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0034・ランク13とは?




 アイテムバッグに手を出したバカは放っておき、ミクは宿へと移動する。中へと入って食堂に行き、大銅貨1枚を払って大麦粥を食べていると、イリュがやってきた。



 「今日は盗賊を喰いに行くって言ってたけど、どうなったの? ……あれ? 鞄が変わってる?」


 「盗賊を襲いに行く前に大きな鞄を買ったんだけど、盗賊のアジトにアイテムバッグがあったから貰ってきた。結局、大きな鞄は殆ど使ってない」


 「あらら……それはともかく、盗賊は無事に倒せたみたいね。まあ、負けるとかはこれっぽっちも思ってなかったけど、盗賊を見つけるのも容易かったのかしら」


 「特に難しくなかったよ。何と言っても生命力が隠せない以上は、どこに生き物が居るかは簡単に分かる。死んでる奴は分からないけど、そっちは瘴気の気配で分かるから問題なし」


 「まあ、確かに瘴気は分かりやすいけど、代わりに生命力とやらは全く分からないわ。ミクにとっては簡単でも、この星で誰も出来ない事ってありそうね。そこから疑われるかもしれないから気をつけなさいよ?」


 「既に変なのに目を付けられた可能性がある」


 「どういう事?」


 「今日最初に向かったのは東だったんだけど、そこには<黒熊団>とかいう盗賊が居た。誰かを襲おうとしてるみたいだったから、私は無視して盗賊アジトへ移動。そうしたら丁度出発する前だった」


 「ふんふん、それで?」


 「出発して誰も居なくなったアジトの物を全部本体空間に転送していたら、簡単に負けたのか盗賊のボスが戻ってきた。襲った奴を連れて」


 「なにそれ? <黒熊団>って50人ぐらい居たんじゃなかったかな……それがあっさりやられたの?」


 「そう。襲った相手はフィグレイオ獣王国の<雪原の餓狼>とか呼ばれてる女将軍」


 「……それは駄目でしょう、やられて当然よ。<雪原の餓狼>っていえば、フィグレイオ獣王国において最強とも言われる女将軍であり、一代限りの伯爵じゃないの。あまりの強さと手柄で女伯爵になった人物よ? そんな相手に盗賊如きが勝てる訳ないじゃない。いったい何を考えていたのかしら?」


 「何でも、盗賊団の後ろに付いている奴等が破滅させられるから、襲わなくちゃいけなかったみたいだね。それと、盗賊のボスはフィグレイオ獣王国の元貴族か何かで、テリオルヴ家という家の者だったみたい」


 「テリオルヴ……? ああ! 裏切られた家!! 一番前で指揮をとり、最後まで大規模討伐で最前線に居続けた伯爵家だった筈。総大将である王族が真っ先に逃亡して、大混乱に陥った現場を何とか纏めた人物だった……んじゃなかったかしら」


 「ふーん。確かに最も大きく裏切られた家とか言ってたね」


 「大規模討伐の最後にテリオルヴ家の当主は死んでたと思うんだけど、それに対して褒賞や名誉を与えなかったどころか、王族を危険に晒したとかで降爵したのよ。それに激怒したテリオルヴ家は、獣王国を出たんじゃなかったかな?」


 「<黒熊団>っていう盗賊団は、とにかくフィグレイオ獣王国の商人だけを狙ってたらしいね。更には貴族の後ろ支えがあった。何やら色々起こりそうな気がする」


 「仮にもし獣王国で内戦でも起きたらどうするの?」


 「そんなの喰いに行くに決まってるじゃない。戦争に参加してもいいけど、できれば自由に動きたいから探索者として行くかなぁ。で、戦場に放置されてる死体を喰う」


 「………まあ、それは好きにすればいいと思うけどね。話を戻すと、<雪原の餓狼>に目を付けられたの?」


 「多分だけど、そうだと思う。顔は出してないし蜘蛛の姿だったんだけどね。何故かこっちを認識してるみたい。何を根拠にしてこっちを疑ってるのか知らないけど、厄介そうなのに目を付けられた」


 「厄介って……まさか、ミクでも勝てないの?」


 「いや、勝つだけなら余裕だよ。私が負けるなんてあり得ないから。ただ、あの女を喰っていいかが分からない。喰っていいなら喰うんだけど、駄目ならこっちからは手を出せない」


 「ああ、そういう事。ミクにもそういう弱点がある訳ね。弱点というか、食べちゃいけない奴は手出しが難しいかー。そこは私も守られてるところだから何とも言えないけど、<雪原の餓狼>は厄介ねえ」


 「貴族とかの権力だと、いちいち面倒臭い事になるかもしれない。それに、正直に言って嫌がらせを繰り返してきたら殺すよ? 私は」


 「<雪原の餓狼>って、しつこいから飢えてるって言われてるのよ。ミクに絡んできたら、間違いなくしつこいでしょうね。そして行方不明となる、と」


 「消えたのを行方不明というなら、そうなんじゃないかな? 私の本体空間か肉の一部になってるだろうけど、敵対してきた者に容赦する気もないしね」


 「まずは向こうに動きがあるまで放っておくべきね。こちらから焦って動く必要なんて無いわよ」


 「じゃあ、そうする。午後からは第3エリアかな? 盗賊団の連中、結構お金持ってたし」


 「それは良かったわねえ……おっと、そろそろお昼も終わりだし、私も仕事に戻らないと」


 「私もダンジョンに行ってこようっと」



 本体は既に数え終わっているが、<爆裂団>は小銅貨18枚、中銅貨2枚、大銅貨128枚、小銀貨21枚だけだった。この金額では次の季節まで悩む筈である。


 お金も少ないうえに買うのも難しいとなれば、魔物を狩って食べるしかないのは当たり前である。主食である穀物を買うので精一杯であろう金銭しかなければ、深刻そうに話すのも仕方ない。


 実際、顔を突き合わせて深刻な顔で話し合っていたのだから、上層部の2人には危機感があったのだろう。既に命を終えているので、もう不安になる事もないが。


 ミクは宿を出るとダンジョンまで行き、第3エリアの魔法陣に乗る。いつも通りの光の後、第3エリアの森を進んで行く。


 気配や生命力を感じながら、怪しい連中を見つけてはナイフとスティレットで殺害していく。人間種が相手なら暗殺スタイルの方が手っ取り早いのだ。


 今までならばメイン武器と盾を持ち歩かなければならなかったが、今はアイテムバッグがあるので入れておけば問題ない。なので戦闘に対する武器選びは格段にしやすくなった。


 素早く仕留め、レティーに脳を食わせて残りは本体空間へ。それをバレないように行いつつ、居なくなったら次の階層へ。そうやって繰り返し、3階でカルティクに出会った。



 「あら? ミクがここに居るって事は、ここより上は……」


 「少なくとも今は居ない筈だね。また入ってきてたら知らないけど、明らかに怪しい奴等は終わってる。3階はまだ終わってないけど」


 「そう。私はいつも通り、気配を消して怪しい奴等を記録よ。それを提出だけど、ここが昔から一番犯罪者が多いのよ」


 「森だし、死体はダンジョンに吸収される前にゴブリンが食べるだろうしね。そうなると誰かに殺されたのか、ゴブリンに殺されたのか分からなくなる。犯罪者にとっては都合の良い場所だよ」


 「だからこそ私がこうやって監視してるのよ。表向きはランク9だけど、私の本当のランクは13なのよね。ランクが10以上の奴は、大抵ギルド内の仕事をしてるから注意しなさい」


 「えっ!? そうなの?」


 「そうよ。他の人には言っちゃ駄目なんだけど、ランク10より上の者は、基本的にギルド内部の特殊な依頼を受けられるの。内部監査を始めとした裏の仕事をね。もちろん全員がやってる訳じゃないけど、可能性は高いって覚えておいて」


 「もしかしてランク10以降って、そういう依頼をしないと上がらない?」


 「その通り。だから10以上のランクの者は、裏仕事をした事があるって事。13まで来ると、相当の数を熟してきてるって証明なのよ。だから9だと偽ってるわけ」


 「ふーん……」



 探索者チーム<鮮烈の色>のスカウト、ウェルドーザはランク13だと言っていた。となると裏の仕事を多くしてきた事は確定だ。あの人物は何者なのだろうか?。


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