0353・まさかのアイテムバッグ
夕食後。部屋に戻ったミクは2人を脱がせて綺麗にし、【浄滅】を使った後で服を着せる。2人をベッドに寝かせたら自分のベッドに狐の毛皮を敷き、テーブルの上に<冷房の魔道具>を置いて魔石を入れてセット。
起動したら放っておき、ミクも寝転がったら瞑想の練習を行い時間を潰すのだった。
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夜。2人や町が寝静まった後に目を開けたミクは、ムカデの姿になって窓から出ると一路ダンジョンへ。第7エリアへと進み、透明なオークの姿になって転移。ピーバードの姿になると、すぐに巨人の下へと進む。
再びのボス戦。巨人の首を切り裂き、血を噴出させて殺害すると肉で覆って死体を転送する。ダンジョンを脱出したら今度は第3エリアへ。
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ここは本体空間。巨人の死体を本体が弄りつつ、何故か【浄穿縛】が消えていて大人しいパルマナが神妙な顔で座っている。本体は触手を使って死体を解体しつつ、パルマナに話を始めた。
『さて、巨人の死体も来たし肉体の創造を始めるか。ところでお前は生まれ変わるという事でいいな?』
「はい、お願いします。まさか頭を狂わされてあんな事をされていたなんて……。永き時を過ごしたようですが、あのようなおぞましい事をさせられていたなど……」
『まあ、相手はヴァンパイア・ロードだ。人間種では簡単には抵抗できんだろうし、眷属にされれば主を褒め讃えるようになる。残念ながら眷属にされた段階で抗えまい』
「その所為で私は500年以上に渡り、あのヴァンパイアにおぞましい事をされ続け……。貴方が呪いを解いてくださらなければ今でも狂ったままだったでしょう」
『それはそうだろう、私もまさか<魅了の呪い>を刻んでいるとは思わなかったぞ。アレッサも、もしかしたら何処かに刻まれていたのかもしれん。まさか呪いを直接肉体に刻むとは私も予想していなかった。挙句、上手く循環しているからか、そうと知っていなければ気付かない程に微細な呪いしか漏れていなかったからな』
「私はそういった事には詳しくなく、基本的には雑用が多かったので何をしていたかまでは知らず……。ウェルトロッサなら知っていたでしょうが、あの女も青緑の炎が噴出して灰になり消えていきましたので、間違いなく滅んだ筈です」
『だろうな。それはともかく、これで一応は完成だ。後はどうなるか分からん。暇な間に教えてやったが、私を作ったのは神だ。なのでお前が悪事を働く場合、私はお前を滅ぼす。それ以外は好きに生きるがいい』
「はい、新たに生まれ変われることに感謝を。それと私の本名はアルトムと申します。しがない商人の家に生まれた三男でしたが、母親が男爵家の娘だったので顔が良かったのでしょう。まさかその所為でこんな事になるとは……」
『それは仕方あるまい。それにお前の持つスキルも狙われたのだと思うぞ? 商人としては優秀なスキルだろう、【記憶】と【計算】はな。記憶力が良くなるスキルと素早く計算出来るスキル。どちらも有用だ』
「その所為か様々な雑用をやらされました。しかし私の記憶に呪いなどの記憶が無いという事は、信用していなかったか悪用を恐れたかでしょうね。今さら覚えていても困りますが……」
『まあ、言いたい事は分かるな。余計な知識がある所為で狙われる事も喰われる事もある。余計な物は持たぬに限る。さて、そろそろ始めるがいいな?』
「お願いします」
その瞬間、本体はパルマナことアルトムの首を刎ねる。そして素早く首を新たな肉体にくっつけると、そのまま自身の細胞に任せて融合を見守るのだった。
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こちらは第3エリアの分体。9階まで進んできたものの、ここには寝泊りしている探索者は居なかった。流石に泊り込みで攻略をするにしても、9階で寝泊りはしないようだ。
ミクは9階のゴブリンを虱潰しに殺害し、100体を超えた段階で出てきたのは大きなオークだった。やはり予想通りにオークが来たかと、内心で喜びながら触手で貫く。
オークキングなら中型のアイテムバッグが出るだろうと予想している為、後は実際に確かめるだけだ。しかし1度目は大型のアイテムバッグが出る筈なので、2度目までは分からない。
せっせとゴブリンを倒し5体目の大きなオークを倒すと、オークキングと思しき大型の個体が現れた。
「グォォォ、オ?」
咆哮を上げようとしたので、即座に触手で首を刎ねたミク。巨人よりも弱いのだから当たり前だが、至極あっさりオークキングの首は飛ぶ。どれだけの再生力をしていても、首が飛べば即死は確実だ。違うのはミクか神ぐらいであろう。
それは横に置くとして、オークキングを倒すと上から大型のアイテムバッグが降ってきた。それをゲットして本体空間に転送すると、オークキングから魔石を取り出す。それ以外は素材としても使えないのでスルー。
再びゴブリンを倒していき500体。最後の大きなオークを倒すと、再びオークキングが登場。今度は咆哮も上げさせずに首を刎ねるミク。オークキングよりも中型のアイテムバッグの方が重要なのだ。
ワクワクした気持ちでいると、上から降ってきたのはまさかのウエストポーチだった。
(こっちだとは思わなかった! ゴブリンとコボルトは小型だったから、オークは中型だと思ったのに! ……まあ、これはこれで役に立つからいいけどさ)
ウエストポーチ型のアイテムバッグは、探索者にとって物凄く有用なアイテムバッグだ。となると探索者には売れるだろうが、今のところミク達は必要としていない。
どうしようかと悩んだものの、小型のアイテムバッグを取りに行く事に決め1階へと戻っていく。ピーバードの姿とムカデの姿を併用し、階段途中で寝ている探索者を起こさずに戻った。
1階で再びゴブリンを倒し続け、出てきたゴブリンキングを倒す。やはり小型のアイテムバッグしか手に入らないが、ミクはそれを取りに来ているので問題なし。再びゴブリンの虐殺を始める。
ゴブリンの虐殺を始めてから小型のアイテムバッグを2つ手に入れ、飽きたのと朝が近くなってきたので宿へと戻る。ダンジョンを脱出し、<妖精の洞>の3人部屋へ。魔石が無くなっていたので補充し、魔道具を起動する。
魔石は大量にあるが、魔石を合成したりなどは出来ないので悩むミク。壊して粉にして固める……これぐらいなら誰でも想像するし、魔石が合成できないとなっている以上は違うだろう。
試しに魔力を篭めてみるも反応は無し。大量の魔力を篭めると砕けるのは知っているので、わざわざそこまでの魔力を流す気は無い。しかし数千個もあるゴブリンの魔石、何とか有効に活用できないかと悩むミク。
やはり売ってしまった方が手っ取り早いだろうか? かといって大量に流すと魔石が値崩れするし、それはミクの望むところではない。困っていると、どうやら朝になっていたらしくアレッサとティアが起き出した。
「おはよう。日の出は過ぎてるけど、そこまで時間が経ってないから」
「おはよう。となると朝食にはまだ早いかー」
「おはようございます。少し部屋の中でゆっくりしていましょう。涼しいですし」
冷房の魔道具を使っているので涼しいのは当然なのだが、どうもこの魔道具は部屋の室温を一定に保っているっぽい。何処で感知しているのかサッパリだが、面倒なミクは調べる気も無かった。
そんな冷房の魔道具をボーッと見ているアレッサとティア。何故かテーブルの近くにある2脚の椅子に座り、涼しさを近くで満喫するのであった。




