物かと思ったわよ。とりあえず食べてみましょうか」


 「そうですね。それにしても魚肉と獣の肉を合わせたようなお肉ですか。いったいどんな味なのか気になりますね」



 アレッサやティアに<鮮烈の色>のメンバーも食べるが、口に入れて咀嚼する程に首を傾げていくのだった。



 「むー……これはアレね、獣の肉と考えない方がいいわ。獣の肉と考えると明らかに物足りないし味が薄い。でも魚の肉と考えれば、確かに味が濃厚なのよねえ」


 「ですね。なんとも言えませんけど、ですが獣の肉のように熟成させないと食べられないという訳でもありません。それはこのお肉の良いところでは?」


 「それはそうかもしれないけど、だったらそれだけの為に<沼地の悪魔>を倒すの? って考えると微妙かな。お腹が減ってれば狙うだろうけど、そうでもないなら無理に狙う相手じゃないね」


 「そうだね。流石にこの味で危険な魔物は狩らないかな。もっと美味しいなら分かるけど、コレならウサギ肉の方がマシだよ。凶暴な割に身も少ないみたいだし、鱗は簡単に切れる程度だし」


 「それは勘違いし過ぎ。ミクの持っている解体ナイフがおかしいのであって、普通はゲーター専用の解体ナイフを使うのよ。薄刃になっていて切れ味鋭く、尻尾のつけね辺りから切っていくの」


 「鱗とか無視して切って剥いでたね。まあ、あれが出来るのなら一番良いんだけど、ワイバーン製だから出来るのであって、普通の鉄なら難しいでしょ」


 「それワイバーン製じゃなくて、第7エリアで出てくる巨人製だから。第7エリアには偽のボスとして巨人が居るって言ったでしょ。ワイバーン製の武器でも殆ど傷付かない、異常に頑丈な巨人がね」


 「「「「巨人の……」」」」


 「そう言えば攻略地図は第6エリアで止まってたね? 誰も調べられないからかな?」



 どうも第7エリアの地図をミク達が提出した事は知らなかったようだ。もしかしたらラーディオンはミク達しか行けないので情報を貼り出していないのかもしれない。ま、いつ出すかはギルドの自由なので、ミク達に文句は無い。


 ゲーターの肉は適当に解体し、夕食に使う事で決まった。そこまで美味しい肉ではないが、それでも3匹狩ってきた以上は食べなければ損である。なので、嵩増し食材として入れる事になったのだ。


 1匹はミク達で、もう1匹は簡易食料の中にブチ込む事で決定し、素知らぬ顔をして他の奴等に出すつもりのようである。それでも食べられるだけマシであろう。



 ◆◆◆



 兵士達も帰ってきて夕方が近くなってきた。そろそろ夕食の準備にとりかかるという事で、ミクは全粒粉と塩と水を取り出すと、アレッサとティアに一から教えていく。今日はチャパティなので難しくはない。


 2人に教えつつミクは鍋で食材を煮込んでいき、フライパンでゲーター肉の表面を軽く焼いてから煮込む。臭味が出るかもしれないので一応やったのだが、それ以上の意味は無い。


 十分に練ったら一休みさせ、それが終わったら薄く伸ばさせる。意外にもこの工程で苦戦している。それは綺麗に伸ばせないからだ。仕方なくミクは本体空間で短めの麺棒を作り、右腕を肉塊にして転送する。


 一瞬の早業だったので誰にも見えていないが、本来なら誰に見られているか分からず危ない事だ。確認はしているのだろうが、見られれば一発アウトなのを分かっているのだろうか?。


 短めの麺棒を2人に渡し、それで均一に伸ばすように教える。実践して見せると何となく分かったのか、上手く滑らせながら伸ばしていく2人。


 十分に伸ばせたら後はフライパンで焼いていくだけだ。獣脂を溶かしてそれぞれに焼かせていく。ミクの方は既に出来上がっているので、後は2人が焼き終わったら食べるだけである。


 準備を完了させた辺りで焼き終わった為、早速食事を開始するミク達の下にシャルがやってきた。



 「今から食事だったのかい? それはすまないね。こっちの用件は1つだから素早く終わらせるよ。簡単に言えば、ミクには最前線のその前に行って夜間の警戒を頼みたいんだ」


 「夜に前へ……つまり奇襲がまたあるか、それとも何かさせたい事がある?」


 「ああ。実は昼間の内に斥候専門の連中が罠を見て回ってるんだけど、向こうも明日あたし達が攻めてくると知ってる筈だ。となると、罠を設置するのは今日の夜しかない。何故なら第3の町までは軍が遅いと言っても2時間ほどで着くんだ。この距離だと罠を仕掛けるラストチャンスは今日の夜しかない」


 「まあ、そうだろうね」


 「それだけじゃない。斥候専門の奴等は罠が無かったと報告してきた。幾らなんでも罠を仕掛けないって事は無い。奴等の得意なのはそれなんだ。となると……」


 「今日の夜に人手を使って一気に仕掛けるって事か。事前に仕掛けないのは、潰されるのと警戒されるから。そして今日の夜に一斉に設置して、明日の進軍時に一気に嵌めるってトコかな?」


 「こっちもそう読んでる。だからこそミクに警戒と殺害を依頼したいんだ。ミク一人なら好き勝手できるから、他の奴等には近付くなと言ってある。敵に見つかっても困るからね」


 「まあ、邪魔が居なければ好き勝手できるのは間違いないね。それに居てもしょうがないし、何の役にも立たない。依頼内容は分かったし、大して難しい事でも無いから、ちゃんとやっておくよ」


 「すまないけど、頼むよ。ミクなら確実だからね」



 そう言ってシャルは戻って行ったが、アレッサは納得できない顔をしていた。理由は自分達が不寝番をしなければいけないからだ。


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