0345・第7エリア・ボス戦終了
「「「「「ミク!!」」」」」
巨人の手で握られており、そのまま巨人は握り潰そうとしている。しかしながら最強の肉塊を握り潰す事など不可能である。とはいえ、ミクは潰されないギリギリの力でしか抵抗していない。
この巨人を倒すのは皆に委ねているので、ミク自身は全く動く気が無いのだ。そうやって巨人の力と拮抗していると、赤い火の玉が飛んできて巨人の顔面に直撃し、熱が一気に広がる。
「Gyaaaaa!!?!?!」
今まで散々腕などで防いできたが、今は右足が使えない為に片手を使用する必要があった。そして左手はミクを握っている。つまり顔への攻撃を防げず、その結果【爆熱球】が顔面に直撃したという訳だ。
その熱は巨人の顔を焼き、直撃した右眼は焼けて見えなくなってしまった。そして苦痛にのた打ち回る巨人。ミクを握っていた手は外され、下に落ちたミクはすぐに盾を構えて態勢を整える。
「大丈夫、ミク!?」
「大丈夫。というか、コイツ如きじゃ私を殺すなんていう事は不可能だよ。そもそも私はそんなに弱くない」
「「「「「………」」」」」
言っている事は分かる、分かるのだが……。心配を返せという言葉が聞こえそうではあるが、実際に巨人如きではどう足掻いても無理なので、ミクが言っている事は唯の事実でしかない。
顔を焼かれた巨人は怒り狂い、右手で殴りつけてくる。しかしミクがカバーに入り、その拳を受け止める。多少は後ろに下がらされたが、それでも盾を壊す事も無く受け止めきったミク。
その隙に無事な左足を総攻撃する近接組。アキレス腱に連続で攻撃を加える事により、左足のアキレス腱も深く切り裂く事に成功。これで立ち上がる事は不可能となった。
「Gaaaaa!!?!?!」
アキレス腱を切られた事により、更にのた打ち回る巨人。少しずつ少しずつ形勢は5人の方に傾いてきている。それでも怒り狂う巨人は諦めず、ミク達を殺そうと掴もうとしてきた。
もはや寝そべった状態で両手を使い、誰でもいいから掴んで握り潰そうと躍起になっている。そんな巨人に対し、再びイリュが【爆熱球】を放つ。そしてそれは狙いを過たずに左眼に直撃。
「Guoooooo!?!?!?」
両眼が焼けて見えなくなり、暴れ回る巨人。これでは近付く事も出来ず、一旦離れて様子を窺う。ここまでしても倒せない巨人に対し、流石に呆れてくる5人と1頭。
どうすれば倒せるのか? その事に困っていると、ミクが皆に対して口を開く。
「結局のところ人間型なんだから、人間種と同じ方法で倒せるでしょ。例えば失血死とか。薄い場所は薄いんだから、そこを狙えば良いんだよ。大量に傷つけて血を流させてやればいい」
ミクの言葉を聞いた面々は、各々が武器を持って暴れる巨人に近付いていく。上手く攻撃をかわしたら一撃、かわしたら一撃と入れていき、出来得る限り出血させるように攻撃する。
アレッサは主に肩や二の腕を狙って攻撃。本当ならば首を狙いたいのだが、暴れ回る所為で首が狙えない。なので肩口付近を攻撃し、何とか腕を使えなくさせたいと思って攻撃を繰り返す。
ティアは主に太腿近くを狙っている。大きいので狙いやすいのだが、ハルバードの斧刃がそこまで大きくないので苦戦中だ。槍の事も考えると斧刃を大きくする事は出来ないので仕方がない。
シャルは矛で傷口を広げる方法をとっている。あまり褒められたやり方ではないが、この方が出血を促せるのは間違い無い。とにかく中の肉を削り血を出させる事に全力を傾ける。
カルティクは金砕棒で適当に様々な箇所を殴っている。これは敵の攻撃を分散させる為であり、出血を促す攻撃ではない。それでもこの攻撃の御蔭で、巨人の攻撃が分散されているのも事実である。
イリュは戟を振り下ろして突き刺している。ピッケルみたいに使っているので面ではなく点での攻撃だが、そこから引っ張ったりして傷口を広げようとしていく。
セリオは適当に走り回りつつ、隙があれば全力でぶつかっている。それなりの威力ではあるものの、やはり巨人の皮膚は厚く硬い。そのうえセリオよりも体重があるので殆ど効いていないようだ。
それでも様々に傷つけていき、推定1時間ほど過ぎた後、ついに巨人は動かなくなった。離れて様子を見るものの動く気配は無く、奥への扉が音を立てて開く。つまり、巨人の討伐完了である。
「やったぁぁぁぁぁ!! やっと終わった! どんだけ時間が掛かるのよコイツ!!」
「こんなに時間が掛かるボスが居るとは思いませんでした。ちょっと今は動きたくないです……」
『お疲れさまー。本当に大変だったし、僕の体当たりがまったく効かなかったよ。あのおっきなの、強かったねー』
「あーーー、疲れた!! 本当に嫌な相手だよ。どんだけ硬いのさ、まったく!」
「はあ、とにかくゆっくりしたい。今日はもう疲れた。宿に帰るのすら億劫。そもそも私は貴方達ほど体力も無いのよ」
「お疲れー。魔法の後は私も武器を使ってたから大変だったわ。まさかワイバーン製の武器であそこまで苦戦するなんてね。これ本来なら軍団規模で戦うんじゃないの?」
「お疲れ様。近接が前で守って、一斉に魔法で攻撃? 分からなくもないけど、魔法に対する防御も相当硬かったけどね。とはいえ首から上はそうでもなさそうだから、脳を潰す事が出来れば倒せるかな?」
「それは普通の探索者には無理ねえ。となると人数を掛けても無駄か……。それにしてもアレッサにティア、それにシャルが攻撃しても難しいとはね。普通の肉体をしていない筈なのに、それでもアレでしょ?」
「そうね。イリュディナの言う通り、本来なら人間種なんて比較にならないパワーがある筈。それでもあの程度の傷しか与えられないんだから、明らかに変よ。ボスが強すぎる」
「言われてみれば確かにね。幾ら第7エリアだからといって、あの防御力は無い。むしろ正規の方法じゃない方法で倒してる? もっと簡単に倒す方法があったのに、わたし達はそれを無視した?」
「可能性としては無い訳ではないでしょうが、しかし……何かありましたか? 散々調べてきましたよね?」
「いや、9階は殆ど調べてないね。もしかしたら何かあったのかもしれない。ま、突破出来たんだからどうでもいいけどね」
「まあ、それはね」
『お肉に取り込んで何してるの? 解体?』
「そう。この巨人の骨とか歯とか爪とか色々使えそうだしね。ちょっと調べたけど、皮膚に関しては死んだ後だと脆くなってるから駄目だった。生きている間だけ硬い奴だから使えない」
「幾らボスと言っても、人間型の皮を使われたくはないから良かったよ。流石に巨人の皮のレザーアーマーとか勘弁してほしいからねえ」
「見た目が物凄く悪いし、間違いなく色々な人達から顰蹙を買うわね。それに人型の魔物の皮はちょっと……。あの硬さだったとしても、流石にねえ」
「とりあえず大きな魔石を持ってる事は分かったよ、ほら」
「デッカ! それってもしかしてワイバーンの魔石より大きくない? 前に見たのより明らかに大きい気がするんだけど?」
「大きいね。間違いなくワイバーンより大きいよ。おまけに物凄く澄んだ色の魔石だし、何か知らないけど揺らめいてる? 中の魔力が動いてるような……?」
「確かに動いてるわね。何故かは知らないけれど」
よく分からないものの、使えそうな素材は全て剥ぎ取ったので帰る事を提案するミク。仕方なく腰を上げて移動する5人。それ程までに疲れきったようだ。




