0349・第7エリア・真のボス戦終了
「武器を持ってニヤニヤしてる危ない女が居るわね?」
「うわっ!? ビックリした。危ないって、別に危なくはないよ。久しぶりにグレートソードを使うからね、ちょっとした練習をしてただけさ。色々思い出したのと、良い剣だからニヤニヤが出たんだろ。別に変な意味でニヤニヤしてた訳じゃないよ」
「まあ、それはね。それよりも久しぶりにグレートソードを握ってどうなの? 肝心な時に使えそう?」
「それは問題無いさ。流石にそこまで忘れるほどマヌケじゃないしね。他にも色々ミクは作ってたみたいだけど………どうやら完成したみたいだね。何か色々と取り出してるよ」
シャルとイリュは海に捨てて戻ってきたミクが色々と取り出しているのを見て、戻って確認する事にした。何やらアレッサの声も聞こえてくるので気になったようだ。
「これなに!? 何か変な……剣? ミクは剣が好きじゃなかった筈だけど、これは剣と言っていいのか悩む形をしてるわね。何か先がカクカク湾曲してる?」
「これはケペシュと呼ばれる武器。何と言えばいいか……鎌剣っていうのかな? 膨らんでる外側で相手を切りつけ、内側の刃で断ち切ったり、相手の盾に引っ掛けたりする剣」
「つまり相手の剣にこうやって引っ掛けて、引っ張って落とさせる……んでしょうか。変わった剣だとしか思えませんが、使いようによっては使える武器ですね。ただし難しそうです」
「でもちょっと面白そうよ? ティアが使わないなら私が使うわ。それなりに使えそうだし、盗賊どもは盾を持ってる事も多いから練習相手には事欠かないもの」
「それはそうでしょうね。仮にケペシュっていう武器じゃないならどれにする? 鉈、片手斧、鎌、メイス。どれも使えるし戦えるけど……なんで鎌?」
「鎌って以外に使い勝手はいいよ? ちゃんと戦闘用の鎌として両刃にしてあるから、先をピッケルの用に刺せるしね。それに引き切りも押し切りも出来る。意外と言ったら何だけど、対人戦だったら強いよ。魔物相手だと微妙だけど」
「鉈は叩きつければいいだけだから分かりやすいけど、この片手斧は何? 随分と幅が広い形ねえ……?」
「ああ、それは処刑用の斧だよ。首を断ち切る為の斧だね。だからそういう形状をしてるの。幅広の、いわゆるブロードアックスの一種だよ。柄が80センチと短いから片手用だけど」
「処刑用……剣ではないのですね?」
「そうよねえ。処刑に使われるのって剣じゃなかった?」
「いや、時代と国によって違うよ。剣は戦士の使う物、あるいは騎士の使う物って感じでね、処刑用にするなんてけしからんって言われてたのさ。そういう時代や国では斧を使うのが一般的だったんだよ、もしくは棍棒で殴り殺すとかね」
「そうよ。ティアが知らないのは分かるけど、アレッサが知らないってどういう事かしら? ……いえ、もしかしたらエルフィンでは昔から処刑剣だったのかもね。あそこは弓がメインだし」
「それは十分にあり得るわね。あそこは昔から高慢ちきだし、弓がメインな事は変わらないもの。<狂乱王>以前から剣を特別な物と見る事は無かったのでしょうね」
「剣は特別で格好いい……かい? そうなってくるとミクの言う、見栄えで特別扱いされているっていうのが間違ってない事になるんだよねえ。剣は剣で使える武器なんだけど、何だかズレてくる気がするよ」
「剣の斬撃だってそこまで保たないんだよね。割と簡単に折れるし、そこまで耐久力がある訳じゃない。長く使うなら突きで使うしかないんだけど、だったら突きに特化した槍の方が使いやすいんだよ」
「切るとしても耐久力は斧より低く、突きとして使うなら槍の方が優秀。確かに平均的で携帯性が高いのが特徴かー。考えれば考えるほど、剣の利点って空しいね。もちろん携帯性が必要な状況もあるだろうけど」
「逆に言えば、そういう時にしか活躍しないとも言えるんだけどね。とはいえ耐久力は確かにそこまで高くないのは間違い無い。にも関わらず耐久力が必要な戦争で使ってる。変なもんさ」
「ま、それはともかく、そろそろ出発しましょう。ティアは武器を決めた? 駄目なら全部持っていきなさい」
「この鉈と処刑用の斧に決めました。私は盾を持っていませんので、この鉈で補助的な防御をしようと思います。あくまでも補助的な防御ですが」
「いなしたり流したりだね。それでいいし、武器でガッツリ防御なんてするもんじゃないよ。さて、そろそろ出発しようか」
昼食後の少々長い休憩も終わり、再び走り出したミク達。一気に9階まで下り、南に向かって移動。小山の南向きにある洞窟の入り口を見て、呆れる5人。間違いなくワザとであり、見つかりにくいように隠してある。
「こんな事までしてくるの? 本っ当に呆れるしかないわ。どれだけ攻略者を罠に嵌めたいのかしら。そしてどれだけダンジョン設置者は性格が悪いのかしら」
「これは近付いてキッチリ確認しないと見つからないだろうね。挙句の果てには階層の南端だ。ここまでの事をやるかい? 普通」
「普通じゃないから階段をこんな所に設置するのよ。本当にこういうのばっかりで嫌になってくるわね」
文句を言いつつも階段を下り、ボス扉の前で少し休憩。そして中へと入ると魔法陣が輝く。せり出してきたのは白い毛の熊2頭だが、行動する前にシャルとカルティクに殺された。
シャルはグレートソードを上段から振り下ろして首の下まで、カルティクは金砕棒で頭を潰して終了。完全に狙っていたらしく、両者共に一撃だった。
「カルティクの方は頭を潰しただけだから良いんだけど、シャルの方は首の下まで切れてるから使えないね。真っ二つに出来なかったのは残念だけど、剣だとそんなものでもあるから仕方ないよ」
「頑張ったんだけど上手くいかなかったよ。思っているよりも切れなかったけど、切れないっていうより押し潰したかね? もうちょっと上手くやれたと思わなくはないものの、敵が倒せれば十分か」
「それはね。まずは敵を殺す、それが第一でしょ。殺し方が綺麗に出来たとか上手くいったとかは気にする事じゃないわ。無理に綺麗に倒そうとして失敗したら目も当てられないからね」
「それって完全にバカよね。それより、この熊の毛皮って鎧とかには使えないの?」
「昨日既に作ってるけど、ハッキリ言って微妙かな? 毛も残したまま使えばワイバーン製より上だけど、毛を残していないと変わらないくらい。逆に言えば優秀と言えなくもない。でも、ワイバーン製のを持ってるし……」
「毛が付いてる鎧ですか。流石にそれはちょっと……御遠慮させていただきますわ。毛皮であればそういう物なので構わないのですが、革鎧に毛が付いたまま……」
「それは流石に無いわねー。幾らなんでも見た目が悪過ぎる。なんだかおかしな鎧にしか見えないでしょうし、流石に着て歩くのは恥ずかしいのが想像出来るわ。鎧としては優秀でも限度がある」
「だろうね。だから言わなかったんだよ。はい、コレ」
そう言って普通の革鎧に仕立てた方と、表面の皮が毛皮の物を出す。それを見て微妙な顔をする5人。やはりコレは無いと思ったらしい。ミクですら思ったのだから当然とも言えるが、それでもセンスは色々だ。
もしかしたら気に入る者が居るかもしれないと思って出したが、やはり気に入る者は居なかったようである。




