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0031・盗賊というもの




 散々甚振られている盗賊のボスは横に置いておくとして、<雪原の餓狼>と呼ばれた中年女性と他の兵士を見ても、全員が獣人である。その為、ミクはフィグレイオ獣王国の者だと予想をつけた。


 未だに盗賊のボスは殺されずに嬲られ続けているが、心は折れていないらしい。まあ、責めている女性兵士が手加減しているのは明らかなのだが……。


 その手管を見て確認していると、洞窟の中に入った兵士がゾロゾロと出てきた。



 「あん? 何でこんなに早く出てきた? 中になんぞ、マズいもんでもあったかい?」


 「報告いたします! 中は蛻の殻で、何もございませんでした! 何かを引き摺った後や、動かした後など多少は見られましたが、それらの跡は普通の範疇のものでございます」


 「………誰かがアイテムバッグか何かで持ち出した? ……おい、あたし達を襲う前、お前達の物資は本当にあったのかい? 嘘を吐い……てる訳じゃなさそうだねえ」


 「そ、そんなバカな……あれだけの物資が無くなるなんて、そんなバカな事が……。い、いったい誰だ!! 誰が盗みやがった!! あの中には、先祖伝来のウィリウム鋼の槍があったんだぞ!!」


 「ウィリウム鋼の槍………お前まさか、テリオルヴ家の者かい!? ……成る程、かつて裏切り者の汚名を着せられた一族か。通りでウチの商売人だけが狙われる筈だ。金儲けもさる事ながら復讐でもあった訳か」


 「……ぐっ! ゴクッ! ……ガハッ! ゴホッ! グブェ!!」


 「!? ……しまった! こいつ毒を仕込んでやがったのか!!」


 「っ!? 申し訳ございません! まさか口の中に毒を仕込んでいるとは……!」


 「………駄目だ、死んじまってる。……まさか唯の盗賊だと思ってたのが、テリオルヴ家の復讐っだったとはね。最も忠義の篤い家でありながら、最も大きく裏切られた家。今の我が国を象徴するような家さ」


 「閣下!!」


 「事実だろ? 今の国は忠義を捧げるに値しない。王は腑抜けになり、貴族どもが国を腐らせてる。いつか転覆しなきゃいいけどね」


 「まさか……」


 「あたしがかい? よしな、あたしは引っ繰り返す気なんてないよ。ただ、歴史の必然ってやつさ。腐った国は必ず引っ繰り返されてる、そこに例外は無いんだよ」


 「閣下……」


 「誰だって同じさ。頑張ったのに報われないんじゃ、やる気を失くす。忠義を捧げたのに裏切られるんじゃ、忠義を失くす。そうやって積み重ねていって、いつしか国は崩壊していくんだよ」


 「「「「「………」」」」」


 「今の中央の連中は正しいと思ってるのかもしれないけど、奴等がやってる事は国の未来を切り売りしてるだけだ。未来を切り取ったら駄目に決まってるだろ。滅ぶのが早くなるだけさ」


 「………閣下。これから如何しますか?」


 「如何も何も、予定通りにゴールダームへ行くしかないさ。エクスダート鋼の輸出依頼もしなきゃいけないし、良い探索者でも居れば、我が国に誘わなきゃならないからね」


 「探索者ですか? ……役に立つ者など居るのでしょうか? 正直に申しまして、大した実力などあるようには思えませんが……」


 「それは本国の奴等を見ているからさ。世界最大のダンジョンは伊達じゃないんだ。それに………ここから盗んだ奴がいるんだよ。そいつはいつ、どうやって侵入して、あたし達が来る前に逃げ去ったんだろうね?」


 「「「「「あっ!!」」」」」


 「だろう? テリオルヴ家はともかくとして、ここにあった筈の物資が無くなってる事は間違いない。あたし達を襲う為に出発してから、ここに追い詰められるまで。その間に盗んでった奴が居る。そいつは、あたし達が襲撃される事を知っていた可能性が高い」


 「つまり計画的に奪っていった、と?」


 「もちろんさ。何人かは分からないけど、そうでなきゃ短時間に全部盗むなんて出来やしない。やってのけてる以上、少なくとも奪った奴等は計画を知っていただろう。そして盗賊が出て行くのを近くで待っていた……」


 「もしかして、まだ近くに居るのでしょうか?」


 「可能性は……無くはないってところか。盗んでいった奴等にとっても危険な場所だ、出来るだけ速やかに離れたいだろう。ただ、こいつが戻ってくるのが計算外だった可能性もある。でも、その割には全てが無かったんだろ?」


 「はい。中には何も無く、完全に蛻の殻でした。おそらくは全て持ち出したものと思われます」


 「………ま、考えていても仕方ないね。馬車まで戻るか。向こうには御者と兵士1人しか残していない。何も無いとは思うけど、一応ね」


 「「「「「ハッ!」」」」」



 どうやらこれで終わりのようなので、ミクは蜘蛛の姿のまま森の奥へと移動していくのだった。



 「………」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 森の奥へと移動したミクは素早くピーバードの姿へと変わり、空を飛んでゴールダームの北へと移動する。


 ゴールダームの東西南北にはそれぞれ盗賊の拠点があると思われており、次の北にも<爆烈団>という盗賊団があると貼り出してあった。その盗賊団の拠点を探しつつ、ミクの本体は先程手に入れた物を調べている。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 昨日の<風見鶏>を含めて金銭を得ているので、今の内に整理しておく事に。


 小銅貨が31枚、中銅貨が44枚、大銅貨が68枚、小銀貨が39枚、中銀貨が21枚、大銀貨が52枚、小金貨が3枚。これだけあったとはいえ、<風見鶏>と<黒熊団>を足した分でもある。


 次に<黒熊団>の拠点の一番奥にあった物だが、その中には何とアイテムバッグがあった。ミクの本体が触手を突っ込んだ瞬間、中に入っている物が浮かんできたから間違いは無い。


 現在アイテムバッグの外側に色々と付けて、盗賊が持っていた物とは違う物に見えるようにしている。アイテムバッグそのものには傷を付けてないので問題ない筈だ。


 あの盗賊団が何処で手に入れた物かは知らないが、ありがたく使わせてもらおう。それなりには容量の大きいバッグなので、なかなか使い勝手は良さ気である。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ゴールダームの北の森にきたミクは、上空を飛びまわりつつ盗賊の気配を探す。他の鳥などに襲われる危険性はあるものの、その時はその時で喰えば済む。


 そんな風に考えながら飛んでいると、随分西よりに多数の気配を発見した。どうやら森の中で罠を使い、魔物を狩っているらしい。食べ物を自分達で補充しているのだろうか? 狩りの手際が良い。


 近くの木に止まり、様子を窺う事にするミク。聞かれているとは思っていない盗賊は愚痴を溢すのだった。



 「それにしても最近は北から来ねえなあ。確かに北はフイグレイオとドルムしかねえけどよ、今まではもっと商人の馬車も来てたろ? ここ最近異様に減ってねえか?」


 「最近減ったって訳でもねえだろ。元々北からの数は少ねえし、今は大量に食料を仕入れる時期でもねえ。今はそれなりに経ったからな。暖かくなってくる時なら多いけど、今は一段落ついちまってる」


 「少し前に多かったのは暖かくなったからだな。この次は暑くなる前辺りか。ドルムなら寒いから食料も長く保存できるっていうし、暑くなる前に集めるんだ。毎年のこったろうに」


 「オレぁ、お前らみたいに頭は良くねえんだ。仕方ねえだろ!」


 「はいはい、怒るんじゃねえ。誰もバカになんてしてねえよ。毎年の事なんだから、そろそろ覚えろって言ってるだけだ。でないとまた頭から大目玉喰らうぞ」


 「そらぁ……そうかも」



 よく分からないが、先ほどの<黒熊団>と違い、妙に緩い連中に見えて仕方ないミクであった。


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