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0356・フィグレイオ軍に向かって移動開始




 色々な食料店を回り、大銀貨2枚分の食料を買ったミク。店主に訝しがられたが、戦争に参加しに行くと言うと納得の表情をしている。特にフィグレイオがエルフィンを攻めるという話であり、ゴールダームが戦争をするわけではないという部分には安堵したようだ。


 流石に正規軍が戦争をするとなると色々な物が値上がりするし、それは避けられない。商人としては儲けのチャンスであるが、食料品の値上がりは国民の反感を買う。場合によっては襲われる可能性もあるので遠慮したいのが本音らしい。


 一部の商人は儲かればいいという者も居るが、大半の商人はそこそこ儲かればそれでいいと言う。むしろ妙な因縁だとか、怨みや憎しみが残る方が厄介らしい。そういうものが元で死ぬという事があるらしく、儲けの為に命を犠牲にする者は多くないとの事。


 まあ、商人にも家族は居るし生活がある訳で、安定しているのが一番なのだろう。ミク達は食料を買うついでに水を樽に汲んで【浄滅】を使い、【凍結】で水の表面を凍らせて収納していく。水も必要な物なので多くを収納しておきたい。


 そんな事を終わらせてギルドに戻ると、既に行く者は決まっていたようだ。ミク達はラーディオンに呼ばれ、紙に名前とサインを書いていく。参加者の名前などを残しておかないと、そんな奴等は知らないと言われかねないのだ。



 「戦争に参加するっつったって色々あるんだ。妙な貴族とかに声を掛けられてもついて行かなくていいとか、探索者が前で潰されないとかな。昔に探索者を使い潰すような事があって以降、そういう作戦なんかには参加しなくてもいい事になっとる」


 「後方の作業なんかだろ? 探索者が主にするのは。前線で使い潰せないなら、手柄の立てられる所には配置しないって事さ。手柄を探索者に持ってかれても困るんだけど、それは探索者がどうこうってより、戦後に突き上げを喰らうから仕方ないんだよ」


 「何で功績を与える所に配置したとかグチグチ言われるんだろうね。気持ちは分からなくもないけど、だったら探索者以上に活躍しろって事にならない?」


 「探索者も同じさ。実力の無い者に限って騒ぐんだよ。実力のある奴は時の運とか色々なものが絡むって知ってるからね、仕方ないと納得する。しないのは、それすら分からないマヌケなんだよ。とはいえ黙らせなきゃいけない訳でね。どうしても探索者には後方の事をしてもらうしかない」


 「それは別に良いんじゃない? いちいち前に出る気もないし、後方でどうなるか見ててやりましょうよ。どのみち十分にお金はあるんだし、戦争に参加して功績を得ようなんて思ってないしね。むしろエルフィンがどうなるかの見物がしたいんだし」


 「エルフィンはここで滅んでいただいた方が、各国にとって都合が良いのですよね。だからこそ、しっかり滅んだと確認しておきたいところです。なので参加はしますが、別に戦いたい訳でもありませんので後方の方が楽で助かります」


 「何故かこういう事には来るんだね。今回はアタシ達が代表っていうか纏め役になったよ。よろしく」


 「<鮮烈の色>が纏め役? <竜の牙>はどうしたのさ」


 「あっちは第5エリアの引率ばっかりやってるよ。ほら、アイテムバッグを持ってかれても困るから。あと、高ランクの人達も何人かアイテムバッグ持って引率してるみたいだね」


 「ふーん。まあ、とにかく<鮮烈の色>についていけば良いみたいだから気楽で助かるよ。どうやって行くのか知らないけど」


 「向こうに行くのは馬車でだよ。全員を運ぶのはそこまで難しくないし、ゴールダームはいつも何処かからの要請で動くからね。相手国から費用は出るんだ。これが他の国だと参加は自費でなんだから、そりゃ断るよねえ」


 「本当に酷いわよね。自費で参加して功績も無いところに配置されるんだから、無駄骨なうえ儲かりもしない。該当の国の探索者が参加しない筈よ」


 「ウェルドーザはエルフィンが滅ぶかもしれないけど、いいの?」


 「むしろ清々するわ。私はアレが嫌でエルフィンを出たんだもの。自分達が世界で一番偉いとか、自分達の国が世界の中心だとか、あまりにも狂い過ぎてるでしょ。誰かが叩き潰さなきゃいけないのよ、誰かがね」


 「その時がやっと来たってところなんだろうね。ウチだとウェルドーザが一番乗り気なんだよ。だから参加を決めたってところさ。そしたら責任ある立場に置かれちゃったんだよ」


 「あらー、お気の毒。まあ、そこまで参加する訳じゃないみたいだから、気楽でいいんじゃない? 別に適当に後方で動いてればいいんだろうし」


 「まあね」


 「そろそろ出発しろー! 向こうに着くのが遅かったら、それだけで五月蝿い連中とか居るからなー!」



 ラーディオンの声により、ミク達は馬車に乗って出発する。馬車と名が付いているが、それは馬車と呼ばれているだけで馬が牽いている訳ではない。今回はシングルホーンと呼ばれる牛が牽いている。


 このシングルホーンは温厚で特に暴れる事も無い魔物だ。今の季節だと適当な街道近くに生えている草でも食べさせておけばよく、結構なパワーをしている。魔物なのでパワーがあって当然だが、代わりに速度は速くない。


 とはいえ移動速度としては十分なので使われている事の多い家畜である。魔物とはいえ人間種に飼われているなら家畜であり、野生種とはまた別だ。そんなシングルホーンに牽かれて進んで行く。


 ミク達だけなら走って進むのだが、今回の戦争参加者には色々な探索者も混じっている。例えばオドーなどは何故か1人で参加しており、他にも<竜善>まで参加していた。何故なのかは分からない。


 ミク達は一番前の先頭車両に乗っており、他の知り合いはバラバラなので話が聞けないのだ。なので休憩時に聞こうと思っている。


 ゴロゴロと車輪が転がる音がしているが、猛烈に暇であり何もする事が無い。ミクは座って目を閉じ瞑想の練習をしており、アレッサとティアは<鮮烈の色>と雑談中。シャルは話を聞きつつセリオの相手をしている。



 「それにしても暇だねえ。仕方がないとはいえ、合流場所に行くだけでも一苦労かい。シングルホーンはそこまで遅くはないけど、フィグレイオとの合流はエルフィンに入ってからだろう?」


 「そうですね。出来得る限りフィグレイオ側に寄って進む事になります。ゴールダームとしてはエルフィンを侵略するつもりはなく、領土も欲していませんからね。エルフィンの国民と戦いになっても困りますし」


 「そういう遺恨や禍根は当事国が持つものであって、探索者を派遣しただけの国が持つものじゃないからねえ。そもそも戦争時に他国の探索者に依頼するなんて普通にある事なんだから、文句のつけようもない事さ」


 「それが分かればいいんだけど、何処も感情でものを考える。気持ちは分からなくもないけど、こっちに怨みを向けられても困るんだよ。だからアタシ達は国境のへりを移動していかなきゃいけない」


 「入ってないから文句を言われる筋合いはない。攻めたフィグレイオが占領したところを通っただけ。攻めたのはフィグレイオであってゴールダームではない。いちいち大変だけど、これも必要な事」



 <鮮烈の色>のルッテが話すも、本当に面倒臭そうな表情をしている。真っ直ぐ行けば簡単にエルフィンに向かえるのだが、大きく迂回する形で進まねばならない。それが面倒なのだろう。


 ミクは瞑想の練習を続けており、本体空間にて色々な道具を作っている。そんな事をしているから瞑想の練習が進まないのだが、必要な物なので仕方ない。大きな鍋やフライパンに薬缶やかんなど。


 鉄はずっと余っていた物があったので使い、それを左手を肉塊にして出しつつアイテムバッグに仕舞う。<鮮烈の色>には見られても問題ない為、気楽に本体空間から物を出すミク。



 「「「「………」」」」



 何も言わないからと言って、誰も気にしていない訳ではないのだが……。


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