0347・食事の変化
物作りをしているので暇ではなく、起きたアレッサとティアに挨拶した後に【浄滅】で部屋と皆を綺麗にする。それが終われば準備をして食堂へ。注文をして大銅貨12枚を支払うと、席に座って昨夜の事を少し話す。
「昨夜、巨人の素材が沢山欲しくてダンジョンへ行ったんだけど、あの巨人は偽物のボスだったよ。何故なら第8エリアに進めなかったから。ちなみに本当のボスは9階を南に行った端にある、小山の中の階段ね」
「ウゲッ!? また行かなきゃなんないの? っていうか、偽物のボスだから強かったって訳ね。完全に間違えた奴を殺す気じゃないの! 最後の最後までやってくれるわね!!」
「……はぁ。アレッサ殿の言う通り、間違えた者を殺す為のボスでしょう。幾らなんでも強すぎましたし、よく勝てましたよね、私達」
「本当にね。そもそもワイバーンの素材で作られた武器で勝てないって、色々おかしいのよ? わたしが【身体強化】をして全力で振るってるのに、多少切れただけとか……。思い出してもおかしいのが分かる」
「その分だけ巨人の素材で作った武器は強力になったよ。はい、コレ」
「ああ、うん。って、おもっ!! これ思ってる以上に重いんだけど!? えっ、巨人の骨ってこんなに重いの?」
簡単に渡されたものの、その重量に驚くアレッサ。今までのウォーアックスの3割以上は重いと思えるその重量は、アレッサにとっては新鮮な重さであった。元ヴァンパイア・ロードであるアレッサにとって、多くの物は軽い物でしかない。
「巨人の骨と歯と爪と魔石を粉にして、私の粘液と混ぜ合わせて練って焼いて完成したのがソレ。思っている以上に巨人の骨は硬くて重かったよ。ただしワイバーン製の武器があっさり壊れる程度には強いからね?」
「……まあ、あれだけ強かったのですから、ある意味では納得ですね。骨や歯や爪と言われればアレですが、強力な武器には間違いありません。使う分には問題ないのでは?」
「まあ、それはねぇ………。持てなくは無いけど、ある意味で本当の重量を手に感じてる。今までのウォーアックスは何だかんだと言って軽かったんだと思うわ。今、本当に重量を感じてるからさ。ほら」
アレッサから渡されたウォーアックスを受け取り、その重量に驚くティア。この時初めてアレッサよりもティアの方が力が無い事が分かった。ギリギリ片手で持てるアレッサと、両手で持つ事しか出来ないティア。
その差はハッキリと示されたのだが、ミクはそれを否定する。
「勘違いしているようだけど、元々はアレッサとティアに差なんて無かったよ。あったのは普段使ってる武器の重さだね。薙刀よりもウォーアックスの方が重いのは当然だし、それを振り回していれば筋肉が付くのは当たり前だし」
「私も重い武器を振り回した方が良いのでしょうか? 力が無いよりも有った方が良いのは当たり前ですし、それに体型も殆ど変わっていませんよね? にも関わらず強くなるのなら……」
「まあ、ティアの薙刀は刃を分厚くすればその分だけ重くなるんだけど、そうすると重さで叩きつける大刀になっちゃうよ? 薙刀はあくまでも切る武器で、大刀は重さで圧し切る武器だからね?」
「刃の厚さで武器の種類が変わるって事?」
「私もあんまり詳しくないけど、元は斬馬剣といって騎兵の乗る馬の首を切るのが目的の武器だったらしいよ。そこから派生した武器が大刀。で薙刀は矛とか手鉾とかいう武器から派生したとか聞いた」
「ふーん。しっかし……馬の首って太いんだけど、アレを切ろうとしたとか凄いわね。考えても作らないでしょ普通は。どんだけデカい武器が好きなのか知らないけど、そんな物を振り回すの?」
「流石にそれはちょっと……。馬の首が切れる刃って相当の刃の厚さをしていると思いますし、重くてまともに使えない気がします。もちろん【身体強化】をすれば使えるでしょうが、最初から【身体強化】前提の武器というのは……」
「実際に使われていた所では【身体強化】なんて無くても振り回していたみたいだけどね。とはいえ、実際にはどんな使われ方をしていたのか知らないんだけどさ」
「どういう事?」
「いや、案外馬の突進力に合わせて使ってたのかもしれないでしょ? 例えば大太刀と呼ばれる長い刀は、腕や手首を固定して馬の突進力に合わせて使う武器なんだって。他にもランスとかあるしね」
「ランスってなに?」
話をしているとイリュ達がやってきたが、それと朝食が運ばれてくるのは同時くらいだった。ミク達は運ばれてきた朝食を食べつつ、イリュと話をしていく。ちなみにセリオは朝食が来たら目覚め、現在は寝起きで食べている。
「ランスっていうのは騎兵槍の事で、先が鋭く尖った槍の事。刃が付いてなくて唯の尖った棒? みたいな形状をしてる槍。重要なのは、これが馬に乗って突撃する為の槍って事」
「馬に乗って突撃………。つまり馬の速さをそのまま突撃の威力にするって事? 怖い武器ねえ……。とはいえ【身体強化】の一撃でも死ぬんだから、そこまで怖い訳じゃないけども」
「馬に乗って突撃するんだから結構な威力が出るだろうけど、馬を攻撃されたらどうにもならないからねえ。それに、そもそも馬は臆病さ。【火弾】が飛んでくるだけで逃げ出すから、まともには使えないんじゃないかい?」
「そうね。馬の突進力と考えれば凄いんだろうけど、戦争では使えないわね。使うとしたら盗賊退治ぐらい? その程度なら馬も怯えたりしないでしょうけど、戦争では駄目ね。魔法で殺されるわ」
「そうだね。あくまでもランスは馬の突進力を利用した武器だから、それを考えて使うなら使えるってところだと思う。そもそもイリュに渡した戟なら引っ掛けられるから、馬から引き摺り下ろせるし」
「ああ、アレはそういう風にも使えるのね。まあ、乗り物に乗ってるヤツと戦う事なんて滅多にないけど、有って悪い物でもないか」
「それより、明日は第7エリアに行くから準備をお願いね」
「「「はぁ?」」」
「実は昨夜巨人を倒すついでに調べてきたんだけど、あの巨人は第7エリアのボスじゃなかった。実際、第8エリアには転移できなかったしね。本当のボスは白い毛の熊2頭で、こいつらは冷気のブレスを吐いてくる」
「ボスが違ったの………。通りで意味の分からない強さをしてる筈。それはボスじゃなくて、ちゃんと調べない奴等を処刑する為のボスって事ね。もしかしたら私達が倒すのは想定外?」
「そうでもないんじゃないかい。っと、朝食が来たけど……なんだいこの薄っぺらいのは?」
「それはチャパティ。千切ってスープにつけたり、こうやって肉を巻いて食べたりもする。小麦を練って薄く焼いただけだよ。パンよりもお金の掛からない物だね」
「パンよりお金が掛からないって………よく見たらパンよりも量が多い? まあ、太らないから量が多いのは助かるけど」
「何か腹立たしい声が聞こえたわね。それはともかく、確かにパンに比べれば安く済むか。あと、このスープに入ってるのはミクが言っていた腸ね。………うん。食べて美味しいとまでは言えないけど、別に不味くはないわ」
「クニュクニュしてるくらいで、それ以外は特に感想はないわね。スープに濃い味がついてるのはコレの御蔭みたいだし、悪くはないんじゃないかしら?」
かす肉はそれなりに好評のようである。説明したミクとしても、受け入れられて少し「ホッ」としているようだ。




