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0364・門の破壊完了




 フィグレイオ軍の魔法使いから【火弾】が飛んでいくものの、着弾地点では威力が衰えすぎており、町の守備兵の【風壁】に簡単に蹴散らされている。


 これが弓矢であれば落下時の加速も合わさってそこまで威力は落ちないのだが、魔法は術者から離れれば離れるほど威力が減衰してしまう。仕方がない事ではあるものの、やはり相手はエルフ、簡単には突破させてくれないようだ。


 それを見ているガルドクスの表情も厳しい。フィグレイオの軍は精強ではあるが、それは歩兵が精強なのであって、魔法使いはそこまででもなかった。これは各国の軍の特徴なので諦めるほかない。


 ちなみにゴールダームはスキル持ちが多いのが特徴であり、エルフィンは魔法に強い者と弓兵が多い。ジャンダルコは砂漠の為に騎兵が多く、カムラは斥候が充実している。そしてドルムは歩兵が強い。


 フィグレイオの歩兵は足の速さと攻撃力であり、ドルムの歩兵は防御力と体力が自慢だ。それぞれの国において種族も考え方も違う為、このような違いとなって表れている。



 「むう……やはり我が国はどうしても魔法が弱い。特にエルフどもと比べると差が大き過ぎるな。仕方がないとはいえ、町の門を突破するのは骨が折れる。相談役殿はどう思われますかな?」


 「仕方がないと諦めるしかないね。あれもこれもと欲張ったとして、手に入るかといえば入らない。これは種族特性だからねえ。かといって陥とした町のエルフを軍に入れるかといえば全力でお断りだ。あいつらは見下す事しかしない」


 「スヴェ……相談役の言われるように、これが我らの国だと思い、地道に努力をさせた方が万倍マシですな。あのクソエルフどもを入れても軋轢あつれきにしかならぬのは明白。しかし現場を分かっておらぬ阿呆が何を言うか……」


 「それ自体は仕方ないさ。あんた達が教育していくしかないだろう。掛ける予算を減らせば負け、無茶な編成にすれば負ける。当たり前の事を当たり前だと言わなきゃいけない。それも将軍職に居る者の努めだよ」


 「確かに後継に譲って、後ろで見守っている方が良いですな。ちょうど良い退き方を考えておかねば。さて、魔力も底を尽きかけておりますし、そろそろ呼んでいただけますかな?」


 「だね。ミク達に言ってこよう。3人とあたしが居ればすぐに開くさ」



 そう言ってシャルはアリストラを連れて後方へと移動して行く。それを見送った後、幹部達はガルドクスに質問をするが、ガルドクスは明言を避けた。



 「お主らも分かっていようが、世の中には口に出せぬ事がある。相談役殿の事も口には出せぬ事なのだ。生きていたなど誰が言える? もしそれが公になってみよ、我が国が引っ繰り返りかねん。残念ながら誰も得をせんのだ。むしろ諸外国に付け入る隙を与えてしまうわ」


 「「「「「「………」」」」」」



 流石に軍事に携わる者達である、その危険性はすぐに理解できた。全ては下らない事をした前の宰相とマヌケな王の所為なのだが、それを言っても始まらない。それでも幹部達の腹の中には、納得できないものが渦巻くのであった。



 ◆◆◆



 シャルがミク達を連れて戻ってきたので、ガルドクスが説明をする。



 「そなたらには町の門を破壊してほしい。相談役殿は出来ると言っておられたので頼めるか?」


 「構わないけど……シャル、どうするの? 私一人でも破壊できるけど、それをするとマズい?」


 「マズいどころの騒ぎじゃないねえ。各国から引き抜きに遭うか、それとも暗殺者を送り込まれるのは確実さ。まあ、ミクが殺されるなんてあり得ないし、報復が待っているから色々と危険なんだけど。それはともかく、適当に小さな魔法で壊してくれればいいよ」


 「了解、了解。それじゃ適当に小さいのを連打しようか。魔法の練習と思えばちょうど良いね」


 「<ユキフラシ>に比べれば余裕でしょ。アレを倒すのだって相当苦労する筈なのに、誰かさんは一撃で炭化させたからね。流石にあの威力を見せるのはマズいし、私達が使うのもマズいでしょ」


 「そうですね。出来なくはないですけど、待っているのは危険人物扱いでしょう。流石にそれは面倒事を引き寄せるだけなので止めておくべきです」



 そんな話をしつつもゆっくりと歩いて行き、戻ってくる魔法隊と交代するように、敵の攻撃範囲のギリギリまで近寄る。そして4人は、一斉に【火球】に魔力を篭めて飛ばしていく。


 そこまでの魔力は篭めておらず、着弾するだろうと思える程度である。ただし4人共に魔法を連射しており、それが止まる事は無い。


 町の守備兵も交代しながら【風壁】を使うが、逸れて着弾したものの威力がバカにならず、逸らす事しか出来なかった。【風壁】の魔法は名前の通り、風の壁を作って遠距離攻撃を防ぐのだが、あくまでも逸らす魔法でしかない。


 威力を減衰させる訳ではない為、逸れた【火球】が着弾し、その場所から燃え広がる恐れもあった。その為、防衛側の守備兵は急遽別の魔法に切り替えて防ぐ。それは【水壁】の魔法だ。


 これは水で守る為、飛んでくる物の威力を減衰させる事が出来る。しかし、魔法をそのまま放つのでは魔力の消費が大き過ぎる。その為、魔法を使う際に必要な物を用意しておくのが基本だ。


 風であれば殆ど何処にでもあるからいいのだが、水となると別である。更には相手の魔法を防ぐだけの水を維持するのは、【風壁】よりも遥かに消耗が大きい。そして維持していなければ水は下に落ちて使えなくなる。


 必死で【水壁】を維持し続ける町の守備兵側と、暢気のんきに魔法を撃ち続ける4人。暇になったのかミクの隣で大きくなり、一緒に【火球】を放ち始めたセリオ。それを後ろから見て驚くフィグレイオ軍。


 結局のところ、この魔法の選択ミスにより自滅した町の守備兵。ミク達は殆どの者の魔力が枯渇するまで魔法を撃つだけで終わってしまったのだった。



 「何だかなぁ………ま、人間種としては頑張った方なんだろうけど、バカバカしい結果で終了とはね」



 ミクがそう言う後ろから、フィグレイオ軍の歩兵が突撃していく。既に門は焼け落ちているのでいいのだが、守備兵の大半が魔力枯渇でダウンしているのが分かるミクは「戦闘にはならないだろうな」と思っている。


 実際、歩兵の邪魔にならないように移動した先で、ミクだけではなく全員が呆れていた。門を破らせたくない気持ちは分かるが、その結果が守備兵の大半が戦えない状況なのだ。守る意味はあったのだろうか?。


 後から考えると疑問しかないのだが、当時は守るという事で精一杯だったのだろう。それしか考えていないようだったし。



 「門を壊してくれて助かった。とはいえ、何故そのような顔に?」


 「ミクが言うには町の守備兵は魔力の使いすぎで、大半が魔力枯渇で倒れてるってさ。もはや碌な抵抗は無いだろうねえ。どうしても門を守りたかったのは分かるんだけど、それで守備兵が使えないんじゃ……意味があったとは思えないよ」


 「なんとまあ……」



 ガルドクスも話を聞いて呆れている。普通は魔法での防御が無くなったあと、激しい抵抗を征して勝利するのだ。しかし大半が魔力枯渇で倒れているとなれば、碌な抵抗など出来まい。


 あまりにもあまりな状況に何とも言えなくなるのは当然で、歩兵達の活躍の場が微妙に無くなっているのもプラスされており、余計に何とも言えないガルドクス。しかし、味方の被害が軽微だという事を考えると決して悪くはない勝ち方である。


 それを含めて何とも言えないガルドクスは、シャルと昔の話をしつつ制圧を待つのだった。


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