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0350・襲撃




 流石にコレは要らないとなり、ミクに革鎧を返す。するとミクは革鎧のうち表面が毛皮の方をズタズタにして捨てた。普通の革鎧の方はラーディオンに預けるらしい。



 「ワイバーン製の鎧と殆ど変わらないって言えば、それなりに取りに行く者も居るかと思って。あと、私要らないし、欲しいならあげようかとね。持ってても仕方ないしさ」


 「確かに持っててもしょうがないわね。わたし達には特に必要ないし、かといって貰ったラーディオンも困ると思うけど……ああ、娘に渡すか」


 「オルディアーラ殿ですか。彼女は未来のギルドマスターでしょうし、命は大事にしてもらわなければいけません。なら渡すのが親心というものでしょう」


 「ま、とりあえず出ましょうか。ここに居ても仕方がないし、ようやくこれで第7エリアに来なくても済むわ。まあ、ミクはともかくアレッサとティアは大変だったでしょうけど」


 「そりゃね。私達が殆どを攻略したんだから、大変なのは当たり前でしょう。ミクと同じで暇だった事もあるんだけどさ、それでも大半を攻略したのはわたし達なのよ」



 アレッサは納得いかないという顔をしているが、別に怒っている訳ではない。自分達がメインで攻略したんだから、そこは忘れてもらっては困ると言っているだけだ。まあ、事実なのでシャル達も胸を張るつもりはない。


 奥にある脱出の魔法陣で脱出し、外へと出たミク達。未だ昼と夕方の間くらいの時間である。そんな時間にギルドへの道を歩いていると、突然横からアレッサ目掛けて突撃してきた者が居た。


 6人は並んで歩いていたのだが、アレッサは列の左の端におり、建物が並んでいる側を歩いていたのだ。その建物の近くから突然襲ってきたものの、横に居たミクが素早くアレッサを抱き上げて離し、横蹴りで襲撃者を蹴り飛ばす。


 襲撃者は当然吹っ飛んだが諦めず、立ち上がると再び襲ってきた。何がなにやら分からないものの、慌ててシャルやティアが前に出て邪魔をする。すると襲撃者は立ち止まり、アレッサを憎悪が篭もった目で睨みつけた。



 「あれ? あんたパルマナじゃない! もしかして生きてたの!? あの白い服の集団に追い駆けられて!」


 「ティエリータ! よくもあの方を裏切り、のうのうと暮らしているな!! 我がどんなに苦しんであの者どもから逃れたと思っているのだ! 貴様は絶対に許さんぞ!!」


 「こいつもしかしてヴァンパイア? 何でアレッサを襲ってくるのか意味が分からないけど、詳しく話してくれる?」


 「黙れ下郎が!! 貴様などに、ウギャァァァ!?!!?!?」



 カチンと来たミクはついつい【聖浄】を軽く放ち、それを受けたヴァンパイアことパルマナは悶絶している。相当に痛むらしく地面を転がってのた打ち回っているが、ミクが情け容赦をする事は無い。



 「お前が何処の誰かなどは極めてどうでもいい事。所詮はヴァンパイア如きの癖に何を勘違いしているのか。とりあえず何故襲ってきたかを話せ」


 「ぐぅぉぉぉおのれぇ!! 下等な、ウギャァァァァ!!?!?!」



 下らない言葉を吐く度に【浄化魔法】で大きな傷を負うのだが、その程度の事すら気付かず見下しているようだ。頭が悪いにも限度があると思うが、そんな事すら分からない程に頭が悪いらしい。



 「これがヴァンパイアねえ……何ていうかさ、ヴァンパイアってもうちょっと頭が良かったと思うんだけど、どうやらあたしの勘違いだったみたいだ。そもそも【浄化魔法】が使える相手じゃ不利に決まってるだろうに」


 「このヴァンパイアは特筆して頭が悪い気がするけどね? そもそも主が居なくなったヴァンパイアは独立する筈だし、そうなれば他のヴァンパイアなんて気にしなくなる筈なんだけど……」


 「もしかしてアレッサと同様に、こいつも何か洗脳っぽいのを受けてるんじゃないだろうね? アレッサの主だったヴァンパイア・ロードは、何かおかしな事をしていたようだからさ」


 「どちらかと言うと、絶対に忠誠を持たせる感じの暗示か洗脳か呪いね。どれかは分からないけど、そもそもヴァンパイアの秘術自体に詳しくないから分からないわ。どうする、ミク?」


 「天下の往来で襲ってこなきゃどうにでも出来たんだけど、既に色々な奴に見られてるからね。仕方ないか………【浄穿縛】」


 「ガァァァァァァ!!?!?!!」



 【浄化魔法】の【浄穿縛】とは浄化の力を針や杭とし、それで四肢を貫き縫い止めるという魔法だ。貫かれている間は碌に体が動かせず、絶え間ない痛みに苦しみ続ける事になる。ちなみにアンデッド等にしか効かない魔法だ。


 ミクは痛みに苦しむパルマナを肩に担ぐと、そのままギルドへと連れて行く。苦しみの呻き声が聞こえるが無視して歩きながら、パルマナの足にコソッと何かをしているらしい。透明の触手が出ている。


 探索者ギルドへと入ったミクはギルドマスターに用がある事を受付嬢に話し、2階へと行ってラーディオンに時間があるか聞いてもらう。ミクが人を肩に担いでいるからか周りは異様な目で見てくるが、ミクが見回すと途端に目を逸らした。


 その後は何も無く、受付嬢が戻ってきて案内してくれるのに従い2階へ。ラーディオンの執務室に入ると、パルマナを適当に床に下ろす。



 「お前さんから話があるのは構わんのだが、その男はいったい何だ? 妙に顔が良いヤツだが、何処かのクソ貴族にケツを掘られそうな顔だな?」


 「パルマナは実際あのクソヴァンパイアに尻を掘られてたわよ? そういう意味では可愛がられてたヤツだけど……」


 「「「「「「………」」」」」」



 ミクとアレッサ以外の全員が何とも言えない顔をしている。この星では同性愛に関してタブーではないが、そもそもとして子供を作る為に異性愛が普通ではある。とはいえ同性愛者が迫害されたりする事は無い。


 とはいえヴァンパイアにして尻を愛でていたという事は、そういう事の為に眷属にした可能性がある訳であり、同時に耽美系の顔をしている以上はそういう事で確定とも言えるだろう。



 「そもそもアレッサの主であるヴァンパイアの名前は何? 今まで一度も聞いた事がないんだけど……ワザと言わないのか、それとも言いたくないだけ?」


 「口に出したくもないのが正しいかな? もういちいち関わりたくないっていうか、思い出したくもない」


 「アレッサの主の名前は?」


 「……キュレウルドム・ディアコネント・サヴォンディマニエ様だ。主の名を口に出さぬなど、貴様はやはり眷属にするべきではなかった」


 「痛みに耐えながらよく喋ったね。まあ、<隷属の紋章>を刻んだから喋って当たり前なんだけど」


 「そんな事してたのかい。まあ、この暗示というか洗脳というか呪いの感じだと、聞いてもまともには喋らないだろうけどねえ。魂に刻まれて命じられたら逆らえないし、ヴァンパイアでも抵抗できないんだから流石だよ」


 「担いでたのはミクだからコソッとやってたんでしょうね。透明トカゲの能力で体が隠せるらしいし、触手を透明にされたら分からないわよ。何しろ見えないんだし」


 「こいつから話を聞き出す事が出来るのは分かったけど、これからどうするの? どうせ操られてるヤツだし、このまま処分しても良いと思うわよ?」


 「それ以前に何がどうなっとるのかワシにはサッパリなんだが……誰か説明してくれんか?」



 何故か忘れられているようなラーディオン。彼の執務室なのに、執務室の主が現在スルーされている。にも関わらず、誰も気にしていないという……。


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