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0358・フィグレイオ軍に合流




 不寝番を決めて夜の警戒をするのだが、前の馬車からはミクが行う事になった。それぞれの馬車から1人ずつ出す事になり、ミクは一番最後だ。つまり朝方まで不寝番をする。


 それが決まった時には既に薄暗くなっていたので、不寝番以外の者は全員が寝てしまう。明日も移動なので疲れを残しても仕方がない。


 不寝番以外の全員が寝た後も、ミクは瞑想の練習で起きている。目を瞑っているだけで寝てはいない。今までからそうだが、眠る必要がない生き物は眠れないのだろう。


 だからこそ、せめて瞑想というもので精神を休めようとしているのだが、これは未だに上手くいっている気配が無い。休んでいるかもしれないし、休んでいないのかもしれない。本当にあやふやなままなのである。


 そのまま不寝番が起きて見張っているのを確認しつつ、ミクは瞑想の練習を続ける。ちなみに焚き火などはしていない。それは灯りを見つけると襲ってくる魔物が居るからであり、焚き火が必ずしも魔物を遠ざける訳ではないからだ。


 次の不寝番に変わるも何か行動を起こす訳でもなく、交代の時間が来てミクの番になった。先ほどの不寝番が寝転がったが、ミクは座ったままジッとしている。特に動く気がないので動かず、朝が来るまで動く事は殆どなかった。


 流石に全く動かないのは起きていたら怪しまれるので、多少は座り方を変えたぐらいの動きではあるが、怪しまれないように気を配った。そして夜が明ける。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 日の出と共に明るくなり始め、ようやく朝になった。いつもと変わらず瞑想の練習をしていただけのミク。どうせ眠れないのだから、いつも通りに練習していても迷惑を掛ける事は無い。


 野営での地面が合わなかったのか、早々に起きる探索者の面々。毛布を敷いていたようだが、ベッドと違って寝にくかったようである。挨拶をしてくるのでミクも挨拶を返し、他の面々が起きるのを待つ。



 「おはよー……何ていうか、寝にくい割には眠れたわね? 朝まで一度も起きなかったし、どうなってるのかしら?」


 「おはようございます。やはり毛皮を敷いているのが大きいのでは? 他の方の中にはなにやら眠たそうな方も居ますし」


 「おはようさん。あたしもそうだけど、毛皮を持っていない奴は眠れないんじゃないかい? 世の中にはいつもと違うってだけで眠れない奴も居るらしいしねえ」



 セリオは未だ寝たままだからスルーし、ミクはレティーとドンナを連れて狩りに出かける。生命反応を探ればすぐであり、今日の朝はビッグボーアだった。これは素早くウォーハンマーを叩きつけ、一撃で殺した。


 そこからドンナに血を吸わせ、十分に飲んだら次はレティーだ。血抜きが終わったら解体ナイフで内蔵を取り出し、心臓と肝臓以外を捨てる。壺に入れたら皆の下に戻り、フライパンと鍋を用意していく。


 鍋では亀の肉を入れて戻しつつ、アイテムバッグから板を取り出してまないたがわりにする。全粒粉と塩と水を混ぜて練り、少し置いたら薄く伸ばす。獣脂をフライパンで溶かしたら焼いていき、両面焼けたらまないたの上へ。


 鍋に野菜と海老の干し身と大麦パンを入れて煮込んでいき、終わったら加熱を止める。フライパンで全員分のチャパティが焼けたら、先ほどの心臓と肝臓と鹿の肉を焼いていく。十分に火が通ったら鍋の中へ投入して完成。



 「今日は小麦を薄く焼いたヤツね。ミクはチャパティと言ってたっけ? とりあえずお腹減ったから食べましょう」


 「私達だけこうやって食べてますけど良いのでしょうか?」


 「別に構いやしないさ。他の奴等だって食べられる野草を見つけてきては入れてたし、皆それぞれに工夫するもんだよ。そもそも支給される以上の物を食いたきゃ、自分で用意するのが当たり前なんだからね」


 「そうね。用意してないヤツが悪いのよ。この鹿の肉なかなか美味しいわねー。獲って一晩置いたところだから? それとも上手く血抜きしてあるからかな?」


 「血抜きはブラッドスライムが居るから当然ですし、お肉は一晩は置いておかないと食べられないんでしたっけ」


 「本当はもうちょっと熟成してもいいんだけど、別に無理して熟成させる必要もないからね。腐らせるのもアレだしさっさと食べるに限るよ。欲しかったらあげるけど要る?」


 「「「「「欲しい!」」」」」



 <鮮烈の色>も肉が食べたかったらしく、ミクが持つ鹿の肉を切り取ってはフライパンを借りて焼いていた。そして豪快に食べていく<鮮烈の色>の面々。色気より食い気を如実に表しているようだ。


 食事後、少し休んで出発していく馬車。簡単にはフィグレイオに合流できないので時間が掛かるのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 それから2日後。国境のへりからエルフィンに侵入していき、フィグレイオの後方に合流する事が出来た。派兵は全部で2000人。結構な大所帯だが輜重が300人程いるので、実際に戦闘をするのは1500程のようだ。


 残りは衛生兵なので戦闘はしないらしい。フィグレイオの後方に近付いた際に誰何すいかされ、担当の騎士が来てくれて話してくれている。くれているのだが……。



 「ゴールダームの皆さんにお願いしたいのは、後方での輜重の護衛です。場合によってはエルフィンの兵が輜重を強襲してくるかもしれませんので気をつけて下さい」


 「戦争なんだから、魔物だけじゃないって分かってるよ。こっちはやる事の内容さえ聞けばしっかり熟すさ」



 <鮮烈の色>のファニスがそう言うが、相手の騎士は微妙な表情をしていた。もちろんファニスの方に顔を向けているのだが、見ているのはミク達だ。流石に仕方ないなと思いつつ声を掛けるミク。



 「久しぶりだね。確かアリストラだっけ? ヴェスの玄孫やしゃご。あれからどうなったのかと思ってたけど、騎士で居続ける事は出来てるんだね」


 「ええ……その、お久しぶりです。あれから色々ありましたが、ウルバトル男爵家には嫌疑が掛かっていませんので騎士を続けています。私としては王城の発表は信じていませんが」


 「そうじゃのう、あれでは誰も信じまい」


 「ひゃっ!?」



 アリストラが後ろを見ると、好々爺と表現するのが適切なニコニコした顔の老人が居た。しかし目線は鋭いので、もしかしたら軍の上の方の人物かもしれない。



 「なんだい、ガルドクスじゃないか。まだ戦争に引っ張り出されるとはねえ、さっさと引退して若い奴に譲ってやりゃいいものを」


 「……お主、ワシが何者か分かってそのような事を言うておるのか?」



 途端に好々爺という顔は無くなり、虎系種族の鋭い目つきと結構な威圧感が飛んでくる。それを鼻で笑いつつ、シャルは答えた。



 「おやおや。かつて<ガッライドの合戦>で小便漏らしながら逃げた小僧が、随分と一端の口をきくじゃないか」


 「なっ!? お、お主、何故その事を知っておる!? あれはスヴェ………まさか」


 「おっと。久しぶりに懐かしい顔を見たからか、ついつい口が滑ったね。そういえば今のあたしは体が違ってたんだった」


 「……やはりスヴェストラ将軍ですか。亡くなったと聞いておりましたが、あのスヴェストラ将軍が亡くなるなど何かの間違いだと思っておりました。まさに考えていた通りだったとは」


 「ま、こっちも色々とあってね。国から邪魔者扱いされた以上は国に居られないし、今は戻る気も無い。あと数百年ぐらいしたら戻るかもしれないけど、積極的に国に関わる気は無いね」


 「数百年?」


 「ああ。あたしはこの体になった事で不老となった。あと何百年でも生きられるようにね。あんた達の選んだ道がどうなるか、しっかりとあたしが見届けてやるさ。フィグレイオという国が無くなる、その日までね」



 そういわれたガルドクスという老人は、何とも言えない顔をしながら溜息を吐いたのだった。


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