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0354・アルトム新生




 十分に涼んだ後、魔道具から魔石を抜いて停止させる。魔石を入れる場所はそれなりに大きいので、ゴブリンの魔石なら5個ぐらいは入る。元々ゴブリンの魔石は大きくなく、親指の爪ぐらいの大きさしかない。


 適当に詰めておけば一晩なら確実に保つだろう。問題は数千個の邪魔な魔石である。アイテムバッグを集めるなら、コレがネックになるのは間違い無い。別に集めなくてもいいのだが、片手間で集められるので集めている。


 ミクにとっては勿体ないと言うより、流れ作業で抜き取っているだけなのだ。だからこそ今のルーティーンをいちいち崩したくないし、いつ必要になるか分からないので得ておく事は悪い事ではないと思っている。


 そんな事を考えながら食堂へ行き、注文したら大銅貨15枚を支払って席に座る。1人分多かったのでアレッサとティアが奇妙に思っていると、ミクの右腕が肉塊に変わり、中から赤髪黒目の人物が現れた。


 その人物が美男子だったので驚くアレッサとティア。しかしながら何処かで見たような耽美系の顔なので、もしやと思いミクに尋ねるアレッサ。



 「ミク。もしかしたらと思うんだけど……そいつってパルマナ?」


 「そう。とはいえ今の名前はパルマナじゃないけどね」


 「ああ。私の名前はアルトムだ。元々の名前はアルトムといい、パルマナとはあのヴァンパイアが名付けたものでしかない。今の私がその名を名乗る意味も無いのでな」


 「姿が変わっているからか、おかしな暗示か洗脳は無くなったようですね。おかしな言動はしていませんし」


 「アルトムはそっちのテーブルね。で、おかしな言動だったのは<魅了の呪い>を直接肉体に刻み込んでたからだね。よくもまあ、あんなメチャクチャな事をするもんだと思うよ。それも心臓近くにあったからね。もしかしたらアレッサにもあったのかも」


 「そんな物があったの!? 通りでおかしな状態になってた筈。つまり全員が狂わされてたって事かしら? それともあの女だけは違ってた?」


 「可能性としては無いではない。あの女は眷属であるにも関わらず誰も信用しようとしていなかった。まるであのヴァンパイアすら信用していないかの如き態度だったし、それは今思い出してみても変わらない。ティエ……アレッサもそうじゃないか?」


 「言われてみれば、そんな態度だったような……。あんまりあの女と関わった記憶が無いのよねえ。わたしは<狂乱王>に心臓をくり貫かれて滅びかけてたし、その所為か記憶が曖昧なトコとかあんのよ」


 「心臓をくり貫かれる? いったい何をやってたんだ、そんな事になるのは流石におかしいだろう。かつてから変な行動をする事があったが、また変な事をしたのか?」


 「失礼ね! 別に変な事じゃなく、狂わされてたからクソヴァンパイアを復活させようとしてたのよ。で、<黒の墓石>っていう闇ギルドのトップであるリッチに頼みに行ったってわけ。まんまと利用されたけどね」


 「そいつはノーライフキングになったけど、私が散々遊んでやった後で【浄滅】を使って滅ぼした。だからもうこの世には居ないよ」


 「貴方ならノーライフキングでも敵ではないでしょう、神様と戦えるという尋常ではない強さなんですから。それこそ我々からすれば如何にもならないノーライフキングでも、あっさりと滅ぼせるのは当然としか思えません」


 「パ……アルトムはミクの本体空間に連れて行かれたから知ってるって訳ね。それより顔も何もかもが変わってるけど、もしかしてシャルと同じ事をしたの? ワイバーンで?」


 「いや、今回はワイバーンじゃなくて巨人だね。巨人素材と私の血肉を少し混ぜて作った肉体に、首から上をくっ付けた形だよ。で、少し前まで融合に掛かってたけど無事に完了したってわけ。これからどう生きるかは本人の自由だよ」


 「いいの? こいつがおかしな事をするかもしれないわよ?」


 「犯罪などをしたら喰うと言ってあるから大丈夫でしょ。駄目なら喰うだけだし」


 「しませんよ。せっかくあのおぞましいヴァンパイアから解放されたというのに、下らない事をして殺されるのは困ります。それに<隷属の紋章>を付けられてますから下手な事は出来ません」


 「ああ、あんたも付けられたんだ。別に何かを命じられる事もないけど、<隷属の紋章>が付いている以上は居場所が常にバレるからね。逃げる事は不可能なんだよ」


 「知っているし逃げる気は無い。というより、その状況になれば逃げる事自体が無意味だ。喰われるのは確実なのだから、大人しくした方がマシだろう。拷問されてから殺されるなどゴメンだ。なので犯罪は絶対にしない」


 「あら? 知らない者が居るけど、いったい誰かしら?」



 シャル達が現れたがイリュがアルトムの座っている対面に座って話してきた。ミク達の隣のテーブルはそこしかないので当然だが、何故かアルトムを気にしていない。そして注文を終えたシャルやカルティクもすぐにやって来た。



 「あん? この男………もしかして昨日のパルマナってヤツかい? 何で顔が、って……まさか」


 「貴女と同じでしょうね。顔が変わってるけど、何故か耽美系からは抜け出せていないわね? 黒髪だったのが赤髪に変わっているし、前よりも身長が伸びて筋肉が増えた?」


 「肌の色は変わってないね? あたしは変わったんだけど、ミクは人によって千差万別って言ってたから、あんたは変わらなかったんだろうさ。それはともかく、ワイバーンの素材をわざわざに取りに行ってまで変えてやるなんてね」


 「いえ、それが違うらしいですよ? ミク殿いわく巨人の素材で肉体を作ったとか。場合によってはシャルティア殿以上の肉体かもしれませんね」


 「あの巨人の素材で肉体をねえ……皮膚はともかく、骨とか内臓はシャレになってなさそうだ。それを活かせるのかは知らないけども」


 「骨とか内臓を活かすかどうかは別にして、それなりに使える男だから生かしたんでしょう?」


 「本人が生きたがったのと、姿を変えたいっていうのもあって変えたんだよ。ついでに巨人の素材はどうなのかとも思ってさ。実験的な部分も無いではないけど、成功するのは分かってたからスペック的な部分だね。実験は」


 「巨人素材の肉体はどうなんだい? ワイバーンよりは強かったから優秀だと思うけどね、あたしは」


 「どうだろう? 難しいところかな。巨人素材は優秀だけど、その分密度が高い。分かりやすく言うと、普通の人間種よりは重くなる。前より少し身長が伸びたけど、それでも170には届かない。その身長で体重が70キロある」


 「重いわねえ………そんなに細い体をしてるのに、どこに肉があるのかってぐらいに重い。それが密度が高いって事なのね?」


 「そう。骨も肉も重いから、全体的に重くなるのは自然なこと。これは仕方ないんだけど、あの巨人は尋常じゃないくらいに重かったって事になる。戦闘中はそんな感じしなかったし、転送する時も気にならなかったんだけどね。どうも重かったみたい」


 「あれだけ強かったんだし、あれだけの耐久力してたんだ。密度が高いのも分からなくはないし、重いのは仕方ないさ。それよりも、これからどうするのかの方が重要じゃないかい?」


 「確かにそれはそうね。ミクが連れて行くの? それとも好きにさせるの?」


 「好きにさせるよ。<隷属の紋章>は刻んであるから、何かあったら喰いに行くしね。悪どい事をしないなら、好きに生きればいいと思う」


 「ふーん……」



 なにやらイリュが考え込んでいるようだが、他の面々は無視して食事を終わらせていく。聞いても仕方がないし、考えが纏まれば口に出すのだ。待っていれば済む。なので誰も気にしないのであった。


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